撮影用クリーチャー模型・課題は魅力的なデザインと材料研究
B級映画の花形はクリーチャー
映画には様々な種類があって、趣味の違いによって興味の対象も大きく異なります。
私も、どちらかと言うと広く浅く楽しむ方なのですが、自分で作る対象としては、どうしても、小道具や大道具、映像合成で工夫を凝らした特撮映画に、より大きな魅力を感じます。
特に、「クリーチャー」と呼ばれる、異形の生物が登場する映画は、造形デザインを楽しむ意味でも大好きなジャンルです。
クリーチャーと言うのは主に、架空のモンスターや恐竜などと考えてください。
古くは、特撮の神様、レイ・ハリーハウゼンの「シンドバッド7回目の航海」、70年代の「エイリアン」、最近では「ジュラシック・ワールド」などが、代表的なクリーチャー映画です。
この種類の映画の魅力は、一言で言えば、「作り物の怪物なのに、まるで生きているかのようにリアルに動き回って、人間と対決する」という点です。
ポイントは、「デザイン」と「動き」です。
例えば、プラモデルのような模型工作があります。
造形物として鑑賞する対象として、ゴジラなどの怪獣模型や、エイリアンの模型を精巧に作るモデラ―がたくさんいます。
ただ、その多くは、「彫像としての模型づくり」が前提になっています。
「今にも動き出しそうな躍動感」や「質感」を工作技術で表現しつつも、基本は「硬い模型」なんです。
つまり、実際には動かない模型です。
造形的にはもちろん大変参考になりますが、カメラの前で動かす「撮影用模型」には、全く別の種類の圧倒的な難しさがあると感じています。
専用素材にも問題がある
「動くクリーチャー」をリアルに作ろうと思ったら、まずぶつかるのは材料選びです。
様々な用途に応じた、造形用の使いやすい粘土が売られていますが、それらは、完成品が硬くなります。
動く部分には使えないんです。
映画の世界では、主にウレタンフォームとラテックスゴムが、「動く模型」づくりの材料として使われます。
特に、表皮の部分の造形では、2種類の薬品を混ぜ合わせて、ケーキを作るようにオーブンで焼き固める「フォームラバー」という素材が一般的です。
ただ、この材料を使うには、全ての部品の石膏型を作る必要がある上、材料そのものが高価なんです。
きっちりした設計の元、工業製品のように量産する体制には向いていますが、趣味の映画のように、試行錯誤しながら模型を作るのには向いていません。
もう一つの「ラテックスゴム」は液体の天然ゴムです。
ウレタンなどで作った模型の表面に塗って、皮膚感を出したりするのが主な使い方です。
ただ、この材料に関しては、天然ゴムが劣化してボロボロになったり、ベトベトになったり、ということがあるので、完成後、一気に撮影に使って使い捨て、という事にせざるを得ません。
「せっかく作ったのだから使い回ししたい」という私の感覚からは、使いづらい材料です。
たどり着いた代用素材
私は、常々、安くて使いやすい材料が無いか試行錯誤しています。
少し前までは、木工用ボンドとして使われている「酢酸ビニル樹脂」というのが、硬化後もある程度の柔軟性があって可能性があるのではないかと試していました。
結論から言うと、酢酸ビニル樹脂で作った模型は、完成直後はまずまずの柔らかさを保っているものの、その後、硬化が進んでしまって模型としての柔軟性が無くなる、という致命的な欠点が明らかになりました。
使い捨てにするしかない、という点では、ラテックスゴムと変わらなかったわけです。
しかし、この「酢酸ビニル樹脂」で恐竜の表皮を作ろうとしたときに、石膏で型を作らずに、工業用のシリコンコーキング剤、というものを使ったことが、次のヒントになりました。
シリコンコーキング剤は、サッシ窓のアルミとガラスの間に塗り込まれているゴム状の素材です。
元々、工作用の材料ではないので、扱いづらい部分はあるのですが、型取り材料としては、模型工作専用のシリコンに比べてかなり安価に済むのが魅力です。
完成した型には弾力性があって、粘土などで複製を作ると、乾燥後にはがしやすい利点があります。
このシリコンの柔らかさを利用して、型から作る皮膚の部品自体も、シリコン製のものを作れないか、という発想が当然湧いてきます。
ただ、シリコンコーキング剤と言うのは、一切の塗装が出来ない特徴があります。
そのため、塗装が必須の「クリーチャーの皮膚」の材料としてコーキング剤は候補に挙げていなかったのです。
ところが、通常のシリコンコーキング剤より2割程度割高にはなりますが、「変成シリコン」というコーキング剤があることを知りました。
この特徴は、シリコンなのに、乾燥後、塗装ができる点です。
現在私は、「恐竜霊」というコメディー風の恐竜映画の制作準備を進めています。
シナリオ、絵コンテ作成まで終えて、恐竜模型の工作に入っています。
恐竜が登場するプロモーションの映像を先に作ることで、DIY映画倶楽部を通じて、出演者などの協力者を集めたいからです。
この作品にはいくつかの種類の恐竜が登場するのですが、1体目の恐竜の工作は着々と進み、頭部、背中、足回りなどの特徴的な鱗の形状の部分については、シリコンコーキング剤の型から抜き出した、変成シリコン製の皮膚を貼り付けています。
今のところ、柔軟性など、まずまずの状態だと思っています。
胴体、尾などは、型を使わず、粘土造形のように、ウレタン製の恐竜模型の表面に、直接、変成シリコンを塗り付けながらヘラなどで造形を進めます。
この後も、いろいろと問題は出てくるとは思いますが、基本的な作り方は確立できそうなので、私のDIY映画においては、クリーチャーモデルの材料として、「変成シリコン」がメインになりそうです。
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Creature Models for Filming: Challenges in Design and Material Exploration
The Stars of B-Movies: Creatures
Films come in various genres, and preferences vary greatly depending on individual tastes. While I enjoy a wide range of movies, I find myself particularly drawn to films that emphasize special effects, props, and creative set designs.
