趣味の映画創作は「芸術品」ではなく「工業製品」的に作るとうまくいく
「創作はこうあるべき」という呪縛から抜け出せ
プロの映画制作現場では、過労死レベルの働き方が一般的がという記事を読みました。
私も短い期間、プロの映像制作現場で働いたことがあるので、「好きでこの仕事をやってるんだから文句は言えない」という、「プロの仕事」とは言えない精神論で成り立っている状況は想像ができます。
簡単に言うと、ビジネスとして成り立たない条件で作品を作ろうとしているので、全て、現場のオーバーワークに頼って作らざるを得ない悪循環から抜けられずにいるということです。
映画制作の世界の最高峰であるプロの現場がこれでいいのか、という議論は、私は当事者ではないのでしませんが、全てにおいて自由であるはずの「自主映画」も商業映画のマイナス面までコピーしようとしているのを見ると、バカバカしいと感じてしまいます。
簡単に言って、「映画作りはこうあるべき」という理想論がはびこり過ぎだと感じます。
そういう私も、映画作りの真似事を始めた当初は、「野外撮影ではレフ板を使うべきだ」と、上手く使えずにかえって不自然な映像になるのに、プロの真似をしていました。
今なら、出来上がりの映像の状態だけで評価・判断できるので、レフ板を使わずにラフに撮影してしまいますが、当時は、それでは恥ずかしいような気がしていたんです。
少なくとも一度は、
- 画質にこだわる
- 撮影方法にこだわる
という時期を経た私は、現在、真逆の価値観で「出来るだけ面白い映画を作る」という目的にシフトしています。
そういう目で見てみると、実力や条件をはるかに超えたレベルを高望みすることになる、「創作はこうあるべき」という考え方が邪魔にしか感じられないんです。
映画は完成しないと始まらない
映画は制作過程がとても楽しいので、完成を先延ばしにしてしまう作家も多くいます。
正直に言えば、私もその一人です。
でも、仮に素晴らしい内容だったとしても、未完成に終わった作品は、0点です。
正確に言えば、完成を前提に協力してくれた仲間たちからの信用を無くすので大きなマイナス点を付けられることになります。
だから、実力が伴わないうちは特に、こだわりを我慢してでも完成を最優先させなければいけないと考えます。
たとえ拙くても、完成させて作品の量をこなすことで、確実に質も上がります。
そして、作品をできるだけスムーズに完成させる肝になるのが、「コスト意識」なんです。
ヒントは工業製品
「コスト意識」などという言葉を持ち出すと、「創作作品は工業製品ではない!」と反発する人がいます。
でも、そうでしょうか?
色々な技術や知識を組み合わせて作品を完成させる「映画」などは特に、工業製品的性質も多く持っているはずです。
だから、工業製品作りで有効な工夫は、映画作りにも応用できるはずなんです。
そのうちの一つに「流用」があります。
工業製品は、別の製品でも全く同じ部品を流用していることは良くあります。
例えば昔の戦闘機。
違う飛行機だからといって、全ての部品をオリジナルで設計して作っていては、コストが高くつきすぎるので、部品を流用するわけです。
実は映画の世界でも、映像の流用は頻繁に利用されています。
テレビのアニメーション作品では顕著ですが、
- 変身シーン
- ロボットの合体シーン
などは、毎回、同じ映像が使われています。
実写映画でも、古い記録映像はもちろん、「恐竜が戦っている映像」なども、特に古い映画では、同じ映像を別の映画で使い回していたりします。
こういうのを「ストック映像」と呼びます。
実際に映画を作ると分かるのですが、数秒間のちょっとした映像を撮影するために、わざわざ一日掛けて撮影に行かざるを得ないことが良くあります。
それを積み重ねる事は、撮影期間を長くさせ、結果、作品を未完成に終わらせる危険を高めることになるんです。
普段からできる心掛け
私は、「ストック映像」を充実させることで、かなり制作の効率化を図れると思っています。
私はもともと、恐竜映画が大好きで、自分でも恐竜が登場する映画をたくさん作りたいと思っていましたが、これまで作っていませんでした。
現在(2022)ようやく、ゴーストバスターズの恐竜版とでもいうような作品「恐竜霊」の制作を始めたので、撮影用の恐竜模型も作り始めています。
ただ、この恐竜映像は、この作品に使うだけで終わらせるつもりはありません。
様々な種類の背景に合成できるような状態で撮影して、恐竜映像の全てを「ストック映像」にしようとしているんです。
この映像は、別の作品にも流用することで、そちらの制作コストを大幅に下げる事ができますから、私の夢である、「低予算映画の量産」に一歩近づくはずです。
あなたは必ずしも恐竜映像に興味が無いかもしれませんが、ストック映像をためる意識はしておいた方がいいです。
例えば
- 街の雑景
- 川の流れ
- 車の流れ
- 展望台から街を見下ろした映像
など、撮影の必要が生じるたびに、その作品では使わないとしても、いくつかのパターンを撮っておきましょう。
そこで、たった2,3分時間を長く使うだけで、別の作品で「街の遠景の映像が欲しい」という時に、一日潰して撮影しに行く手間が省けます。
その分、別のところに時間とエネルギーを注げるわけです。
登場人物が映り込まない映像の多くはストック映像になり得ます。
「映像」という「映画の部品」のストックを増やして、後々、効果的に流用するためにも、「目先で使う映像の他に、ついでにストック映像も撮っておく」という習慣を身に付けると良いでしょう。
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Hobby Filmmaking Thrives When Treated as ‘Industrial Products’ Rather Than ‘Works of Art’
Freeing Yourself from the “Artistic Ideal” Trap
A recent article I read discussed the grueling overwork that defines professional filmmaking. Having briefly worked in the industry, I can attest to its reliance on the mindset of: “You love this work, so you have no right to complain.”
This unhealthy logic stems from attempting to create projects under unviable business conditions, leading to a vicious cycle of overwork. While I won’t critique commercial filmmaking as I’m not directly involved, seeing hobbyist filmmakers adopt these flaws feels unnecessary and absurd.
The idea that “Filmmaking must be done this way” is too widespread. When I started, I mimicked professional techniques—like using reflector boards for outdoor shooting—even when it created unnatural results. Now, I focus on the final image quality, skipping steps that don’t enhance the result. My current approach prioritizes making entertaining films over rigidly following professional norms.
Films Must Be Completed to Be Valuable
Many filmmakers delay completion, enjoying the process more than the final outcome. I confess—I’m often guilty of this myself.
However, no matter how brilliant the concept, an unfinished film scores zero points. Worse, it damages the trust of collaborators who contributed under the expectation of completion. For beginners especially, finishing a project, however imperfect, must take precedence.
The Industrial Mindset
Raising “cost awareness” in filmmaking can be controversial, with some claiming that creative works shouldn’t be treated like industrial products. But why not?
Film combines various techniques and knowledge, making it naturally suited for industrial practices. One such practice is “reuse.”
In industries like aviation, parts are often shared across models. For example, Japan’s WWII-era Army and Navy fighters used the same engines to cut costs. Similarly, films frequently use “stock footage,” such as transformation sequences in animations or dinosaur battles in older movies.
Building a Stock Footage Library
I’m a huge fan of dinosaur films and have begun creating one, Dino Spirits, that will feature miniature dinosaur models. But I’m planning to film dinosaur footage usable beyond this project, creating stock clips that reduce costs for future endeavors.
Even if you’re not into dinosaurs, the habit of shooting extra footage—like cityscapes, rivers, or scenic overlooks—when already on location will save time and effort for later projects. This small habit builds a robust stock library of cinematic “parts” to reuse across films.