技術映画の魅力:映像見本市としての特撮の進化と多様性による楽しさ

「映画」が総合芸術と言われる理由

総合芸術などと言うと、インテリぶった意識(だけ)高い系の人の言い方のようで抵抗があるんですが、「映画」というメディアが実に様々な要素を持っているのは確かです。

パッと思いつくだけでも

  • 物語
  • 演技
  • 映像
  • 音楽
  • 美術

などを挙げられます。

 

そして、嗜好や立場によって、これらの中の要素に注目するわけで、その人にとっては、その要素こそが「映画の本質」と熱く語るわけです。

 

例えば、ストーリーを作る人からすると、ストーリーこそが本質で、役者が演技で作品の中に爪痕を残そうと頑張ると邪魔に思えたりします。

 

演技こそが映画の本質と思っている人にとっては、映像的な演出でカット割りしたりするのは邪魔で、「芝居のやり取りは舞台劇みたいに長回しで一続きに撮影すればいいじゃないか」となります。

 

映像の専門家であれば、極端に言えば、ストーリーが甘くても、演技がひどくても、映像構成さえ理想的ならそれで良いと思えるかもしれません。

 

この多様性こそが「映画の魅力」であると同時に、「映画」というくくりの厄介さです。

嗜好が極端に違う人は、それぞれ映画好きだったとしても、全く話が合わない可能性が高いんです。

映画における「技術」

さまざまな要素が含まれる映画ですが、「映画ならではの要素」を考えると、やはり「映像技術」だと思います。

 

その情景をどのように切り取って組み合わせるか、というカット割りが基本にして最大の映画的効果を生み出すと思いますが、私はもう一歩、邪道側にはみ出た「特撮」のような技術も大好きです。

 

そもそも私が「作る対象物」として映画を意識し始めたのは、ストップモーションというトリック撮影で生み出されたミニチュアの怪物たちが活躍する、いわゆる「特撮映画」でしたから、クリエイターがイメージした映像を再現するための技術的工夫の歴史などにも、非常に興味を引かれるわけです。

そして、自分でも映画作りの真似事をしていて分かることもあります。

 

例えば、イメージを再現するために活用した技術を体験すると、その後では逆に、その技術を活かすためのシーンを作りたくなる、ということがあります。

これは客観的に見れば本末転倒かもしれませんが、「映画技術好き」からすると、興味ぶかい技術をふんだんに盛り込んだ作品というのにも大いに魅力を感じます。

 

現代では映像編集はデジタル環境下で行うので、映像の加工が自由自在と言っても過言ではありません。

特に、映像合成技術は昔とは比較にならないくらい簡単になりました。

私などは、映像合成技術を活用することで、従来より大幅に製作期間を短縮させたり、小道具・大道具の製作コストを小さく出来たりする点に注目して、「映像合成ありき」の作品ばかり企画しています。

 

これは、コスト削減になるから合成技術を使うのは事実ですが、じゃあ、無尽蔵に資金があったら合成技術に頼らない、王道の映画が作りたいかと言われたら、私の場合は「NO」です。

技術的な工夫としての特撮活用が楽しいからです。

技術から生まれたシーンの見本市としての映画の楽しさ

ハリウッドの大御所に、ジョージ・ルーカスという人がいます。

自身でも数本の作品を監督していますが、基本的には、技術活用に秀でたプロデューサーと言えるでしょう。

「王道映画こそが映画のあるべき形だ」と思っている人たちからは、昔からちょっとイロモノ扱いというか、技術小僧呼ばわりされていたようですが、少なくとも技術的な貢献は大きいと言えます。

 

特撮部門を集めたILMという工房では、これまでさまざまな革新的映像を生み出してきました。

 

「スターウォーズ」では合成技術でギネスブックに載ったり、リアルなロボットと独自のCGを組み合わせて恐竜を蘇らせた「ジュラシックパーク」などは、各時代のエポックと言えるはずです。

 

そして、技術的なバリエーションの豊かさが魅力のシリーズが、ご存じ「インディ・ジョーンズ」です。

2023年、ようやくシリーズの最終話が公開されました。

私はこのシリーズの最初の作品「レイダース 失われたアーク」の大ファンですから、その後の作品も楽しんで見ています。

このシリーズの見どころの一つは、映像の最新技術をとても有効に活用しているところだと思います。

 

そして今回の作品の中で特筆すべき技術は、やはり冒頭の「若いインディ」を蘇らせたシーンだと思います。

 

これまでも、特殊メイクの技術で、役者を何十歳も老化させることは可能でした。

でも、何十歳も若返らせて、成功しているのは初めての事例だと思います。

 

私も、事前情報として映像上で若返らせていることは知っていましたが、まさかあんなに長いシーンで若いインディの活躍が見られるとは思っていなかったので、劇場で唖然としました。

正直、そのシーンの成功を見ただけでも、私は大満足です。

「これぞ技術映画の醍醐味!」とさえ思ってしまいました。

 

初めの繰り返しになりますが、映画にはいろいろな「要素」があります。

もし、あなたが作り手側にいるとしたら、自分にとってこだわりの強い要素にエネルギーを注いでメリハリを付けた方が、作品に魅力が増すかもしれません。

 

参考になれば幸いです。

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