創作の基本技術:安価な代用シリコンで型を取って部品を複製する方法
複製の元になる原型
あなたは「模型」というと何を思い浮かべるでしょうか?
プラモデル、鉄道模型、ドールハウス、ラジコン、色々あると思います。
大抵は、模型それ自体が「商品」になっているものをイメージするのではないでしょうか。
しかし、今回は、商品になっていないものを、ゼロから自分で作るタイプの模型について考えてみます。
今は、映像で言うとCG、立体造形で言うと3Dデータを作って3Dプリンターで出力する、という技術が飛躍的に進んでいます。
でも、勘違いしてはいけない事があります。
CGや3Dデータは道具の一つであって、基本は手で描き、手で造形することだということです。
世の中には「原型師」と呼ばれる人がいます。
例えば、カプセルトイには「世界のカエル」とか「古代魚」とか、面白い模型のシリーズが無数にありますが、あれらは、原型師が作った粘土の模型が元になっています。
多くの場合、プロの原型師は樹脂粘土でオリジナルの模型(原型)を作り、それを元に複製したものを商品として販売しているわけです。
その複製の時に必要な工程が「型取り」というわけです。
美術の世界では、硬化しないタイプの粘土で何日もかけて原型を作るのが一般的です。
その原型を型取りして石膏像などにしたものを完成品とします。
型取りの2つの目的
型を作って複製する目的は2つあります。
- 同じ形状のものを複数作りたい
- 同じ形状のものを違う素材で作りたい
という2つです。
前者は、例えば一つの原型を元に大量生産して販売する時の目的です。
後者は、粘土像を石膏像にしたり、粘土で作ったものを樹脂にしたりゴムにしたりという場合の目的です。
原型と型の材質について
原型と型は、少なくともどちらか一方が、柔らかい素材である必要があります。
原型が硬化しない柔らかいタイプの粘土であれば、石膏型が使えますが、原型を硬い素材で作った場合は、石膏型は作れません。原型から石膏が外れないからです。
私は最近は、柔らかい素材で型を作る方法を多用しています。
そうすると、工作性の良いフォルモ粘土や樹脂粘土で原型が作れる上、石膏型よりシリコン型などの柔らかい方の方が破損しにくいからです。
柔らかい型の素材として専用のシリコンゴムも販売されています。
プラモデルのような精密な模型部品の複製用のシリコンは、液状で、細かい形状を正確に複製するのに向いています。
ただ、専用素材なので、比較的高価なんです。
私は最近、代用素材として、建築用資材の「シリコンコーキング」を使っています。
使い勝手などに短所もあるのですが、圧倒的に安価で作業が出来るのが魅力です。
300mlのものが600円ほどで売られています。
液状でなくペースト状なので、流し込みによる細かな形状の複製には向いていませんが、動物の皮膚の皺や鱗のモールド程度なら十分に複製されます。
型取り作業の実際
元々、石膏で型を取る場合は、原型から外すために分割線を厳密に考えなければならなかったりして、なかなか難しい部分があるのですが、シリコンで型を取る場合は、それほど難しくありません。
多少の伸縮性があるので、原型の形状によって型を複雑に分割しなくても、うまく外れるからです。
具体的な作業を解説します。
まずは、フォルモ粘土や紙粘土などで原型を作ります。
木材などを使っても構いません。
私は恐竜の皮膚を作ったりするので、粘土の表面に鱗の模様を彫ったり、細かなシワを表現したりします。
造型が完了したら、よく乾燥させます。
私は乾燥後、補強のために、表面にニスを塗ることが多いです。
原型が完成したら、表面に筆でワセリンを塗ります。
ワセリンは離型剤の役目をします。
これを塗らないと、シリコンが原型に完全に接着されてしまって、型が外れません。
最後に、ワセリンを塗った原型にシリコンコーキング剤を塗り付けていきます。
私はペインティングナイフを使って塗り付けます。
ワセリンが効いていて、シリコンを弾こうとするので、原型との間に隙間が出来ないように注意します。
厚みは5mmから10mm程度を意識します。
シリコンを塗ったら硬化させます。
シリコンコーキングは、水分に反応して数時間で硬化する性質があるので、表面に霧吹きをすることもありますが、通常は一晩おけば、空気中の水分で硬化します。
私はいつも、夜、ベランダに出しておきます。
シリコンが硬化したら、原型から型をはがします。しっかりとワセリンを塗ってあれば、簡単にはがれます。
これで、型の完成です。
出来上がった型の内側に、必要な材料を塗り付けて複製します。
硬い部品を複製するのであれば、石膏やレジンなどを流し込みます。
皮膚のような柔らかいものを作るのであれば、ラテックスゴムや変成シリコンなどを塗ります。
硬化したシリコンは、シリコン以外はくっ付かないので、ラテックスゴムなどはそのまま塗っても構いませんが、シリコン型にシリコン素材を塗る場合は、離型剤として、やはりワセリンを塗っておきます。
正解のない創作作業
正直、工作のような創作作業には正解がありません。
「この手法は使える」と思って多用していても、色々と問題が出てきたり、ちょっとした発想の転換で、もっとシンプルで良い手が出てきたりするのが日常茶飯事です。
大事なことは、正解としての手法を確立することではなくて、その時その時にベターだと思った手法を使って、都度、作品を完成させることだと思います。
そうでないと、いつまで経っても作品が完成しないからです。
参考になったら記事をシェアしていただけると幸いです。
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