実は可能性がいっぱの「マイクロ映画」・スマホの小さな画面でも面白さを味わう
限界まで行きついてしまった高画質信仰
先にお伝えしておくと、「マイクロ映画」という言葉は私の造語なので、ネットで検索しても出てこないと思います。これは、最近思いついた概念で、「もしかしたら良い目の付け所なんじゃないか?」と自画自賛しているので、ことあるごとに紹介しています。
映像の魅力が高画質によっても、もたらされることは言うまでもありません。
細部が不鮮明な映像を見慣れているときに、高精細な映像を見ると、それだけで衝撃的な印象を受けます。
家庭用のテレビを考えてみてください。
ブラウン管の時代から、画面はどんどん大きくなっていって、場所を取らない薄型のテレビの登場によってさらに画面は大きくなり、それに応じて画質も上がっていきました。
ハイビジョンが登場し、デジタル映像が主流になり、「高画質」を売りにした商品が当たり前になったんです。
でも、ちょっと待ってください。
私はハイビジョンが登場した頃から、かなり疑問を感じていました。
それはハイビジョンを売りにした日本初の映画「ハイビジョンSFX 西遊記」の紹介写真やCMを見たときに、「この人形劇をハイビジョンで撮影して何の意味があるの?」と思ったことがきっかけだったかもしれませんが、かなり早い時点で「画質が良くなっても面白さには全くプラスにはならない」と気付きました。
テレビもハイビジョンの製品が出回って、それに対応した番組がどんどん増えましたが、「このバラエティーをハイビジョンで見てどうする?」という感想しか持てませんでした。
もちろん、技術の進歩は素晴らしいですし、その開発秘話などは大好きです。
でも「画質向上」による「満足度向上」にはすぐに限界が訪れるんです。
そもそも日本人は世界で一番くらいに視力が悪いそうですから、もはや画質の違いは数値で示さないと認識できない段階に来ています。
「画質」で測るのではなく「楽しさ」で測る
当たり前のことですが、映画のような創作物の楽しみ方は人それぞれです。
でも、鑑賞する時間を費やして満足感を得ようとするなら、優劣は大雑把に言って「楽しいかどうか」ではないでしょうか?
そしてハタと気付くことは、大画面・高画質で映画を見ても、スマホのような小さな画面で見ても、面白いものは面白く、つまらないものはつまらない、という事です。
乱暴な言い方をすると、大画面が勝っているのは「迫力を出すこと」だけなんです。
逆に言うと、小さな画面のマイナス点は「迫力が出ないこと」だけです。
私は随分以前、ipodにテレビで録画した映画を入れて、毎日の通勤電車で見たりしていましたが、滑稽なほど小さな画面であるにも関わらず、相当に楽しい時間を過ごしていました。
ですから、「小さな画面でも楽しさは与えられる」ということを実感として知っているんです。
マイクロ映画が持つ多くのメリット
私は学生のころから自主映画を作っていて、かれこれ30数年も経ちます。
自分で作った作品を、上映会などで大きなスクリーンに映して観客に見てもらう嬉しさも、もちろん知っています。
それでも最近、スマホで鑑賞するような「マイクロ映画」の方が、はるかに多くのメリットがある気がしているんです。
一つは、「特撮の品質が良く見える」というものです。
これは、言ってしまえば錯覚です。
単に細部が分かりにくいので、アラが目立たないということです。
バカバカしいと思うかもしれませんが、作品をトータルで見たときに、特撮のアラが目立つかどうかは大きな問題なんです。
例えば、「リアプロジェクション」という古典的な特撮の手法があります。
仕組みを分かりやすく説明してみます。
- 映画のスクリーンのような大きさの半透明のスクリーンを用意して、裏側から映像を映写する
- スクリーンの前で役者が演技をする
- カメラは役者とスクリーンを一緒に撮影する
こういう、合成映像の撮影法です。
この手法をふんだんに使ったのが「キング・コング(1933)」ですが、ジャングルの中で恐竜が探検隊を襲ってくるシーンなど、惚れ惚れするほどよく出来ています。
ミニチュアの恐竜を使った映像をスクリーンに大写しにして、それを見ながら役者が芝居をしているという単純な仕掛けなんですが、とても効果的です。
後によく使われる「クロマキー合成」と違って、合成の境目が存在しないので、映像として自然なんです。
ところが、この手法がカラー映画になると、あまりうまくいきません。
角川映画の「里見八犬伝」「戦国自衛隊」などでも多用されていると思いますが、どうしてもスクリーンに映している映像の画質と、手前の俳優の画質の差が目立ってしまうんです。モノクロ映画のキング・コングには感じにくい違和感が発生しています。
しかし、これらの作品をスマホで見ると、不思議なことが起きます。
細かなアラが目立たなくなって、より場面が「リアル」に見えるんです。
作り手が見せたかった状況は大スクリーンではなく、小さな画面の中での方が忠実に再現されるという現象が起きます。
これがマイクロ映画の隠れた利点です。
それと、もっと大きな利点は「見てもらう機会が圧倒的に増える」ということです。
作品は鑑賞されなければ、ほぼ存在しないも同然です。
エネルギーを注いで作品を完成させて、劇場を借り切って上映するのも良いでしょう。素晴らしいと思います。
でも、その日その場所に見に来てくれる人数は限られます。
DVDにするのもかつては主流でした。
でも今は、DVDを再生すること自体、億劫な人が増えています。
私も、DVDを見ようと持ったら、DVDドライブが付いている古いパソコンを立ち上げなければいけません。
一番見やすいのは、インターネット上に動画がある状況です。
私たちが作るような映画も、YouTubeやVimeo、アマゾンビデオなどにアップロードすれば、見る気さえあれば誰でも鑑賞出来ます。
もちろん、これには賛否両論あるでしょう。
「映画は映画館で観なければ意味がない」という映画原理主義者の人たちからは毛嫌いされる考えだと思います。
でも、私は作り手として、
- 自分の意図した映像がより手軽に作れる
- 作品を見てもらえる機会が増える
というだけでも、マイクロ映画の可能性に賭ける価値があると思っているのです。
参考になれば幸いです。
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