「映像研には手を出すな」に学ぶ低予算映画のプロデュース視点とコンテンツ活用戦略

映画づくりは完成までが前半戦

「創作の魅力」と言うと、もちろん一番大きいのは「作っている最中の楽しさ」です。

曲がりなりにも、ものを生み出す作業なので、見方によっては苦しい面もありますが、それを乗り越える満足感を味わうと、もう病みつきになります。

 

ただ、色々な創作がある中でも、映画製作はやや特殊な部類に入るかもしれません。

それは、完成させて終わりにはならない、終わりにしてはいけないということです。

 

例えば、小説や絵画、手芸などの創作は、完全に自己完結出来ます。

完成品が誰の目に触れなくてもOKで、もし誰かが見て楽しんでくれたらそれはプラスアルファの要素なんです。

 

ところが、ほとんどの映画は多かれ少なかれ、共同作業です。

私のようにかなりの作業を一人で進めて、文字通りワンマン製作が出来る手法をとっていても、少なくとも出演者として他の人にも参加してもらう必要があります。

その恩返しの意味も含めて、完成作品はちゃんと公開することが大事なんです。

「映画は完成させて終わりではない」ということです。

 

そう考えると、「映画製作」は

  • コンテンツとしての完成
  • そのコンテンツの活用

という2つの要素を考えなければいけないんですが、多くの創作者はコンテンツとして完成させると作業をやめてしまいます。

その結果、せっかく作ったコンテンツが死蔵されることになるんです。

どうしてコンテンツを死蔵してしまうのか

偉そうに書いている私自身、映画を製作して上映会や販売などで十分に活用しているとは言い難い状況です。

当事者ですから、その理由はいくつも思い当たります。

 

例えば、

  • 作品が完成しなかった
  • 出演してくれたフリーの役者さんが完成時には事務所所属となって作品の扱いが微妙になった
  • 完成度に満足出来ずに次回作に興味が移ってしまった

というようなものです。

 

「こういう映画を作りたい」という熱意に賛同して協力してくれた人たちは、それなりに完成と公開を楽しみにしています。

でも、大抵の場合

  • 撮影を手伝ったけど完成したのかどうかも分からない
  • 忘れたころに完成の連絡が来たが既に興味は失っている

という状況になりがちです。

 

私はこれらの元凶の一つが「通常の映画は撮影期間が長すぎることにある」と考え、まず第一に「撮影期間短縮」を優先するスタイルにしましたが、その手法を確立したのが比較的最近のため、それまでの通常の手法で撮影していたころは、作品死蔵のオンパレードだったわけです。

必要なのはプロデュース視点

問題なのは、多くの場合、映画作りを「監督視点」で考えてしまう事です。

商業映画の世界では、作品が完成した後は更に予算を使って宣伝活動をする部隊が作業を引き継ぎますから、監督は作品を完成させることをゴールと考えていても成り立ちます。

 

しかし、私たちが自分で作る低予算映画には、宣伝部隊はいません。

自分たちで完成したコンテンツを公開したり販売したりしなければ、誰の目にも触れず、世の中的には存在していない事になってしまいます。

 

そこで必要なのは、作品の企画から最終的なコンテンツの活用まで戦略的に考える「プロデュース視点」です。

 

私たち創作者は、そもそも作品を作りたいので、放っておいても、どうせ作るんです。

だから、意識すべきは

  • 完成後のコンテンツ活用
  • 作品を死蔵させない事

と思ってください。

 

マンガで「映像研には手を出すな」という作品があります。主人公・浅草氏は典型的な創作者。完成品の内容しか頭に無くて、コスト管理・スケジュール管理がまるで出来ません。

ただ、仲間の一人・金森氏は創作の才能はないものの、優れたプロデュース視点を持っているため、創作物を死蔵させることなく創作者を活躍させられるという設定の物語です。

あなたの中に、金森氏のキャラクターを育てる必要があるんです。

私の失敗例から考える解決のアイデア

前述したように、私も多くの自主映画創作者と同様かそれ以上に、作品を死蔵させがちな活動の仕方をしてきました。

 

反省を踏まえて作品を見返すと、いくつか傾向があることが分かります。

それは例えば、長編大作にしようとしがちだったり、「つかみ」を意識して序盤の場面に凝り過ぎたり、というものです。

 

これらの傾向は、製作期間を長期化させ、発表時期が遅くなる原因です。

でも、だからと言って、簡単な短編ばかり作りたいわけではないので、それがジレンマでした。

 

現状、私が考えている解決策は

  • 作品を短く分割して順次公開する
  • 特に序盤は製作に時間を掛けない

というものです。

 

作家は未完成のものを人に見せたくありません。これは理解できます。

でも、素人映像作家が時間を掛けて大作を作って「お待たせしました!さあご覧ください!と言っても、誰も待ってはいないんです。

作品が長ければ、「見ようかな」と腰を上げるのにも躊躇します。

 

作品を死蔵しない、見てもらうという事を考えるなら、出来るだけ早く、短いものを提示する必要があります。

とは言っても短編作品の創作で諦める必要なありません。

構想自体は長編大作でも、それを10分程度に分割して公開することを考えて制作工程を設計し、出来たところから公開していけばいいんです。

 

ちょうど、新聞の連載小説のような感じです。

連載小説を単行本化するときに、全体を調整して加筆修正するのと同じように、全体の映像が出来上がったら「長編版」として改めて体裁を整えることは出来ます。

凝りたかった場面は追加撮影しても良いでしょう。

 

分割して公開するメリットは思いのほか多くありそうです。例えば、

  • 協力してくれた人に早々に見せられるので喜ばれる
  • 見た人に興味を持たれれば、協力者になってもらえる
  • 短いので気楽に見られる
  • 製作者自身、頻繁に達成感を味わえて意欲が湧く

というものです。

 

物語を分割するのも、本来、技術を要するものかもしれません。

ただ、これだけ動画コンテンツが飽和状態の現代、昔ながらのフォーマットにこだわる意味も薄れていると感じます。

「各エピソードの終わりは、次が見たくなるような場面にするのが鉄則」というような、かつてのシドニー・シェルダン式の形にせず、普通のシーン終わりに「つづく」と表示してエンディングを繋げてしまえば、尻切れトンボ感があっても、かえって「ツイン・ピークス」のような味わいになって良いかもしれないんです。

 

実験を兼ねて、私は今後スタートする新作については、分割して順次公開する方式をとっていこうと思います。

 

参考になれば幸いです。

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