オムニバス企画のメリット・どうせなら大作を作りたいが完成させられない問題解決に

見やすく作りやすい短編作品

創作活動をする人の共通の思いとして、「本格的な作品にしたい」というものがあると思います。

それが時に「高望み」となって、いつまでも完成にこぎつけられない元凶となるのですが、映画など映像作品の場合、「本格的な作品」の一つの形として「長編作品」というものがあります。

通常は1時間半から2時間の長さがあると長編映画と呼びます。

 

私自身も、長編映画制作への憧れはありますし、実際に初めて製作した冒険映画は2時間の長編でした。

 

しかし、言うまでもありませんが、作品は長ければいいという訳ではありません。

単純に場面が多くなると、撮影時間も編集時間もそれに応じて長くなります。

実際問題として深刻なのは撮影期間が長期化することによる、製作の途中頓挫です。

 

それと、無視できないのは、観客の忍耐力です。

正直言って、よほどの映画好きでない限り、見ず知らずの人たちが出ている作品を、長時間続けては見てくれないのが現実です。

プロの作家やスタッフが準備して、プロの俳優が出演している作品でも、「つまらなくて見ていられない」と感じてしまうのが一般の観客なんです。

 

我々、無名の映像製作者は、10分程度の短編作品に特化して企画する、という選択がとても有効に思えます。

長編作品の場合、見る側もある程度覚悟をして、時間を確保しないと見始めることが出来ません。(そして多くの場合、結局は見ないで忘れ去られます)

10分程度の作品なら、「ちょっとした空き時間に見てみよう」となる確率は高まります。

この差は大きい筈です。

 

作りやすさの点から言っても、10分程度の短編作品は準備期間や撮影期間が比較的短くて済むので、途中で頓挫する可能性が低く、完成させやすいと言えます。

短編作品の長所と短所

  • 完成させやすい
  • 見てもらいやすい

というのが短編作品の長所ですが、他にもメリットがあります。

 

物語を作るために核となるのは、一つのアイデアです。

  • それだけで作品が作れるアイデア
  • いくつかを組み合わせて、合わせ技で何とか作品を成り立たせられる小さなアイデア

など、パターンはあるものの、いずれにしても、物語以前の「アイデア」を膨らませて「ストーリー」にする必要があります。

 

作業をしてみると、思いついたアイデアをバランスよく物語に溶け込ませ、まとめる難しさを実感します。

私も普段、あらすじメモなどを膨らませる作業をしますが、良いと思ったアイデアは断片的なものなので、それをある程度のリアリティをもって活かすための「お膳立て」が非常に面倒に思えることがあります。

リアルに見えるように手を加えれば加えるほど、辻褄が合わなくなったり、現実的でないと思えてきたりして、次第に当初感じていた「面白味」が薄れてくる感覚もでてきてしまいます。

 

これは、長編作品になればなるほど、調整が多くなるので、苦労が増えます。

 

一方で、短編映画であれば、「再現したいアイデア」にかなり特化した構成にしても、「サマになる」というメリットがあります。

深く考えれば、設定に疑問が湧きそうな話でも、短編作品という事で説明をバッサリと省略していることで、「見て楽しい場面」の比率を多くできるメリットがあります。

 

物語の作劇としては邪道かもしれませんが、実際に効果的なのであれば活かしても良い筈です。

 

ただ、短編作品特有の短所があります。

それが、「世界観や登場人物に愛着が湧かない」ということです。

これは、単純に接触時間の長さの問題です。

 

商業作品で、同じ話から

  • 2時間弱の映画版
  • 12話くらいで表現した連続ドラマ版

が作られる事があります。

 

通常は、映画版の方が予算も大きく、品質は上です。

テレビドラマ版の方は、劣化版という言い方が適切かどうか分かりませんが、やはり迫力のあるシーンが少なかったり、アラが目立つことが多いと思います。

 

でも、毎週1話ずつ、合計で10時間以上も見ていると、大抵の場合、登場人物や作品そのものに愛着が湧いているものなんです。

人気作品の場合「〇〇ロス」という言い方で良く話題になります。

 

2時間の映画だと、たとえ満足度が高くても「〇〇ロス」という言い方はしません。

 

2時間の「長編映画」であっても、テレビドラマの長さに比べて短い分、愛着は弱いのですから、10分程度の短編映画では、この「愛着」がゼロになることを覚悟して、「アイデアの魅力」で勝負するしかありません。

オムニバス映画の特徴

ただし、そんな短編映画でも、うまく組み合わせることで長編映画程度には、世界観への愛着を湧かせる方法があります。

それが、「オムニバス」です。

 

「オムニバス映画」というのは、共通の舞台やテーマで、別々の短編作品を連結した形式になっています。

 

見る側からすると、隙間時間に1エピソードずつ見られる気楽さがあります。

 

作る側から言うと、それぞれの作品は完全に「短編作品」の手間やコストで完成させられ、完成のたびに単品で公開できます。つまり、製作も比較的、気軽なんです。

 

企画段階で、「オムニバス」として成り立たせるために、中心にテーマや題材を用意して、それに即して複数の短編映画を作れば、最終的に長編作品の長さを持つオムニバス映画になります。

別のストーリーに共通する人物や場所を登場させたりすることでも、中心にある世界観が立体的に見える構造になるはずです。

 

何か一つの面白味さえあれば、短編映画単体としては、成り立たせるのが微妙なアイデアでも、オムニバスの要素にするという役割をもって、形にして活かすことができます。

これは、アマチュア映像製作者にとっては面白い可能性があるのではないでしょうか?

 

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