神は細部に宿る?映画で使用する小道具工作のポイントは「こだわり」と「手抜き」のバランス
小道具が作品の世界観をリアルにする
映画は虚構の物語です。
「現実にはあり得ない」などという作品批判はナンセンスですが、作品の世界を少しでもリアルに見せる工夫はとても重要です。
そして、虚構をリアルに見せる方法のひとつが、小道具の使用です。
小道具は、「物語の中心で重要な役目」をすることもあれば、「ちょっとした味付けやリアリティの補助」に利用することもあります。
重要な役目を果たす小道具は例えば
- 「指輪物語」の「指輪」
- 「レイダース」の「聖櫃」
などですし、味付けや補助の小道具は、警察手帳の類などです。
映画は主に人物の演技を使って物語を作っていきますが、小道具を上手く使うと、物語にプラスアルファの魅力を加える力を発揮します。
撮影時に必要な小道具と不要な小道具
基本的に撮影時には小道具を準備していきます。
小道具を忘れて、必要な撮影が出来ないという事態になってしまうからです。
ただ、見せ方によっては、小道具は別撮りできる場合もあります。
ドラマの撮影時はどうしてもバタバタしてしまって、小道具の撮影がおざなりになってしまいがちなので、あえて、最初から別撮りを想定して撮影することもあります。
角度や照明に凝った撮影をしたい場合は、その方が良かったりするからです。
私が良く使うのは、小道具をデジタル合成する手法です。
この手法はとても応用範囲が広くて、画面を華やかにするのに、とても役立ちます。
しかも、画面上で縮尺を変えられるので、実際には小さな模型を大きく見せることも出来ます。
デジタル合成する前提であれば、小道具は撮影現場に持ち込む必要はありません。
後から、合成編集しやすいように別撮りするからです。
合成用小道具は段階的に仕上げる
私がいつも失敗してしまう事例を紹介します。
それは、「小道具を必要以上に作り込んでしまう」という失敗です。
私の映画は「工作系映画」と自分でも呼んでいる通り、手作りの工作模型を映像の中にたくさん盛り込みます。
その中で、別撮りを前提にした小道具も多くあります。
そのうちのいくつかは、ある程度、見映えを重視したり、リアリティを出そうと思って、時間を掛けて作り込みます。
ただ、映像作品として仕上げてみると、拍子抜けするほど、その多くはその小道具の表示時間が短いんです。
細かいところまで丁寧に作り込んだとしても、画面からはほとんどそれが確認できません。
つまり、労力を掛け過ぎて割に合わない傾向が強いんですね。
「丁度よい加減」で労力を掛けられれば、言い換えれば、良い具合に手を抜ければ、全く同じ映像をもっと短期間で作れたわけです。
この「手の抜き方」はなかなか難しいので、2段階から3段階に分けて小道具を作って、実際に合成編集をしてみることをおススメします。
具体的には、第1段階として、最低限の品質で小道具を作ります。
「ちょっとラフすぎるかな?」と思っても、一旦そこで工作を仕上げます。
そして本編映像に合成してみるんです。
絵コンテで描いただけでは分かりませんが、映像にしてみると、表示時間は1秒程度がふさわしいことが多くあります。
1秒間の表示であれば、工作のアラも目立たず、何の問題も感じられないこともよくあるんです。
それでOKなら、その映像については完成版にしていいでしょう。
もし、編集映像を見たときに、工作のアラが目立っていて、もっと作り込むことによって改善が見込まれるのであれば、改めて模型の工作を作り込んで改造すればいいんです。
- 模型の撮影
- 合成編集作業
はやり直しとなりますが、工作の作り込みに比べれば、追加の労力はほんの僅かです。
私の感覚としては、「念のために」と思って、時間を掛けて作り込んでも、映像にしてみると効果的でないことが本当に多くて、がっかりする場合がほとんどです。
実は、現在編集中の作品でも、時間を掛けて作った小道具を合成編集してみて、それを痛感しています。
今後は、さらに小道具の無駄な作り込みを減らし、その分、制作ペースを上げられるような工夫をしていきたいと思っています。
参考になれば幸いです。
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How Props Enhance the Realism of a Film’s World
Films and the Power of Props
Film is, by nature, a fictional medium. Criticizing a film as “unrealistic” misses the point, but striving to make a story’s world feel real is crucial. One effective way to achieve this is through the use of props.
Props can serve as pivotal elements, like the One Ring in The Lord of the Rings or the Ark of the Covenant in Raiders of the Lost Ark. Alternatively, they can be used for smaller touches to enhance realism, such as a police badge.
While films primarily rely on actors to drive the narrative, skillfully employed props add extra layers of charm and depth to the story.
Props in Production: On-Site or Edited In?
Props are typically prepared in advance to ensure smooth filming. However, depending on how they are shown, some props can be filmed separately.
During a hectic shoot, prop-focused shots may be rushed or overlooked. Planning for separate prop filming allows for more deliberate lighting, angles, and attention to detail.
I frequently utilize digital compositing for props. This technique offers immense flexibility, letting you scale up miniature models to appear much larger on screen. When compositing is planned from the start, props don’t even need to be on set, as they can be filmed separately to streamline production.
The Pitfall of Overworking Props
One of the common mistakes I’ve made is “over-designing” props—putting excessive effort into details that rarely make a difference on-screen.
In my “craft-based” films, hand-built models play a major role, and many are intended for separate prop shoots. While I sometimes pour hours into ensuring a prop looks impeccable, it’s often only visible for a fleeting second. This disparity between effort and screen impact can be disheartening.
To address this, I recommend a step-by-step approach:
- Create a Basic Version: Start with a minimal viable design. Even if it feels too rough, composite it into the main footage first.
- Evaluate After Editing: Many times, a prop that appears for just one second works perfectly fine even in its rough state. If flaws are noticeable, you can return to improve the design.
- Polish Only If Needed: If adjustments are required, enhance the prop and reshoot it. Compared to designing it perfectly from the outset, the additional work here is minimal.
This approach has saved me from wasting time and energy. I’ve recently learned, through trial and error, that “better to create efficiently than perfectly.” My current editing projects only reinforce this lesson.