コマ撮り用モデルを作って分かったこと

 

撮影用の模型はクイック&ダーティで

私が映画作りに挑戦したきっかけは、特撮の神様と呼ばれる、レイ・ハリーハウゼンの「コマ撮り映画」の真似をしたいということでした。

たっぷり30年の時間を経て、ようやくその原点に再挑戦しました。

製作するのは、コマ撮り撮影用の恐竜模型。

動かす足の数を少なくしたいので、2本足で歩くタイプの肉食恐竜をモデルにしました。

 

今回の模型工作の目的は、試作品を完成させてテスト撮影することで、工作上の様々な課題、撮影・編集上の課題といったデータを集めることです。

そのデータをもとに、今後、工作性や機能性、外観のレベルを改善させた「量産品」を製作します。

その量産品を使って、作品の中で必要な時に使える「恐竜映像」をストックする構想でいます。

ワークショップ等で、実物に触れてもらう機会も出てくるかもしれません。

 

とにかく、今回意識したのは「クイック&ダーティ」ということです。

これは仕事術でよく使う用語で、簡単に言うと、雑でもいいからまずは形にして、後から細部を直したり仕上げたりすることです。

 

工作好きなのに、なかなか完成させられない人は、細部にこだわり過ぎて、完成させるための優先順位が付けられていないことが多いんです。

私も実はその傾向があるので、今回は特に「短期間での完成」を意識してみました。

 

最初にラフな図面を用意して、それを元に工作を進め、変更したら図面を直すというやりかたで、骨組みについては2回作り直し、計3体分製作しました。

この作り直しのたびに構造が洗練されたので、ゼロからでも正味1日あれば、骨組み部分の工作は完了させられるようになりました。

 

ここまでの材料費は2000円くらい。

実際は大きな材料の一部しか使わなかったりするので、量産すると1体当たりの材料費は数百円で済むはずです。

メイキングの写真を中心に解説した記事は、メルマガの最後で紹介していますから、興味がある方はご覧ください。

木工用ボンドの多面性

コマ撮り用の恐竜模型を作るときに、しっかりした関節を持つ骨組みを作ることが、まず最初の課題でした。

これはある程度、普段から構想を練っていたので、それなりのものは作れました。

もう一つの難関は、皮膚です。

 

通常は恐竜模型の場合などは、ラテックスゴムやフォームラバーという素材を作ります。

私も何度もこの材料で工作をしているのですが、

  • 工作に自由度が少ない
  • 材料が高価
  • 劣化する

という欠点を感じていたので、全く違う素材を試すことにしていました。

 

最初は、皮膚の立体的な型紙を作って、骨組みを包むような形で縫い合わせてみました。

構造としては、ぬいぐるみの作り方です。

これは素材違いで2回挑戦しましたが、非常に煩雑な作業の末に出来上がるのは、どうしてもぬいぐるみ感のある模型です。

ぬいぐるみの作り方なので当然と言えば当然です。

 

結局、型紙方式を諦め、骨組みの上に不織布を貼り付けるハリボテ方式にしました。

ただ貼り付けてしまうと、関節が動かせなくなってしまうので、関節を動かしても皮膚が突っ張らないように工夫します。

 

膝を例にすると、膝を伸ばした状態で膝の前側に皮膚を貼り付けると、膝を曲げようとしたときに皮膚が突っ張ります。

つまり、膝が曲がりません。

そこで、膝を曲げた状態で、膝の前側に皮膚を貼り付けます。

そうすれば、膝を曲げても、皮膚が突っ張りません。

もちろん、膝を伸ばしたときは皺が入ります。

 

全ての関節部分について、このように突っ張らないような皮膚の貼り方をします。

 

これは皮膚の下地なので、恐竜の皮膚の感じは出ていません。

そこで、別途、ワニのような皮膚の鱗をイメージした「薄い皮膚パーツ」を量産しておいて、上から貼り付けました。

この、薄い皮膚パーツをどんな素材で作るか実験を重ねた結果、今回は「酢酸ビニル樹脂」というものを使いました。

いわゆる「木工用ボンド」です。

 

水溶性の白い液体の木工用ボンドを使ったことがある人も多いと思いますが、実はこの素材は安価な上に使い道が多いんです。

木材に対しての接着力は、当然、強力ですし、水溶性なので、シンナーに弱い発泡スチロール系の接着にも使えます。

塗装の時のマスキングに使う人もいます。

 

