綿密な撮影計画vs臨機応変な即興撮影・理想はバランスよく組み合わせること
計画と自由のバランスをとる
何事もバランスが大事です。
スピード感重視で、計画を立てずに行動すると、うまく行ったときは最大の成果を得られますが、失敗すると成果が無いどころか、大きなマイナスを背負うことになります。
一方で、無駄な失敗をしないための計画も、度が過ぎると、その計画を立てるためのエネルギーの負担の方が大きくなって、行動で得られる成果では割に合わない、という事になりかねません。
私は基本的に、映画作りには綿密な計画が必要だと思っていますが、それは、自分自身が無計画な行動をして、正しい判断をする自信が無いからです。
最低限、映画を作り始めたら、完成させる必要があります。
ドラマや漫画では、主人公たちが自主映画を作り始めて、色々なトラブルにあいながらも最後まで完成させる様子がよく描かれていますが、実際のところ、最後まで完成させたら大したものなんです。
どんな出来にせよ、完成させるのはなかなか難しいのが現実です。
そんな時、命綱になるのが「計画」だと思うんです。
例えば、脚本を書かずに全て即興で撮影を進めて、1本の映画を作り上げることは可能ではあります。
「縛られるものが無くて、自由で楽だ」と思うかもしれません。
しかし、脚本=設計図が無いという事は、その都度、監督が頭の中で場面展開を構成して、どんな素材を用意すべきか判断する事になります。
判断材料は監督個人の頭の中にしか無いので、他の人が手伝えることは極端に少なくなり、負担のほぼ全ては監督一人に集中します。
いろいろな条件が揃っていて、監督にも才能があり、モチベーションを高く維持できれば、素晴らしいワンマン映画が出来る可能性はあります。
即興と計画のバランス
しかし、実際はどうでしょうか?
才能はともかく、このやり方の最大のネックは、「モチベーション維持」かもしれません。
- こう撮りたい
- ああ繋ぎたい
というイメージが次々と湧いて、迷いなく撮れているうちは良さそうですが、少しエネルギーが少なくなってきた時にどうなるでしょう?
次に何を撮ればいいか、だんだんと分からなくなって来そうな気がします。
あらかじめ予定を立てておいて、「計画通り進めればいい」という状態にしていても、1日に撮れる分量は驚くほど少ないのが映画撮影です。
まして「次に何を撮ればいいのか」と試行錯誤することになれば、撮影進行のスピードが半減するのは当然です。
- この映像で繋がるんだろうか?
- そもそも、この展開を編集して見たときに面白いんだろうか?
そんな迷いが出たときも、必要な映像を撮らなければいけません。
しかも即興でです。
少なくとも私は、そうやって撮影したとすると、映像を編集する段階になって、「全然映像が繋がらない」と頭を抱えるのが目に見えています。
「編集に必要な映像は一通り揃っている」という状態に出来る気がしないんです。
一方で、計画を立てている場合はどうか。
最低限、脚本=設計図が出来ていれば、細かな不具合はありつつも、物語を構築して、鑑賞させるだけの体裁には整えることが出来ます。
私の場合は、製作を進めるうちに、「その作品が果たして面白いのかどうか」全然わからなくなってくる時期が必ずあります。
しかし、「少なくとも脚本を書いた時点では、面白味はあると思ったのだから、この通りの形にすれば何とかなるはずだ」という思いで製作を進められます。
(その確信が揺らいでくると、途中頓挫という最悪の事態になります)
繋がりと即興のバランス
撮影に関して言うと、演技や演出以前に、「繋がって見える」という最低条件があります。
いくつもの映像を細切れで撮影して、それを繋ぐことで「一連の出来事であるかのように錯覚させる」のが映画作りの醍醐味です。
演技として繋がっているかどうかとは全く別に、
- 自然に繋がって見える
- 繋がって見えず、細切れ撮影がバレる
という映像の組み合わせがあるんです。
私は、現場判断を楽にするため、あらかじめ「こういう映像を撮っておけば繋がって見えるはず」と検討した上で絵コンテを用意しています。
それでも編集作業に入ると、細かな不具合から「繋がって見えない」ということは日常茶飯事です。
準備をしていてもそうなのですから、即興で上手く行くとは思えません。
繋がって見えるように撮るのは、かなり難易度が高いんです。
もちろん、映像の「繋がり」が全てではありません。
そこを重視しない、という考え方もあるでしょう。
ただ、「繋がって見えない映像」は、見る人にストレスを与えてしまいます。
見る際の苦痛の要素が増えていくんです。
その「見づらさ」「ストレス」以上の魅力やメリットを、即興撮影で出せるのだとしたら、この手法を取り入れればいいのでしょうが、少なくとも私にはそんな天才的センスは無いのでやりません。
ただ、綿密な計画を立てればいいかというと、そうでもないことが経験から分かっています。
私は映画作りを始めた当初、絵コンテの描き方について、アニメーション映画を参考にしていました。
そのため、かなり細部にわたって計画し過ぎてしまって、絵コンテづくりにも時間がかかりましたし、その絵コンテに忠実に撮影しようとするあまり、撮影時のセッティングにも時間がかかりました。
あまりにも自分の描いた絵コンテに縛られ過ぎていたわけです。
現実問題として、撮影現場では、さまざまな理由で絵コンテの状態を再現できないこともあります。
また、再現は出来るけれども、いろいろな意味でコストが増える状況になることがあります。
その時は、臨機応変に即興で計画をし直して撮影を続ける必要が出てきます。
つまり、最善の策として、
- 最低限の計画は立てる(ラフな絵コンテまで)
- 問題が無ければ計画通りに撮影を進める
- 問題が生じたらその部分だけ、臨機応変に即興で対応する
とするのが現実的ということです。
効果的な即興と特撮技術の融合
これは、「どうせ計画通りにはいかないのだから、全て即興にする」というのとは全然違います。
準備や判断の負担を最小限にしつつ、撮影の成功率を上げるバランスの取り方です。
それでも、編集時に細かい不具合が原因で、映像が繋がらない事が起きます。
問題がひどい場合は、撮り直す必要がありますが、そのコストは大きすぎます。
私は、次善策として、特撮技術を使って「ごまかし」ではありますが、少しでも不自然さを軽減する選択をしています。
特撮は、画面修理の道具としても使えるからです。
参考になれば幸いです。
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Detailed Shooting Plans vs. Improvised Filmmaking: Striking the Perfect Balance
Balancing Plans and Flexibility
Balance is key in everything. Acting without any planning can yield extraordinary results when things go well, but failures can lead to not only no gains but also significant setbacks.
Conversely, overly detailed planning to avoid unnecessary mistakes can become so burdensome that the energy spent on planning outweighs the potential outcomes.
I generally believe that detailed planning is essential for filmmaking—mainly because I lack the confidence to act decisively without it.
Once you start making a film, it’s crucial to finish it. While dramas and manga often depict protagonists completing their independent films despite hurdles, in reality, completing any film, regardless of its quality, is a significant achievement.
