創作で絶対に避けるべきは完璧主義・変更前提で映像を制作するススメ

実際のところ、今の時代、映像作品は手軽に作れます。

映像制作専用の機器を揃えずに、仮にスマホ1台しか無かったとしても、十分に鑑賞に堪えるだけの映像作品を作ることができます。

 

でも、それはあくまで「物理的な意味で」です。

 

片手間にサッと映画が作れるわけではありません。

多くの人が、「まず撮影」と思ってしまいますが、実際の映画制作の工程からすると、「撮影」は後半戦と言えます。

商業映画などは、準備に何年もかけ、一気に数週間で撮影をして、編集作業に入ります。

 

そのため、念入りな準備が必要です、ということになるのですが、現実問題として、あまりにも真面目に万全の体制を整えようとすると、それもまた制作進行の足かせになってしまいます。

 

「せっかく作るなら良いものを」と構えてしまったとたんに、作品が作れなくなることがあるんです。

これは、その人の価値観や認識の違いが大きいので、具体的な話がしにくいのですが、要は、「自分の実力」からかけ離れた高いレベルを目指そうとすると、制作はストップするよ、ということです。

 

確かに、せっかく作ったものがアラだらけになったら、エネルギーを注ぐ甲斐がありませんし、「失敗したくない」という思いから二の足を踏んでしまう気持ちは良く分かります。

 

特に、撮影に関しては、妄想も含めて理想形を追い求めるものなので、

  • この状態で撮影して良いのかな?
  • もっと良い条件が整う可能性があるんじゃないのか?

と思い始めると、撮影の進行を躊躇したくなるものです。

 

例えば天候。

 

撮影予定日が、理想の天候でないことは良くあります。

「本当は快晴の日に撮りたかった」

とか、

「前回の撮影分の繋がりからすると、曇り空の方が良かった」

と言っても、果たして延期するべきかどうかの判断は付きません。

 

ベストを求めて撮影を延期したら、予備日の方が条件が悪くなる、という可能性も十分にあるからです。

黒澤明のように、ひたすら空のコンディションが良くなるまで、何日も待つ、などということは現実的ではありませんし、見習うべきでもないと思います。

 

撮影場所も同様です。

 

ロケ地として、ある場所を選んだものの、それはイメージ通りという訳ではなく、

「妥協すればここもアリかな」

という場合がほとんどです。

 

これも、より条件が合う場所が見つかるかどうかは分かりません。

「他を探す」

という選択肢をとれば、それと引き換えに「時間」は失うことになります。

 

更に言えば、キャスティングも同様です。

 

初めから「この役にはこの人」と決めてスタートした企画ならともかく、シナリオを元に配役を決める場合、「イメージがぴったり」ということはまずあり得ません。

そもそも、選ぶ側の判断が正しいかどうかも怪しいのが現実です。

 

実際は、スケジュールの都合がついて、引き受けてくれる人に出演してもらうことになります。

 

長い期間、温めてきた企画です。

「本当にこの配役で進めていいのか?」

と迷うことも、正直、あるはずです。

 

でも、創作にはさまざまな「決断」が絶対に必要です。

あらゆる可能性を残して、優柔不断に行動していては、時間だけ過ぎて行ってしまって、結局、何も作れずに終わってしまうんです。

 

今は、高価なフィルムを使って映画を作っていた時代ではありません。

デジタル撮影をする時代ならではの、新しい特徴を活かすことを意識すれば、色々な決断もしやすくなるのではないでしょうか?。

 

まずは、デジタル編集の利点を思い出してください。

パソコンで編集する上で最大の特徴は、映像を劣化させずに複製できることです。

 

  • 撮影素材
  • 編集データ

を保存しておけば、比較的手軽に「別バージョン」の編集が出来るんです。

 

あまり気に入っていない場面があった場合、撮影をし直して、そこだけ差し替えることが容易なんです。

 

この「必要なら差し替えが出来る」という選択肢を意識しておくと、決断がしやすくなります。

 

「シーンの初めに、見栄えのする景色を入れたい」と思っていても、撮影の当日、なかなかベストの景色を見つけられないことがあります。

一日のスケジュールは決まっていますから、景色探しだけで時間を使うわけにはいきません。

 

そんな時は、ベストではなくても、「とりあえず画面として成り立つ」、という景色を撮影しておきます。

それがどうしても気に入らないようであれば、後日、よりベストに近い景色の映像を撮影して、差し替えればいいんです。

 

また、これは、私が採用している「全編グリーンバック撮影」の方式ならではの話ですが、舞台となる場所(背景映像)も、後からよりベストに近いところが見つかれば、背景撮影だけやり直して、映像を差し替える事ができます。

「グリーンバック映画入門」参照

https://www.udemy.com/course/greenback-movie/?referralCode=200B44517C4F2255DEED

 

人物も同じ。

 

本来は演技の出来る役者さんに頼みたい役について、ベストな配役が出来ず、例えば監督自身が演じることもあるかもしれません。

 

後に、条件が合う人に出演してもらえることになった場合、その役の登場する場面だけ撮り直して、編集に組み込めば、より理想に近い作品になるかもしれません。

 

その際、前に撮影して編集したものも、無駄ではありません。

「別バージョン」として残すことで、企画としてはより魅力が増す可能性さえあるんです。

 

舞台のお芝居の世界では、全く同じ話を別の役者が演じることは普通です。

映画でも、一部のキャスト違いの作品を作ってもおかしくない筈です。

 

「そんなのは映画じゃない」

「芸術作品としての映画を冒涜している」

と批判する人もいるでしょうが、そもそも私は、「全ての映画を芸術作品にする必要は無い」と思っていて、「楽しい遊び道具」としての映画が増えた方が良いとさえ思っています。

ですから、私たちのようなDIY映画、インディーズムービーの作家は、修正して別バージョンを作る体制を「当たり前」にしてしまっても良いと思うんです。

 

こんな風に、「いざとなれば修正も出来る」という体制で映画を作れば、一つ一つの「決断」もしやすくなります。

恐らく、そんな「決断グセ」を付ければ、生産性が上がって全ての技術が早く向上するので、結果として修正は少なくなっていくでしょう。

 

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