CGを多用したB級映画が面白くない理由・けっして予算とは比例しない作品の魅力
懐古趣味を排除して冷静に考えてみる
大前提として、「面白い/つまらない」という基準は人それぞれではあります。
映画作品の中に1要素でも面白いところを見いだせれば、面白がって鑑賞できる「達人クラス」の人もいれば、設定などで1箇所でも自分の好みに合わなかったり、「現実にはあり得ない」などの点が気になって、虚構であるエンタメ作品を全く楽しめない人もいます。
ですから、「面白くない映画」という判断も、多分に私の主観によるものであると思ってください。
実際のところ、私は「達人クラス」の楽しみ方を目指したいと思いつつも、全然、その域に達してはいません。
ただ、長年、映画作りの真似事を続けているので、「ちょっとした改善によって、作品が面白くなる可能性がありそうだ」と感じることが良くあります。
そして、自分では必ずしも「懐古趣味」ではないと思っているのですが、古い特撮映画の方が、最近のCG満載で迫力のある映像で構成された作品より、面白い部分が多いと感じています。
「CGは好きではない」という事も口にしますが、それでも、CGは映像を作る上で、夢のような道具であるとも認識しています。
初めて先行オールナイトで「ジュラシック・パーク」を観て、CGの恐竜が登場したときに、めまいを起こすような感動ははっきりと覚えています。
ところがです。
CGの技術が普及して、つまり、安価で映像が作れるようになって、低予算映画に活用されると、あからさまに「つまらない映画」が目につくようになった気がします。
見た人の評価が、「★一つ」という作品群です。
多くの場合、「低予算だから」というところに、つまらなさの原因を求めがちですが、私は全然違うと思っています。
何故なら、十分な資金を投入して作られた作品にも、種類としては全く同じ「つまらなさ」を感じることが多いからです。
繰り返しますが、この「つまらなさ」も私の主観です。
「プッチンプリンのようなケミカルプリンより、本来のカスタードプリンの方が美味しいよね」
と言っても、「カスタードプリンは不味くて食べられない」という人もいるでしょう。
「特撮はCGしか、生理的に受け付けない」という人もたくさんいるんです。
これはちょうど、「手塚治虫のブラックジャックは面白いんだけど、絵柄が古くて見ていられない。今風の絵で描き直してくれ」という需要がある事にも共通します。
それを嘆いたり批判したりしても仕方ないんです。
そういう「好みの違い」とは別の、「つまらなさの原因」を見つけることが、面白い作品を作ったり、見つけたりする近道です。
あくまで「私にとって、つまらない」作品に共通するのは、「工夫が足りない」と感じた場合のようです。
「工夫」は、映像はもちろんですが、それ以前の設定の描写や、物語展開にも関わります。
- よく考えてるなあ
- 何とか成り立たせようという執念を感じるなあ
という場合に、「工夫してる」と感じ、それを「面白い」と感じる嗜好があるようなのです。
例えば、70年代までは劇場用特撮映画の見せ場でも堂々と使われていたストップモーションがあります。
ちなみに1984年版の「ゴーストバスターズ」でも、ストップモーションのシーンが楽しめます。
アマゾンのプライムビデオでも見られますので、該当シーンを探してみてください。
ストップモーション映像は、ミニチュアモデルをほんの少しずつ動かして、1コマ1コマ撮影して作ります。
場面によっては、1日10時間撮影して数秒分しか作れないこともよく知られています。
時間が掛かってしまう、ということは、けっしてプラスの要因ではありません。
しかし、これによって何が生まれるかというと、「せっかく撮影した映像をカットしなくて済むように、あらかじめ使用箇所を精査して、最低限の表示時間の映像を効果的に使おうとする工夫」です。
これは、「見せ場」である特殊映像のインフレを抑える効果もあります。
CGの特徴は、表示させる秒数を容易に伸ばせることです。
例えばストップモーションで恐竜を2歩、歩かせる撮影に丸1日掛かったとします。
4歩、歩かせるには倍の丸2日掛かってしまうんです。
だから、「本当に4歩必要か?」という意識が入ります。
一方で、CGの恐竜を歩かせるのは、例えば丸1日掛けて2歩分の動きを設定できれば、あとはその設定を使って、10歩でも20歩でも、歩く映像を短時間でつくれてしまいます。
これは大変便利ではあるんですが、特殊映像のインフレ状態が発生してしまって、「見せ場」として逆効果になることが多いんです。
特に、いわゆるB級モンスター映画の中でも「つまらない」と感じる作品の多くは、CGモンスターの登場時間が単純に長すぎる特徴があります。
特殊な映像は、アラが目立つと興ざめです。
表示時間が長くなればなるほど、アラを発見される危険も高まるんです。
70年代のスピルバーグ監督作品「ジョーズ」は、実物大のジョーズのロボットの動きが悪くて、大幅に出番を減らした結果、傑作になりました。
このヒットのおかげで、40年以上経った現在まで、「サメ映画」という特殊なジャンルが存続していると言っていいでしょう。
同じスピルバーグ監督の「ジュラシック・パーク」も実物大の恐竜ロボットの不調で、急遽、数分間だけ登場させたCG恐竜のおかげで、エポック作品になりました。
ちなみにCG恐竜を冒頭から大量に登場させた「ジュラシックパーク2」は、その映像は素晴らしいものの、恐竜のインフレ効果が発生してしまい、恐竜の登場自体が見せ場として成立しなくなってしまいました。(あくまで私の主観です)
つまり、つまらなくなる原因の一つは、CGそのものというより、CG映像の手軽さが生み出してしまう「特殊映像の出しすぎ」にあると言えそうです。
結局、作品を面白くするのは「ストーリー」
そうは言っても、特殊映像を生かすも殺すも、「物語」です。
見る人が視聴時間を費やして、それに見合うだけの「面白かった」という満足を感じられなければ、エンタメコンテンツの存在価値は無く、観客にとっては、時間泥棒以外の何者でもありません。
「これは芸術だから面白くなくてもいい」というのであれば、「芸術作品を見たい」と思っている人以外には勧めてはいけないんです。
天才でなくても、ある程度機械的に、楽しみながら、最低限の面白さを担保した物語を創作する方法は存在します。
その中の一つが、先ごろスタートした「あらすじの猫の森」というサービスです。
https://mori.arasuji.com/morineko/
これは、いつも私の創作活動にもアドバイスしていただいている、ストーリーデザイナー・今井昭彦先生が主催する、あらすじ創作の研究会です。
例えば、このサービスを利用して、「面白いあらすじ」が用意出来れば、あとはそのイメージを具現化することで、映像コンテンツとして発表できます。
その具現化の際に、楽しさもあり、さまざまな製作上の制約を乗り越える手段・工夫でもある「特撮」を活用していただければと思います。
参考になったら記事をシェアしていただけると幸いです。
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Why CGI-Heavy B-Movies Aren’t Fun: The Appeal of Films Doesn’t Always Rely on Budget
Setting Nostalgia Aside: A Rational Analysis
