DIY特撮が苦手とする映像は?・リアルな合成映像を作るために避けるべきこと
思いつく映像は何でも実現させられる
常々ご提案しているように、「特撮」の最大のメリットは、場面作りの可能性が広がるということです。
マンガや小説による創作と違って、映像作品は再現の自由度が限られます。
「実際は撮影できないな」という場面がたびたび出てきます。
例えば
- 大群衆シーン
- スペクタクルシーン
などが分かりやすいと思いますが、文章による描写や絵による描写は、紙とペンがあれば出来るのに対し、映像による描写は「具体的にどうすればいいんだ?」という壁があります。
もっとこじんまりとした
- 通勤電車内
- 職場の風景
といった、テレビドラマで見ると何の変哲もないシーンも、私たちのDIY映画では実現が困難です。
通勤電車の中で勝手に撮影を始めれば即、通報されるでしょうし、職場での撮影は情報漏洩等、とてもじゃありませんが賠償できないようなトラブルの危険がありますから、物理的には可能だとしても、ゲリラ撮影はおススメしません。
そこで活躍するのが「特撮」という訳です。
通勤電車のシーンを合法的に撮影しようとすれば、鉄道会社に協力してもらって大金を掛けて撮影したり、電車内の撮影専門のスタジオで撮影する必要があります。
エキストラも集めるとすれば、たった1カットのために、数十万円から数百万円の費用が掛かります。
私の経済感覚では、それははなから選択肢に入りません。
ではどうするか。私ならこうします。
- :鉄道博物館などで、車内の写真を撮ってくる(もしくは模型を作る)
- :画面に映る人物を一人一人、グリーンバック撮影する(一人で何役も演じる)
- :背景と人物をクロマキー合成する
特撮に馴染みのない人からすると「かえって大変なんじゃないの?」と勘違いされがちですが、実際に人を集めて時間に追われながら撮影するのに比べれば、圧倒的に楽です。
全体コストは数百分の1に抑えられます。
私にはこの選択肢があるので、シナリオ執筆時に「撮影による制約」をほとんど考える必要がありませんし、品質はともかく、「イメージに近い画面」を再現させられます。
ですから、基本的に「イメージさえ出来ているのであれば、大抵の映像は特撮で作れる」わけですが、中には「特撮が苦手とする映像」もあります。
難易度が高い特撮
特撮が苦手とする、というのは「どうしても不自然になりがちな映像」ということです。
正直なところ、DIY特撮の作品で特撮、特に映像合成を使ったカットを、合成だと気付かせないことは至難の業です。
視力が0.4以上あれば、ほとんどの合成場面は「ああ、これは合成だな」と見抜かれてしまいます。
私はそれが致命的とは思っていません。
反感を承知で言えば、映画は所詮、「ごっこ遊び」の一種です。
名俳優が刑事を演じていても、観客はその俳優が本物の刑事ではない事を知った上で楽しみますよね?
その人食い鮫が作り物であることを知っていて怖がりますよね?
物語の中で一瞬でも発生する「錯覚」を味わって、楽しんでいるわけです。
ですから、例えば背景と人物の合成が自然に見えるように全力は尽くすものの、バレたからと言って作品が台無しになるとは思っていないんです。
その上で、特撮映像、特に私たちが実現させるような低予算の「DIY特撮」が苦手とする特撮合成のパターンがいくつかあります。
これを避けることは、より自然な合成映像を作る近道ですから、情報を共有したいと思います。
苦手な合成1:カメラを動かしながらの合成
パソコンソフトの発達によって、手持ちカメラで撮影した「動いている背景映像」に別の映像を同期させて合成することも出来るようにはなりました。
具体的に言うと、建物を撮影した映像が不規則に揺れていても、その揺れを計算した上で、「建物に看板が付いている」ように合成できるという具合です。
ただ、基本は、合成する映像を撮影するカメラは動かないように固定します。
それによって「不自然な合成」になる度合いが大分減ります。
苦手な合成2:接地面
具体的には、足元です。要は、靴が地面や床から浮いているように見えがちになるということです。
解決策として、足元に影を更に合成したりしますが、もっとも効果的なのは足の先が映らない構図で映像を設計しておくことです。接地面が見えないのであれば、不自然になりようがありません。
今回は2つだけ、「避けるべき合成」の例を紹介しました。
参考になれば幸いです。
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