Bringing a film to completion is harder than it seems, and that’s where a good “plan” becomes your lifeline.
Can You Shoot a Film Entirely Improvised?
It’s possible to make a film entirely through improvisation, without writing a script. Some might think, “This gives us the freedom to create without constraints!”
However, no script means the director constantly has to envision scene transitions and decide what materials are needed—all within their own head.
This isolates the creative process, placing the entire burden on the director. While exceptional talent and motivation might lead to a remarkable solo project, maintaining energy and direction is the real challenge.
Maintaining Motivation in Improvisation
What happens when your energy starts to wane?
For instance, when you no longer instinctively know:
- “What should I shoot next?”
- “How should these scenes connect?”
Even with a script, the amount you can shoot in a single day is surprisingly small. Without one, progress slows further as you try to figure things out mid-production.
What about editing? Without a structured plan, it’s easy to realize later:
- “None of these clips connect!”
This is precisely the scenario I’d find myself in. Improvised shooting often leads to an incomplete collection of necessary footage.
The Advantage of Plans
On the other hand, having a script—a blueprint—ensures your story can at least take a coherent shape.
In my experience, there’s always a stage during production when I lose confidence in my work’s potential. However, I can push forward by reminding myself, “The script seemed interesting at the time. If I follow it, I’ll at least produce something watchable.”
This level of planning serves as a safety net—albeit not a perfect one.
Connecting Scenes and the Role of Improvisation
Filmmaking’s magic lies in creating the illusion that disconnected clips belong to the same continuous event. This requires “connections” in the footage itself:
- “Does it feel seamless?”
- “Or does the fragmented nature of the shoot become obvious?”
To ensure connections work, I create storyboards in advance based on “what should link together.” Even with preparation, issues often arise during editing.
Without any plan, maintaining seamless connections becomes extraordinarily difficult.
While some argue that “connections” aren’t everything, disjointed scenes can frustrate viewers and increase the “stress of watching.”
Thus, improvisation must justify itself with benefits that outweigh such drawbacks—a bar I personally don’t think I can clear.
Balancing Plans with Flexibility
During my early filmmaking days, I drew detailed storyboards inspired by animation processes. But adhering too closely to these storyboards created inefficiencies:
- Drawing them was time-consuming.
- Filming setups took longer due to rigid expectations.
In reality, shooting conditions rarely allow perfect replication of storyboards. When deviations occur, adapting through improvisation becomes essential.
Thus, I’ve adopted a hybrid approach:
- Create basic plans, like rough storyboards.
- Follow the plan when conditions allow.
- Adjust improvisationally when issues arise.
Using Special Effects as Backup
Even with balanced planning, editing sometimes reveals footage that doesn’t connect seamlessly. Reshoots can be expensive, so I often turn to special effects as a “band-aid” to reduce awkwardness. Special effects can act as tools for “fixing” visuals during post-production.