実は難しい?物語創作の題材探し:ネタは普段自分が感じているあの感情から探せ
創作の動機
「書きたい事があるから小説を書く」
これは、至極まっとうな「動機」と「行動」です。
ところが、実際に「小説を書きたい」という人を観察すると、「書きたい事があるから小説を書く」という人は意外と少数派なのではないでしょうか?
「小説を書いてみたい」が先にあって、書き方を学んだりすることには大変に熱心ですが、最後の問題として「題材が思いつかない」という人が多いように思います。
これは別に、「書きたいことが無いなら書かなければいい」という話ではありません。
創作者は、創作すること自体で強烈な達成感を得られます。
それを期待して、作品を形にしようと思うのは、自然な動機です。
もちろん、誰からの依頼でもない創作の場合、その題材も手法も、全くの自由です。
むしろ、中途半端な知恵を付ける前の状態で、いくつか作品を完成させてみる事はとても有意義だと思います。
結果、雰囲気重視のぼんやりした作品が出来上がるとは思いますが、それはそれである種の魅力も出るかもしれません。
ただ、創作者にはここで次の不満が生まれます。
創作活動によって強烈な達成感は得られますが、自分の価値判断の基準は、1作ごとに驚くほど跳ね上がります。
初めは完成させただけで、十分に嬉しく、満足を感じますが、当然、完成させるだけでは満足が少なくなってきます。
次はもっと面白いものを、というように、自動的に作品のレベルは上がるものです。
求める「自己満足」も、文字通り、「自分だけが満足すれがいい」というレベルから
- 他人を楽しませる
- 他人を驚かす
- 他人に褒められる
ということから得られる満足感・達成感を求めるようになります。
その方が「自分だけが楽しめる」という自己満足よりも、満足感・達成感がはるかに大きいからです。
作品のレベルを上げるために、技術レベルを上げようと考えがちですが、鑑賞する側からすると、「技術レベルの向上」は「面白さのアップ」にはあまり貢献しません。
せいぜい「拙さからくるストレスの軽減」が実現できるだけです。
やはり最大の魅力は「題材」ではないでしょうか?
何故、大学生が作るものがつまらないのか?
有名な映画監督が対談の中で話した一節です。
「なぜ大学生のつくるものがつまらないかというと、内側が豊かでないのに自己表出しようとするからです」
最近、この文章がちょっと話題になりました。
もちろん、大学生を馬鹿にしているわけではありません。
まだ、考えも浅く、経験も足りないので、どうしても内面が豊かでない事は仕方ないんです。
問題は、内面の貧弱さがモロに出てしまうのに「自分」を題材に選んでしまう事です。
こうして作られた作品は、どうしたって薄っぺらになってしまい、客観的に魅力を感じるのが難しくなります。
これは、実際には年齢に関係ありません。
長く生きていても、大学生より内面が豊かになっているかというと、全くそんなことは言えないんです。
「この人、いい大人なのに驚くほど薄っぺらだなあ」ということが、SNSなどの普及によって目に見えるようになったのが現代です。
実は「不満」は題材の宝庫?
SNSを見ても、驚くほど世の中に対して不満を持っている人が多いことが分かります。
不満を口にすることで、「ストレス解消になっている」と勘違いされがちですが、実は、本人の脳には更にストレスが掛かっているそうです。
大抵の場合、周囲の人も不快な思いをするだけなので、完全に負のスパイラルに入ります。
でも、「不満」を「題材」に利用するのは良い手かもしれません。
作家・大藪春彦のデビュー作「野獣死すべし」は、当時大学生だった作者の、世の中全てに対する不満が盛り込まれたような、怨念のこもった傑作小説です。
しかし、SNSで身勝手に不平不満を垂れ流すのと全く違い、痛快な娯楽小説になっています。
「創作をしたいけど何か良い題材はないかな」
という場合、強力なエネルギーを持つ「不満」「問題意識」をモチーフに使うことは、かなり有効だと思います。
さらに、それらをモチーフに小説や映画にしようとする場合、少なからず、色々な立場に立って設定などを考えることになるでしょう。
SNSで一方的に糾弾していた相手や事象に対しても、多少なりとも理解が深まるはずです。
そうすると、実生活の中で感じる不満の多くは、自分の認識の浅さから来ることに気付いたりもします。
つまり、創作活動が
- 日常の不満を少なくする
- 達成感を味わう
という一石二鳥の効果をもたらすことになるんです。
文章作法の難しさが無い「映像」
例として、「小説」という創作を使いましたが、私は、小説は最高峰のエンタメ創作と思っています。
同時に、小説は、完成させるのは難しい分野であると思っています。
最終的に目に触れる、「文章」の部分には高いレベルの「正しさ」があるのが大前提で、それに加えて、演出としての描写も文章で行なう必要があるからです。
ストレスなく文章を読むための最低の文章力を持った上で、味わいや雰囲気を「文章」で表すのは、正に職人技です。
一方で、映画のような映像作品は、異論もあるでしょうが、ある意味においては、「簡単な創作」と言えるのではないでしょうか。
目の前の光景を、文章に変換して伝えなければいけない小説と違い、そのまま撮影することで伝えられる「映像の簡単さ」は、確実に存在します。
もちろん、「映像作法」も様々あります。
しかし、「文章作法「小説作法」に比べれば、はるかに直観的に身に付けていくことが出来ると思うんです。
それを感じたのは、以前、私が地元の映像コンテストに参加したとき、私と一緒に受賞して登壇した高校生の作品を見たときです。
女の子二人が初めて作った短編映画という事でしたが、細かな技術的拙さはともかく、ちゃんと内容が伝わっているのを見て、ストーリー創作における映像の平易さを確信しました。
恐らくですが、高校生が同じ話を小説に書いたとしても、かなり文章力が無い限り、
- 場面が良く分からない
- どちらのセリフなのか良く分からない
というストレスが掛かる作品になりがちだと思います。
面白いかどうかという、以前の課題が多いんです。
ですから、「ストーリー創作をしたい」という場合、意外に思われるかもしれませんが、小説より映像というメディアを選択した方が、初心者には向いている、という側面があることを知っておいても損は無いと思います。
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Struggling with Creative Story Ideas? Start with the Emotions You Feel Every Day
The Motivation for Creation
“People write novels because they have something to say.”
This is a perfectly valid motivation for creation. However, if you observe those who say, “I want to write a novel,” you might find that relatively few actually begin with a clear message they want to convey.