今回はこの木工用ボンドを、皮膚の模様の彫刻から抜いたシリコン型に塗って、皮膚の模様を持った薄い皮膚にしました。

この鱗の模様が付いた皮膚パーツを、全身に貼ることで、ワニのような表皮の恐竜模型を完成させました。

理想の60%くらいの出来の模型が、比較的短期間で出来たので、工作はとりあえず完了としました。

色々と出てきた課題は、量産品の工作時に解決できそうです。

コマ撮りの新しい工夫

コマ撮り映像は、「模型を少し動かしては1コマ撮影をする」という事を繰り返すのが、昔ながらのやり方です。

わずか数秒の映像を作るのに、何時間も掛かるのがコマ撮りの常識です。

 

しかし、私は、フィルム時代のこの撮影方法ではなく、ビデオ撮影の特徴を活かした撮影方法を採用しています。

それは、撮影しっぱなしで模型を少し動かしては手を引っ込める、というやり方です。

 

この撮り方の最大の利点は、撮影がやり易くて速いことです。

撮影中、カメラの操作を一切しないので、模型から目を離さずに、動きを付けることに意識を集中できます。

やってみて実感したのですが、通常のコマ撮りの数倍の速さで撮影を終了できそうです。

実際、かなり荒いラフなコマ撮りではありますが、短い4カットほどの映像を、合計20分足らずで撮影できました。

 

映り込む手はもちろん邪魔ですが、撮影映像から「手を引っ込めた状態」の静止画を書き出すのはとても簡単な作業です。

書き出した静止画を並べることで、恐竜が動いている映像を完成させます。

ちなみに、動きを付けている手が映り込んだ映像も、メイキング資料として活用できます。

 

デジタル編集でコマ撮り映像を作る場合の最大の特徴は、本来、コマ撮りでは表現できなかった「動きのブレ」を出せることです。

「モーションブラー」という機能を使うと、前後の静止画の状態から動きを解析して、疑似的に「ブレ」を追加してくれるんです。

ブレを加えると、コマ撮り特有のカクカクした動きが、滑らかになります。

 

今回は一通り、この撮影と、編集の実験まで行いました。

一連の工作とテスト映像は、メイキング記事の中で紹介しています。

参考になったら記事をシェアしていただけると幸いです。

 

コマ撮り用恐竜模型のメイキング記事はこちら

https://wp.me/p4vWPD-mqS

(ブログ記事一覧)

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Lessons Learned from Making a Stop-Motion Model

Shooting Models: Quick and Dirty

My journey into filmmaking began with the aspiration to emulate the “stop-motion films” of Ray Harryhausen, hailed as the God of Special Effects. After a thirty-year hiatus, I finally revisited this dream by creating a dinosaur model for stop-motion filming—a carnivorous, two-legged type chosen for simplicity in animation.

This initial prototype aimed to test various production challenges, from crafting to filming and editing, gathering valuable data to improve functionality, design, and efficiency for future mass-production models. My broader goal involves stockpiling dinosaur footage for use in projects, potentially allowing workshop participants to interact with these tangible creations.

Prioritizing Speed

The key principle I embraced for this project was quick and dirty: prioritizing completion over perfection. Many creatives struggle with over-focusing on details, hampering their ability to finish. With a “get it done fast” mindset, I drew rough plans, adjusted them as I worked, and completed three skeleton frameworks. By the end of this iterative process, constructing a base frame took a single day.

Material costs for this prototype were roughly 2,000 yen, with bulk-production lowering the per-unit cost to a few hundred yen each.

The Versatility of Wood Glue

Building a sturdy skeleton was the first hurdle, successfully cleared with prior brainstorming. The next challenge was creating skin. While conventional materials like latex or foam rubber are standard, they lack flexibility, are costly, and degrade over time. Experimentation led to alternative methods: first, sewing fitted skin patterns around the frame—a plush-like construction—which proved inefficient and overly complex.

Ultimately, I opted for attaching nonwoven fabric directly to the framework using a papier-mâché approach. Attention to joint movement ensured the fabric wouldn’t stiffen during articulation. Additionally, crocodile-like scaly textures were added using thin skin parts crafted with polyvinyl acetate resin, commonly known as wood glue. This affordable, versatile material formed durable, realistic scales using silicone molds.

Innovations in Stop-Motion Filming

Traditional stop-motion involves moving the model incrementally for each frame—tedious and time-intensive. I adopted a modern technique leveraging video capture: moving the model, retracting my hand, and recording continuously. This method dramatically sped up filming, allowing me to complete four rough cuts in under 20 minutes.

Digital editing refined the footage by extracting static images (frames without hands) and assembling them. Additionally, motion blur effects smoothed the characteristic choppiness of stop-motion animation, creating dynamic results. These experiments successfully demonstrated the viability of combining streamlined techniques with cutting-edge tools.

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