One genre I absolutely adore is creature films—movies featuring fantastical beings like monsters or dinosaurs. Classics such as Ray Harryhausen’s The 7th Voyage of Sinbad, the 1970s’ Alien, and modern hits like Jurassic World epitomize this genre. These films captivate audiences by making fabricated creatures move and behave so convincingly that they seem alive, clashing with humans in stunning, imaginative ways.
The core appeal lies in two elements: design and movement.
The Problem with Materials
Creating realistic, moving creatures inevitably leads to material-related challenges. Many commercially available clays for crafting are ill-suited for models that need flexibility, as they harden upon drying.
In the world of filmmaking, the go-to materials for “moveable models” have historically been urethane foam and latex rubber. For the skin of these models, “foam rubber”—a material baked like cake by mixing two chemical components—is a common choice.
However, foam rubber has limitations:
- Requires plaster molds for every part.
- High material cost.
This makes it unsuitable for hobbyists experimenting with trial-and-error approaches.
Another option is liquid latex, often used to coat models for a realistic skin texture. Unfortunately, latex deteriorates over time, becoming sticky or brittle. This restricts its use to one-time projects, clashing with my preference for reusable materials.
Discovering Alternative Materials
I’ve been on a constant quest for affordable, versatile materials. At one point, I explored polyvinyl acetate resin, often found in woodworking glue. It initially seemed promising, retaining some flexibility post-hardening. But over time, the material stiffened irreversibly, making it no better than latex for reusable models.
A breakthrough came when I experimented with industrial silicone caulking—a material typically used to seal gaps in windows or plumbing. Though not originally intended for crafting, its affordability and elasticity make it an attractive alternative to specialized silicone.
The Role of Modified Silicone
Standard silicone caulking cannot hold paint, making it unsuitable for detailed creature skin. However, I discovered a variant called modified silicone, which allows for painting after curing.
Currently, I’m applying this material in the production of my comedy dinosaur film Dino Spirits. The model-building phase is progressing well, with features like heads, scales, and legs crafted using molds and modified silicone. Other parts, like torsos and tails, are sculpted directly onto the model’s surface.
Although challenges remain, I believe modified silicone will become a staple material for creature modeling in my DIY films.