低予算映画製作で伝統的手法に反する「背景合成」が圧倒的に有効な2つの理由とは?

理由1:ロケのコストをゼロに出来る

〇背景を合成する方法のおさらい

升田式スーパープリヴィズ法での映画作りは、映像はアニメーション作品のように

  • 背景
  • 被写体

を別々に撮影して、編集で合成します。

 

「何でわざわざそんな面倒なことをするの?」

という疑問はもっともなのですが、これが30年以上、余暇を利用して自主映画を作ってきた結果、たどり着いた、最も楽にイメージ通りのシーンを作り出す手法で、思いがけないメリットも多いんです。

 

スーパープリヴィズ法について簡単に解説すると、

  • 現地で背景映像を撮影する
  • 人物の代わりに人形を背景映像に合成する
  • 合成映像に仮音声を加えて最後まで編集を進める
  • 人物の映像をグリーンバック前でまとめ撮りする
  • 人形の映像と人物の映像をそっくり入れ替える

という手順で、映像を構築します。

 

第一段階にあるのが、「背景撮影」という作業です。

〇重宝するフリー素材

実は、ここでちょっとずるい方法として、「フリー素材」を活用する、という方法があります。

フリー素材というのは、著作権がフリーで、自分の作品に合法的に使える素材の事です。

写真や動画、音声、曲など、色々なものがあり、中には無料で入手できるものもあります。

 

背景映像として使えるものも多く、私もよく利用しています。

「全て自分たちで撮影した映像を使わなくていいのか?」という考えもあるでしょうが、「森林の上を飛ぶ空撮映像」など、ほんの数秒しか使わない映像を自分で手配して撮影するのは、割に合わなすぎると私は考えます。

 

例えば森のシーン。

魅力的な森の写真や映像のフリー素材を使って、背景にすることは可能です。

でも、問題がおきます。

 

1つのシーンは大抵、いくつかの別の映像を組み合わせて成り立っています。

例えば二人の人物がやり取りしているような場合、

  • ツーショット
  • Aのアップ
  • Bのアップ

などの組み合わせを繰り返して、会話のシーンにしているのが普通です。

そうすると、この3つの映像に、それぞれ違う角度で撮影した森の背景が必要なわけです。

 

フリー素材に運よく、同じようなテイストの別の写真が3種類以上見つかれば、成り立たせることは出来るかもしれませんが、そう都合よく素材を見つけられることはめったにありません。

そうなると、「1カットだけ単独で使用する背景」以外はフリー素材を使うのでなく、自分で撮影してきた方が現実的と言えます。

 

森のシーンであれば、実際にカメラを持って森に行き、撮影してくるという事です。

自分で撮影するので、必要になるであろう、さまざまな角度の映像を確保することが出来るはずです。

 

「結局、ロケに行っているじゃないか」と思うかもしれませんが、コストは全然違います。

出演者も他のスタッフも同行させず、イメージを持っている監督一人がカメラを持って行けば済む作業です。

人件費に換算すれば数分の一になることは、重大な違いです。

理由2:ベストな瞬間をシーンに使える

コストを掛けてロケーション撮影すれば、より良い映像が撮れると思うのは、実は幻想です。

 

そのシーンはあらかじめシナリオの段階、絵コンテの段階を経て、監督の頭の中にイメージが作られていきます。

でも、そのイメージにぴったりなロケ地でいざ撮影しようとすると、全然、イメージ通りの映像にならないことがほとんどです。

 

一番大きいのは、光の問題です。

大手の商業映画では、昼間の野外撮影でも大量の照明機材を使っていたりします。

それはなぜかというと、実際の太陽の光だけでは、イメージ通りの映像にならないからです。

 

例えば、目で見る分には綺麗な景色でも、撮影しようとすると人物が逆光で黒く映ってしまうことがあります。

大掛かりな照明やレフ版を使わなくても、カメラの設定で人物が明るく映るようには出来ますが、その代わりに背景は白く飛んでしまって

「わざわざここまで来て撮る必要あった?」

というがっかりな映像になりがちです。

 

もっとシビアなのは、時間との戦いです。

 

例えば「逆光で光るススキの原っぱの前を歩くヒロイン」というような映像。

いかにも映画的で、魅力的だと思いませんか?

 

でも、映画やドラマでよくみるこういうシーンの撮影は、万全の準備をして「もの凄い短時間」で一気に撮り切る技術力がないと実現しません。

挑戦してみると分かりますが、光の状態が理想的なのは、信じられないくらいの短時間なんです。

「ちょっと風が強いから待とう」

「横を走るトラックの音がうるさいから待とう」

「セリフを間違えた」

などと言っていると、1カットも撮れずに終わります。

 

無理やり撮影しても、

「わざわざ天気のいい日の夕日を待って撮影したのに、こんな映像になっちゃうの?」

というがっかりな映像になります。

これが、太陽の動きと競争する必要がある、昼間の野外撮影のネックなんです。

 

ススキの野原のような、「絶妙な光の状態」を背景にして、綺麗なシーンを作りたいと思ったら、背景映像合成は最強です。

 

理想的な光の状態が5分間しか無かったとしても、背景だけの撮影なら、十分に間に合います。

必要なパターンとして例えば3つの角度で撮影する場合、練習も兼ねてA、B、C、の位置に移動して撮影することを繰り返すことをおススメします。

光の状態を見て「まだ早いかな」といううちに1巡しながら撮影し、「もう暗すぎるな」と思うまで何度も同じパターンで撮影するのが安全です。

 

最適な夕日の角度になるはずの時間に、ちょうど雲がかかって暗くなる、という事は当たり前に起きます。

繰り返し撮影しておけば、次善策としてその前後の映像が使えるはずです。

 

人物撮影はグリーンバック前で別撮りなので、演技や照明にこだわって、たっぷり1時間掛けて撮影しても何の問題もありません。

結果、不自然な撮影方法の合成映像の方が、理想のイメージに近い映像になるんです。

 

基本的には、脚本に沿って背景映像を撮影していきますが、今しか撮れない「旬の景色」はとりあえず撮影してストック映像にしておくことをおススメします。

例に挙げた「ススキの野原」などは理想的なストック映像です。

 

何故か、手に入らなくなると欲しくなるのが、こういう「季節の素材」です。

今、手元にストーリーが無かったとしても、すぐに進められる作業が、こういう「背景用ストック映像の撮影」です。

スマホでも十分なので是非、やってみてください。

 

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