動画メディアの圧倒的な底力・タイムカプセルとしての自主映画の魅力
川口浩探検隊という幼少期の刷り込み
子供のころに受けた影響というのは絶大で、恐らく、何らかの形で一生付いて回るものなのだと思います。
私が小学生、中学生の頃に大好きだったのが、テレビの「水曜スペシャル・川口浩探検隊」で、「その真似をしたい」ということから映画作りの真似事を始めました。
映像製作の趣味はその後、サラリーマン時代の副業を経て、映像製作のフリーランスになった今に至るわけです。
2022年の暮れ、「ヤラセと情熱―川口浩探検隊の「真実」―」(著・プチ鹿島)という書籍が出版され、改めて川口浩探検隊の魅力を再確認したのですが、時々紹介するように、私は1980年代の終わりごろ、自分なりに再設定した「川口浩探検隊」を映画にしています。
「水曜スペシャル THE MOVIE 水晶髑髏伝説」という、仰々しいタイトルのこの作品は、私が初めて完成させた作品であり、最も細部までこだわって作った長編です。
製作に大学生活のうち丸3年間を費やした経験で、映像づくりの魅力にはまった私ですが、この作品について残念なのは、「公開が出来ない」ということです。
理由は、全編に流れているBGMが映画のサントラのLPを音源としていて、著作権に完全に違反しているからです。
製作当時は、今のように不特定多数に公開する発想もなく、ただ、「出来るだけ本物の川口浩探検隊と同じBGMを使いたい」ということで、曲を調べ、中古レコード店を回ってひたすら集めたLPの音源を使っていたんです。
曲を調べるといっても今のようにインターネットはありませんから、テレビの洋画劇場を見ているときに偶然「この部分のBGMだ!」と発見したものをリスト化しておくわけです。
作品が長いので、内輪の上映会などでも披露する機会はなかったものの、同好者に個人的に渡したVHSテープのコピーが他の人の目にも触れたりして、映像仲間を作るきっかけにもなった作品です。
デジタルメディアより頑丈なアナログメディア
常々、「BGMを差し替えたバージョンを作って公開したいなあ」と思っていたのですが、先日、片付けをしているときに撮影した8mmテープが出てきたので、思い切って、撮影素材をPCに取り込んでみました。
古いものは35年前のテープですから、テープの劣化も覚悟していたんですが、驚くべきことに、当時の8mmテープはほとんど映像の劣化が無かったんです。
もちろん、現在見慣れている映像とは、比べられないほどの解像度の低さですから、全体的に画質が甘いんですが、それにしてもアナログテープの頑丈さに驚きました。
恐らく、DVDやブルーレイだと、この半分の期間でデータが劣化して、内容の確認も全く出来なかったはずです。
実は「耐久性」という観点からは、デジタルメディアはアナログメディアより、圧倒的に弱いんです。
世の中がデジタル化されて、新しいビデオ機器に一斉に買い替えさせようという時に、メーカーからもそういうネガティブな情報は出しませんから、一般にはあまり知られていません。
ですから、「古いビデオテープをDVDにコピーしたからテープは処分する」というのは、実はかなり危険な事なんです。
それはともかく、今回改めて感じるのは、映像のタイムカプセル装置としての効果です。
撮影から30年以上経っていますから、音信不通になっている人や既に亡くなっている人もいます。
彼らと自分が、何とも楽し気に撮影している風景を見ると、「映画の出来がどう」とかいう以前に、「映像の記録として残している時点で大正解」と思えてくるんです。
時間経過による判断の変化を楽しむ
新しい発見もありました。
当時の私は「多くの自主映画が安っぽく見えるのは、映像がブレすぎているからだ」と考えて、とにかく「画面を安定させる」ということを優先していました。
そのため、「演技の内容は良くてもカメラがちょっと揺れたからNG」ということで、1カットのために、多いときは20回以上も撮り直しをしていたんです。
しかし、当然ですが、そんなに撮り直しをすれば、演技はどんどん不自然になったり、テンションが落ちてきたりします。
客観的に見ると、1回目か2回目の映像の方が、よほど自然で生き生きしている箇所が多数ありました。
特に、ブルース・リーを意識して凝って撮影したアクション場面などは、撮り直しを繰り返すたびにキックの速度が遅くなったり、段取りが滑らかになり過ぎて嘘っぽくなったりしています。
当時の判断ではNGとした映像の方が良いショットが多数あるようなんです。
当時と違って、現在のパソコンを使ったノンリニア編集は非常に楽です。
当初は単に「多少良い画質で同じ状態に編集し直して、BGMを差し替えよう」と思ったのですが、改めて再編集することで、「本来出せたはずの魅力を初めて出せるかもしれない」と感じています。
今回の作品は、撮影した映像素材が30数時間分。完成すると2時間ほどの長編です。
完成後はスキマ時間に鑑賞しやすいような、10分くらいずつ分割したバージョンもスマホで見るための「マイクロ映画」として公開してみたいと思います。
参考になれば幸いです。
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