完成作品だけに価値があると思ったら大間違い!プロジェクト全体を「作品」にせよ
創作者は「完成品」で評価してもらいたいけど
創作の魅力は一言で言うと、作家が創造主になれることだと思います。
自分の頭の中にしかなかった妄想が、色々な段階を経て形になる状況を、自分の力で実現できるのが創作です。
この魅力を体感してしまうと、他の遊びではなかなか満足感を得られないようになります。
それくらい、楽しさを秘めているのが「創作活動」です。
もちろん、創作には「根気」が不可欠です。
手を使ったり、頭を使ったりすることが嫌いな人には向かない趣味です。
何についてもそうですが、「そのこと自体を楽しめる」というのが最大の才能ですから、楽しみを感じられない人にはおススメするつもりはありません。
もし、あなたが「創作」に楽しさを感じているのであれば、それだけで十分な才能があると言えるのですが、創作者として「完璧主義」の気質がある人は、気を付けなければいけない事がいくつかあります。
その一つが、「完成品だけを見て評価してもらいたい」という意識です。
これは、大なり小なり、誰にもある感覚だと思います。
私も昔、作品を撮影していて、出演者である友人に「途中でもいいから映像を見たい」と言われるのが嫌でした。
未完成の状態で作品を見せたくない理由は2つあります。
1つは、作品として立派に完成させたものを「初見」として見せて、
- 楽しんでほしい
- 驚かせたい
- 感心させたい
という思いです。
製作者本人でも、バラバラに撮影した映像素材を丹念に組み合わせて、音とミックスさせ、「一連の映像作品」になった状態を見ると、ある種の不思議な感動があります。
これは、例えば、一連の演技をしている舞台のお芝居を撮影して作った映像とは全然違うんですね。
舞台映像は、実際に目の前で起きていた芝居のやり取りを、映像で再現しているだけですが、「映画」は目の前で一連のやり取りがあった訳ではないんです。
「こう見せたい」という意図を優先するため、バラバラのぶつ切り状態で撮影した素材、場合によってはミニチュアセットのように、スケールさえ違う映像素材までを組み合わせるため、映像になって初めてその世界が具体的になるんです。
ですから、撮影に参加した人の多くは、事前に絵コンテなどで説明されても、完成品の全体像はイメージ出来ていないものです。
多くの場合は、プロデューサー、監督だけが完成品をイメージして作っていくことになります。
それもあって、完成品で「こんな感じに仕上がるのか!」という驚きを、出演者などの関係者には味わってもらいたいと思いがちなんです。
2つ目は、特に編集作業によって大きくイメージを変えるタイプの作品の場合や、サマになった形にするために色々と加工修正が必要な撮影素材の場合、それを見せることで「なーんだ、この程度の作品なのか」と失望して欲しくない、という思いです。
そんな理由から、「創作者は完成品だけを見せたい」と思いがちです。
でも、厳しいことを言うと、あなたや私が作る作品を、「完成品の出来」だけで評価すると、正直大したことはないんです。
考えてもみてください。
プロのクリエイターたちが、大金を集めて、一流の出演者を使って作った映画やドラマを、素人の観客・視聴者が、
- 面白くない
- 演出にセンスが無い
- ストーリーがありきたり
- 演技が下手
- 見るだけ時間の無駄
などと、いくらでも批判しているんです。
プロ集団が作った作品に対して、「見る時間が無駄」という人に、あなたや私のレベルの創作者が作った作品をみせて、
- テレビドラマや商業映画より面白い
- 楽しい時間を過ごせた
などと思わせる事は、ほとんど不可能に思えます。
「テレビドラマや商業映画より面白い」と感じさせる数少ない方法の一つは、「メイキングの魅力」を使う事です。
本当は魅力が大きい「途中過程」
例えば、90分の映画を作るために、どれだけの時間を費やすか考えてみてください。
映像製作は
- 撮影前準備
- 撮影
- 撮影後作業
の3つに大きく分けて考える事が多いのですが、全てを合わせると、数千時間から数万時間掛かっていることが普通です。
私たちが作る自主映画・DIY映画にしてみても、レベルの違いこそあれ、かなり多くのエネルギーを、制作過程で注いでいるわけです。
なぜ、そんなに膨大なエネルギーを、作品の制作工程で使えるのか?といえば、答えは簡単。
「面白いから」です。
現代は膨大な作品を見られる時代です。
単に「面白い映画を見たい」というだけなら、いくらでも探してきて、パソコンやスマホでも見られるんです。
創作活動をすることで、それ以上の面白さ、満足感を得られるから、手間暇かけて、自分のオリジナル作品を作っているんです。
是非、考え方を拡げてください。
「作品の出来で勝負したい。評価されたい」という作家にとっては、ある意味では、残念に思うかもしれませんが、客観的に見て、あなたや私が作る映像作品の「完成品」と「制作過程の様子」では、後者の方が圧倒的に魅力が大きいんです。楽しいんです。
これは不思議な事ではありません。
だって、制作過程が楽しいから当事者は作業しているんですから、それを見て疑似体験することが出来れば、観客も楽しいのは当たり前なんです。
メイキングの発信こそメインにすべき
では、私たち創作者は、何をすべきでしょうか?
それは、とりあえず、「メイキングの記録を残す」ことです。
これは、強く心掛けないと実現しません。
理想としては、記録係を確保することです。
打ち合わせの様子を固定カメラで延々と撮影しておいたり、準備作業の様子を撮影しておいたり。
撮影の工程では、スタッフの1人か2人にビデオカメラを持たせて、現場の様子を撮影してもらいます。
撮影されている方にはあらかじめ、「リアクションせずにカメラは無視していい」と伝えておきます。
また、メイキングカメラマンは、ついつい本番のときに役者を撮影しようとしますが、撮影すべきは、本番用のカメラが向いていないスタッフ側です。
この、「裏側の様子」の記録こそ、メイキング映像のキモになります。
通常、メイキング映像は、完成した本編映像の付録として追加されます。
ここでも、考え方の変更が必要です。
メイキング映像は、その一部で良いので、随時、SNSなどで発信しましょう。
- 今、こんな創作活動が進行中なんだ
- なんか、面白そうなことをやってる
という告知を続けた後に、「作品が完成しました!」と発表すれば、少なくとも一部の人にとっては、ある程度の愛着が先に湧いていることになります。
全く無名の創作者が、いきなり「作品が完成しました」と告知するのに比べて、「見てみようか」と思う動機には、雲泥の差が出るはずです。
メイキングの映像が1時間以上あって、本編の長さが10分間でも全く問題がありません。
極端に言うと、「食玩」でいうところの「お菓子」の部分が本編で、「オマケ」の部分がメイキングなんです。
作り手は、作品の完成を目標に膨大なエネルギーを注ぎますが、実は「作品」は「完成品」だけでなく、「制作過程の資料」、「メイキング映像」も全部含めたものであると捉えてはどうでしょうか?
参考になったら記事をシェアしていただけると幸いです。
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