シンプルなのに効果絶大の特撮手法

手軽に様々な特撮手法が試せるデジタル映像

デジタルで映像が扱えなかった時代、つまり高性能のパソコンが安価で普及する前の90年代までは、特撮を含めた「映像」は、アナログで撮影されて編集されていました。

ほんのちょっとした映像加工をしようと思っても、複雑な手順を経なければ不可能で、その出来もけっして満足のいくものにはなりませんでした。

 

映像をデジタルデータとして扱えるようになると、思いつく様々な映像加工が、ほぼその通りの手順で実現できます。

「昔ながらの魅力的な特撮手法」が、そのままの原理で、安価に手早く再現できるのも、デジタル技術の魅力なんです。

 

例えば、「映像合成」は特撮の基本の一つですが、フィルムの時代は、撮影の他に、「現像」という工程を必要としていたため、お金も時間も掛かり、私たちが手を出すにはハードルが高いものでした。

アナログのビデオが一般家庭用に普及した際も、映像合成は出来るようにはなったものの、ごくシンプルな合成をするためにも高価な機材が必要で、しかもその出来栄えは不自然で、せいぜいミュージックビデオの「不思議な映像」くらいにしか使えませんでした。

 

ところがデジタルビデオとパソコンを組み合わせて合成映像を作れるようになると、フィルム合成と同様の合成はもちろん、さらに精度の高い映像が作れるようになったんです。

 

手法は必ずしも新しくはありません。

  • コマ撮り
  • グリーンバック撮影とクロマキー合成
  • 画像の合成

などは、大昔のフィルム映画の頃から使われている、とても魅力的な手法です。

これらの技法を、文字通り「ちょっとやってみる」ということが手軽にできるのが、デジタル映像の時代です。

効果的な「静止画の合成」

私は常々、「グリーンバック撮影」と「クロマキー合成」を多用した作品作りを提唱しています。

でもこれは、あくまでも、ある程度の規模の作品を、規格外の低コストで形にするための工夫です。

 

単に精度の高い特撮映像を楽しむために、最も手軽で、最も効果的なのは「静止画の合成」だと思っています。

 

イメージとしては、1968年の名作「猿の惑星」の衝撃的なラストカット、浜辺に朽ち果てた自由の女神像の映像です。

恐らくあの映像は「マットペインティング」と呼ばれる技法で、簡単に言うと絵画を用意して、海や登場人物が見えるように切り抜いた状態で、二重写しした映像です。

ごくシンプルな手法ですが、あの構図1枚で見せているところにインパクトがあるんです。

 

フィルム時代、アナログビデオ時代は、このシンプルな手法でも、違和感なく自然な映像として見せることは困難でした。

画像の合成の境目が分かってしまったり、周囲の映像と色が微妙に揃っていないことで、不自然になりがちだからです。

 

しかし、デジタルデータとして映像を扱える現在では、かなり精度の高い合成映像が作れます。

簡単に言うと、「合成したいもの」をスマホで写真撮影し、そのデータをフォトショップや他のが画像加工ソフトで丁寧に切り抜いて、背景映像にデジタル合成すればいいだけです。

位置や大きさ、色などは、合成しながら微調整が出来ます。

 

実際のところ、この手法しか使わなかったとしても、作品の印象は全く変わります。

 

近未来のSF作品にしたければ、街の中で撮影した映像に「路上駐車されているエアカー」などをさりげなく合成する、といった細かな工夫を繰り返せば、かなり雰囲気は出ませんか?

 

ポイントは「静止画」ということです。

SF作品というと、安易に「空中を飛ぶエアカー」という映像を出したくなるところですが、合成映像は動きが加わると、難易度が跳ね上がります。

「映像のクオリティ」+「状況」から判断して、観客は「この部分が偽物だ」と見抜きやすくなるからです。

 

しかし、静止画の場合は、どこからが合成なのか、一瞬、判断が出来ないレベルのものが作れます。

映画は一瞬ごとに映像が切り替わっていきますから、観客がウソを見抜く前に、何食わぬ顔で次の場面に進められます。

結果、近未来の印象だけが観客には蓄積していくわけです。

 

近未来SFだけではありません。

例えば「車の上に立って踊る人」というような映像。

 

実際に撮影すると車は壊れます。

 

発想としては、「車の映像」+「グリーンバック撮影した人物映像」を合成する方法もありますが、「人物を合成する」

のではなく、「車を合成する」という発想になれば、グリーンバックなど使わなくても、シンプルな合成映像で表現できます。

 

例えば、人物撮影は空がバックになるようにして、下からあおるように撮ります。

足元から写したければ、段差があるところを利用したり、ビールケースの上に立ったりします。

そうやって撮影した人物の足元に合わせて、車の切り抜き写真を合成すれば、同じ内容の映像が出来ます。

 

映画を作ろうとして、一つ一つの場面を具体的にイメージしていくと、「これは大掛かりになって、とても撮影できないな」という映像が次々と出てくると思います。

それを馬鹿正直に大金を掛けて撮影するのではなく、また逆に諦めてカットするのでもなく、「特撮」を使って、「ほぼ同じ意味合いの映像を作る」という選択肢を持てると、作品全体のコストや外観が全く変わってくると思いませんか?

シンプルな「静止画の合成」だけ活用しても、選択肢はかなり広がります。

参考になれば幸いです。

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