ストーリーが持つパワー:情報発信を「映画」の形に変換して伝えるという方法
私は普段、「映画制作に特撮の技術を使うと、コストが激減しますよ」とお伝えしています。
コストが下がるということは、「予算が無くて出来ない」と思っていた企画の多くが、手法や形はともかく、「実現させられる」ということです。
ただ、そうは言っても「映画づくり」という言い方をすると、芸術作品や娯楽作品と言った、「あくまでも趣味の楽しみのための活動」と思われがちです。
多くの人たちは、余暇を使ってわざわざ創作活動などしませんから、映画作りは自分とは無関係と思っているのです。
私は、映像製作や技術文書作成関連の仕事をしているのですが、先日、お客さんと雑談していて気付いたことがあります。
今、多くの業界では、自分たちからの情報発信の必要性を痛感されているようです。
売り上げを上げるための「宣伝」としての意味合いだけではありません。
例えば、福祉施設などは、利用者に知っておいて欲しい情報が山盛りです。
関係者にとっては当たり前のことが、十分に知られていないために起きるトラブルが多いそうです。
知識不足・認識不足から来るクレーム・トラブルは、早い話が、その情報を広く知らせて浸透させてしまえば、その多くを解決できるわけです。
それは、当事者の方々も認識されていて、日々のSNS投稿をされていたり、地道な活動をされているようですが、正直、あまり効果が出ているとは思えません。
伝えたい事をそのまま発信しても、受け手が初めからそのことに問題意識を持っていない限り、わざわざ目を通さないんです。
これだけ情報過多の時代ですから、
- 見やすい
- 分かりやすい
- 面白い
という条件を揃えないと、見てはもらえないんです。
そこで絶大な効果があると確信できるのは、映画のような「ドラマ」です。
発想としては、警察が実施する「交通安全の紙芝居」とか、「オレオレ詐欺防止のコント」とかと同じです。
標語を掲げて説明すれば同じ内容を告知できるのに、なぜ、手間をかけて紙芝居を作ったりコントをしたりするのか。
理由は単純です。
その方が、
- 見やすい
- 分かりやすい
- 面白い
ので、しっかり伝わるからです。
テレビドラマで「空飛ぶ広報室」というものがありました。
人気作家・有川浩の同名小説が原作です。
航空自衛隊という、一般には馴染みが無かったり、反感を持つ人もいる組織を舞台に、楽しい出来事、深刻な出来事を巧みに取り入れていて、エンターテイメントとして楽しめる事はもちろん、組織の理解を促すという事も実現できていると思います。
もちろん、これはフィクション作品ですが、自衛隊を題材に取り入れた作品が多い有川氏ですし、航空自衛隊もしっかり協力している作品なので、いい加減な描写は少ないと思います。
「芸術」や「エンタメ」以外の要素を入れると、途端に「プロパガンダだ!」と言って毛嫌いする人もいそうですが、映画と言うのは本来、情報伝達の強力な道具です。
もし、何か必要があって人に伝えたい事がある場合、効果の大きさや拡張性を考えると、ストーリーを持った「映画」を作ることを選択肢に入れても良い時代だと思います。
昔と違って、低予算で作ろうと思えば、桁違いに低予算で作ることも可能だからです。
例えば、福祉施設を紹介して、利用者に実情を理解してもらう目的で、ドラマを作ったらどうでしょう?
もちろん、必要な情報を盛り込みつつ、興味を持続させる面白いストーリーを作ることは容易ではありません。
でも、不可能ではないと思うんです。
そんなストーリーを使って発信するメディアとしては
- 小説
- コミック
もあり得ますが、印刷物を作るにはそれこそ大金が掛かります。
予算を少なくしようと思えば、どちらも電子書籍にするのが現実的でしょう。
そこで考慮すべきなのは「見る人は圧倒的にスマホユーザーだ」ということです。
小説もコミックもスマホでも見られはしますが、いかんせん画面が小さいので、特に高齢者には厳しいものがあります。
それを考えると、人物が出てきてセリフをしゃべってしまう「映画」が圧倒的に有利なんです。
そして、情報伝達の優先度が高い映画においても、とても有効なのが「特撮」と確信しています。
具体的には、舞台となっている施設の映像を背景として撮影しておいて、ドラマの登場人物はグリーンバックで撮影して合成する、という手法です。
このやり方を徹底すれば、施設利用者にはほとんど迷惑を掛けず、その施設を舞台にしたドラマが作れます。
「空飛ぶ広報室みたいに、テレビが題材を取り上げてくれればいいんだけど」と待っていても、恐らく何も変わりません。
自分たちで発信用のミニドラマをまず作って、運用してしまう、というバイタリティーが必要なのではないでしょうか?
その実現に特撮を活用できれば、痛快だと思いませんか?
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