Instead, many start with the thought, “I’d like to try writing a novel,” and eagerly learn how to structure stories—only to encounter the ultimate obstacle of “I can’t think of a good idea.”
This isn’t to say, “If you don’t have something to say, don’t write.” The act of creation itself often brings creators a profound sense of fulfillment. This, in itself, is a perfectly natural reason to start shaping a piece of work.
Why Themes Become Increasingly Important
When creators first begin, completing any work at all is enough to bring satisfaction. However, as they progress, their standards rise rapidly. Each completed work leaves them craving something even better.
Over time, self-satisfaction evolves:
- Entertaining others.
- Surprising others.
- Receiving praise.
These provide far greater fulfillment than private self-indulgence. And while improving technical skills is essential, for audiences, polished craftsmanship primarily reduces frustrations—it doesn’t automatically make something more engaging. The heart of any compelling work lies in its theme.
Using Frustrations as a Source of Inspiration
People express a surprising amount of dissatisfaction on social media. While venting is thought to alleviate stress, it may actually increase it, creating a negative loop for both the complainer and their audience.
However, channeling frustrations into creative works can transform them into powerful motifs.
Take, for example, the debut novel The Beast Must Die by Haruhiko Oyabu. Written during his university years, it channels his dissatisfaction with the world into a gripping and entertaining story. Instead of mere complaints, the result was a thrilling and impactful piece of fiction.
If you’re struggling for story ideas, tapping into your own frustrations or problems may be an effective approach. Moreover, turning dissatisfaction into storytelling often requires exploring multiple perspectives, deepening understanding of opposing viewpoints.
In this way, creative activity not only brings fulfillment but also reduces everyday frustrations—a win-win outcome.
Why Beginners Should Consider Film Over Novels
While novels are often seen as the pinnacle of creative expression, they’re also one of the most challenging mediums to perfect. Mastery of language, grammar, and descriptive prose is necessary to achieve the “smooth readability” readers expect.
Conversely, visual mediums like film offer a more intuitive and accessible route for storytelling. With film, creators can convey meaning directly through imagery, bypassing the complexities of translating visions into words.
This was evident when I participated in a local film competition. A short film created by two high school girls was technically rough but still communicated its message effectively—something that might not have been possible had they attempted a novel instead.
For those eager to tell stories, starting with visual media may offer a more beginner-friendly path.