「手間を掛ければより良いものができる」という勘違いをしていませんか?
手を抜いてみて分かること
とにかく、丁寧にじっくりと作業をすることが大事で、短時間で要領よく済ませようということを、「悪いこと」とみなす風潮があります。
これ、仕事においても悪思想がはびこっていると思います。
もちろん、「守破離」の大原則は大事です。
基礎を身に付けていないのに派手な応用をしようとしても、うまくはいきません。
私が言っているのは「時間を掛ける」ことと「丁寧な仕事」を混同しないように、ということです。
例えば、毛筆と墨で字を書く練習をするときに、お手本の形をきっちりなぞろうとして、秒速5ミリくらいのスピードでゆっくり書いてもダメなんです。
書道なら、墨はにじみますし紙も破れます。
ある程度の速度で筆を動かすのは前提で、その上でうまくコントロールできるように練習をする必要があります。
野球やゴルフのスイングでも同じですよね。ゆっくり時間を掛けた素振りが有効とは思えません。
でも、創作活動において上達しない人は、完成までに必要以上の時間を掛けてしまう「悪癖」があるんです。
これを自信を持って言えるのには理由があります。
偉そうに言っている私自身が、基本的にそういうタイプだからです。
思えば、子供のころからそうでした。
ものづくりをしていると、80%くらいの段階までは、かなり「良い出来」のものが作れて、周囲にも評価されがちなんですが、そこから完成させるのが惜しくなるというか、いつまでも「素晴らしい完成形」を想像していたいというか、要は、典型的な「完成させられない病」だったんです。
私の中で、創作物を完成させられた実感を持ったのは、大学生時代に3年間掛けて作った自主映画「水晶髑髏伝説」が最初でした。
正直、イメージを形にしていくにつれて、
「あれ?こんなもん?」
「この程度の迫力しか出ないのか」
「思ったよりチャチいなあ」
という連続でしたが、それでも完成させた満足感は、それまでに味わったことが無い大きさでした。
その後、2作目、3作目と、実験的に撮影期間を短縮させていき、4作目では正味3日間で撮影完了。
5作目では1日200カット撮影を実現させたりと、「早撮り」ができるように訓練してきました。
その結果、「完成させられない病」は克服できたかに思えたんですが、ちょっと気を抜くとやっぱりダメなんです。
映像製作に時間を掛けた場合のデメリット
2022年現在、集中して編集作業を進めているのが、昭和の名物番組「川口浩探検隊」をモチーフにした短編シリーズの第3弾作品です。
実は、撮影を行なったのは、今から8年以上前です。
なぜ、こんなに時間が掛かっているかと言えば、30分ほどの本編のほぼ全てが合成映像で構成されていて、簡単に言えば、作業が億劫になってしまっていたんです。
撮影から時間が掛かってしまうと、さまざまなデメリットが出てきます。
一番の問題は、完成させるための情熱が弱くなってしまうことで、そのためますます制作作業が遅れていくことになります。
割り切って作業してみた結果
技術進歩の早い現代です。
そもそもカメラやフォーマットが変化しています。
この探検映画は、デジタルビデオテープで撮影する、最後の作品にしようと思っていたので、人物の撮影はほぼ全てテープに記録されています。
その後、合成用のミニチュアセットなどは、SDカードタイプのフルHDカメラで撮影していて、画質がバラバラなんです。
その画質の点でも、正直、高い完成度は期待できません。
そこで、映像の品質的にはそれ程の高望みをせず、とにかく「絵コンテを描いた時点で想定した構図」を再現することを優先して、編集作業を再開しました。
編集に時間が掛かる理由は「凝り過ぎ」です。
そして、悲しいことに、「凝った分だけ映像の出来が良くなる」というわけではないんです。
時間を掛けても(掛けたからこそ?)不自然になってシーンを台無しにしたり、苦肉の策で手抜きして作った映像が、思いのほかリアルで好評だったりするのが常です。
この作品は、登場人物の撮影は終えていて、合成用の映像素材準備を大量に後回しにしていました。
残りの作業をリスト化し、シンプルな映像合成で画面を仕上げていってみることにしました。
以前であれば、数カットしか登場しないミニチュアセットや小道具の製作に数週間も掛けていました。
でも、「満足感は製作時間に全く比例しない」という事実を知った今は、手を抜くところは徹底的に抜く方針で作業を進めています。
2~3秒間しか表示されないミニチュアセットであれば、内容によっては1時間で作って1時間で撮影。1日で1カットから2カット分を合成する、というペースで進めています。
特撮映像を作らない人からすると、「1日で1~2カット分しか出来ないの?」と驚くかもしれませんが、これは、愛好家からすると叱られるくらいの手抜きです。
ただ、これを実践してみて分かった重大な事実があります。
それは、
「これでも結構満足できて楽しい」
ということです。
最悪、気に入らなければ後から映像を差し替えられる、という安心感から、バンバンと映像を合成して編集しているのですが、ラフに作った映像でも、形になるとかなり気が済んでしまうんです。
「少しでもいいものを」と高望みして、何年も作業を先延ばしにしていたことが、なんともバカバカしくなるくらい、十分に満足できています。
実際、観客は製作者本人ほど作品を丁寧に見てはくれませんから、そもそもこだわったかどうかは関係ありません。
大事なことは、早く「人に見せられる完成形」にして、ワイワイと楽しんでみてもらえるような状態にすることなんです。
実は、この探検映画のほかにも、登場人物の撮影が終わっていて、未編集で止まっている作品があります。
2023年は、新旧作品の完成ラッシュが実現するのではないかと期待しています。
参考になれば幸いです。
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