Of course, “fun” and “boring” are subjective judgments that vary from person to person. Some people can find enjoyment in a film as long as it has even one element they like, while others fixate on a single flaw, like an unrealistic plot point, and can’t enjoy the work at all.
I myself aspire to appreciate films with the former mindset, but I’m far from reaching that level. Still, as someone who has been dabbling in filmmaking for years, I’ve noticed situations where minor adjustments could have made a project more engaging.
That said, while I wouldn’t call myself nostalgic, I do find older special effects films often offer more enjoyment than CGI-heavy modern productions. This isn’t because I dislike CGI. On the contrary, it’s an incredible tool that has opened up endless possibilities for creators. I vividly remember the awe I felt when seeing the CGI dinosaurs in Jurassic Park for the first time.
The Problem with Overusing CGI
The accessibility of CGI has led to its proliferation in low-budget films, but ironically, it seems to have resulted in an increasing number of “boring” movies. These films often receive poor ratings, and while budget constraints are commonly blamed, I believe the issue lies elsewhere.
The problem, I think, is not CGI itself but a lack of creativity in how it’s used. Creativity spans all aspects of filmmaking, from visual techniques to worldbuilding and storytelling. Films that lack inventiveness—no matter their budget—fail to resonate with audiences.
For example, stop-motion animation, once common in 1970s special effects films, required immense effort. Creating just a few seconds of footage could take an entire day, which necessitated careful planning. Each frame had to count, fostering a focus on quality over quantity.
On the other hand, CGI allows creators to extend sequences effortlessly. While convenient, this can lead to overexposure and diminished impact. Many B-movies with lengthy CGI monster scenes exemplify this problem; the more screen time they occupy, the more likely viewers are to notice flaws, breaking their immersion.
Learning from Classics: The Power of Restraint
Steven Spielberg’s Jaws and Jurassic Park illustrate the benefits of restraint. Jaws became a masterpiece partly because technical issues with the shark animatronic forced the director to reduce its screen time, amplifying suspense. Similarly, Jurassic Park‘s limited but impactful use of CGI dinosaurs left a lasting impression.
In contrast, The Lost World: Jurassic Park 2, while visually stunning, suffered from “dinosaur inflation”—too many CGI dinosaurs diminished their presence as a highlight of the film.
The takeaway? The overuse of CGI, rather than CGI itself, risks making a film less engaging.
Ultimately, Story Is Key
Even the most dazzling special effects won’t save a film if its story fails to captivate. Audiences invest time in films expecting a rewarding experience, and if that expectation isn’t met, the film becomes an unwelcome thief of their time.
Crafting compelling stories isn’t solely the domain of geniuses. Services like “Arasuji no Neko no Mori” (A Forest of Summaries), led by story designer Akihiko Imai, aim to help creators develop engaging plots.
With a well-crafted outline, filmmakers can translate their vision into satisfying visual content, employing practical effects and techniques to overcome production challenges while keeping the fun alive.