映画作りの魅力と落とし穴・頓挫しないために気をつけるべき準備不足と高望み
自分で原案を考え、脚本化したストーリーを元に一つ一つのシーンを撮影して形にしていく「自主映画制作」という趣味では、とても大きな満足感を味わえます。
仮に誰にも完成品を見せずに一人で鑑賞するとしても、えも言われぬ達成感、大げさに言えば作品の中とはいえ「世界を創造した万能感」に浸れるのが映画作りです。
さらに、他の人に作品を見せて高評価を得られたりすると、とても嬉しい気持ちになります。
特に現代は自分から情報を発信する手段がたくさんあります。
一般の人が自分で撮った写真や文章を大量に公開する時代です。
公開して得たい「承認欲求」は思いのほか強く、自分で作った映画はその最大級の満足を生み出す可能性があります。
ただ、難点を挙げるとすれば、「写真を1枚撮って画像加工アプリで仕上げれば完了」というような手軽さが「映画作り」には無いことです。
実際にはとても大きな満足感と引き換えに、そこそこめんどくさい作業を伴うのが映画作りです。
(そこがまた、面白いところでもあるんですが)
映画作りにまつわる2つの「勘違い」
私が長年、趣味の映画作りをしてきて感じるのは、この「映画作り」の趣味を持たない人の「勘違い」が両極端だということです。
まず、映画作りを過度に「大変」だと勘違いしている人が多くいます。
この人たちは、映画作りは
- 大金が掛かって
- 特殊な技術に長けている必要があって
- 大掛かりな装置が不可欠
という認識のようです。
確かに、プロの作る商業映画ではそうなんです。間違いではありません。
でも、特に私は、プロのやり方とその効果を勉強しつつも、趣味レベルでの制約に合わせたやり方で映画を作るべきだと考えています。
表現したいストーリーを映像に置き換えて観客に伝えるのが映画だとすれば、その手法にはピンからキリまで相当の幅があるからです。
制約に合わせて工夫すれば
- 大金を掛けなくても
- 特殊技術がなくても
- 大掛かりな装置がなくても
それなりに面白い「映画」は作れるはずです。
一方で、映画作りを過度に「手軽にできる」と勘違いしている人もいます。
- 今はカメラの性能が良いから、シナリオは作らなくても即興で撮ればそれなりのものになるだろう
- みんなと相談しながら楽しく撮影を進めれば、1日で30分の短編作品くらいは撮れるだろう
- スマホにアプリがあるから簡単に見映えのする映像に編集できるだろう
という具合です。
残念ながら、これはまさに勘違いです。
- スマホをカメラとして使える
- スマホで編集できる
のは確かで、是非活用して欲しいのですが、それは従来あった「機材を揃えるのが大変」という問題が解決しているのに過ぎません。
よほどの天才でない限り、シナリオ無しに即興で撮影は進められません。
これは将棋の棋士が盤を使わずに頭の中に思い描いた将棋盤を使って対戦する、脳内将棋に近い離れ業だと個人的には思います。
1日で撮影できる時間も、多くても10分間程度ではないでしょうか。
1時間に6カットペースで撮影できるのは、かなりのベテランですが、1カットはせいぜい数秒~十数秒。
1時間で1分くらいしか使える映像は手に入らないのが映画撮影なんです。
そこで、少しでも効率よく、たくさん撮影するために、事前に計画を立てて、監督が中心になって現場を仕切っています。
「みんなと相談しながら楽しく」撮影するということは、ある意味では効率を大幅に犠牲にすることになります。
とても10分に1カットのペースで撮影というわけには行きませんよね?
民主的な相談が現場で有効でない理由は、視点の高さが各人で違うことです。
大抵の場合、作品の全体像をイメージ出来ているのは監督だけであって、スタッフや出演者はその場面ごとしか見えていません。
いろいろと現場でアイデアを出してもらっても、他の場面との整合性などを考えると、監督の立場としてはその多くを却下せざるを得ないんです。
スタッフや出演者より高い視点から作品を把握している監督が、現場である程度、独善的になってしまうのは仕方ないと言えます。別に威張りたくて仕切っているわけではないんです。
具体的に言うと、「このセリフはこういう感じで言った方が面白いんじゃない?」という意見はいくらでも出せますが、それによって、整合性や物語のトーンが崩れる危険まで認識しながら提案できる人はなかなかいないということです。
スマホのアプリで動画は編集できます。
映画の編集というのは概ねシンプルな繋ぎ編集で充分なので、スマホのアプリや安価な編集ソフトの機能で充分なんです。
ただ、そもそも必要な映像が揃っていなければ、いくらアプリの面白い特殊効果を使っても、けっして見栄えのする編集が出来るわけではありません。
完成させるためのコツ
それでも総合的に映画創作は楽しいものです。
映画製作は
- 前準備
- 撮影
- 編集
の3段階に分けられますが、全ての段階で種類の違う楽しさ、満足感を味わえます。
ただし、知っておかなければいけない落とし穴があります。
それは、映画製作は、恐らくあなたが思っているよりもずっと「頓挫しやすい」ということです。
- 前準備
- 撮影
- 編集
全ての工程で頓挫の危険をはらんでいます。
ただ、前準備での頓挫は企画倒れなので傷が浅いんです。
まだ、関わる人数も、注いでいるエネルギー量も少ないからです。
大問題なのは、撮影の段階に入ってからの頓挫。
撮影には自分以外の人も時間を提供してくれています。
撮影してからの頓挫は、それまでの労力が全て無駄になるので目も当てられません。
多くの自主映画創作者はこれを経験しているのではないでしょうか?
何を隠そう、私も何度もやらかしています。
その原因は大きく2つあります。
- 準備不足
- 高望み
です。
「準備不足」は主に、撮影前の「シナリオ作成」の不備に原因があります。
とにかく楽しい工程である「撮影」に早く入りたくて、あるいは撮影可能な時期が限られていることが理由で、完成度が低いシナリオを元に撮影に入ってしまう場合、撮影が頓挫しがちになります。
「完成度が低い」という部分はもう少し説明した方が良いかもしれません。
細かな描写が甘いとか独創性が少ない、ということは大した問題ではありません。
それこそ撮影現場のアイデアでカバー出来たり、役者の魅力でカバーできたりするので、それによって製作全体が頓挫することはまずないでしょう。
そうではなくて、設定や行動の整合性が取れていないなど、「根本的な辻褄が合っていない」というレベルで、完成度が低い場合に問題になります。
信じられないかもしれませんが、ストーリーをいろいろと練って変更を繰り返しているうちに、構成のおかしさや辻褄が合わない問題を客観的に判断出来なくなりがちなんです。
そして、撮っている最中に「あれ?この話おかしいぞ?」と気付いてしまうんですね。
良心的な感覚が強い人ほど、それを無視して強引に撮り終えることが難しく、何とか話を修正するために手を加えようとして行き詰まり、頓挫することになります。
そうならないためには、あらかじめ、最低限の品質のシナリオを用意するのが何よりも肝心です。
「高望み」は、自分の「理想」と「技術力・判断力」にギャップがある場合に起きます。
実際に映画作りをしてみると分かりますが、撮影の段階になってみると大抵の場合、「想像した映像とは違う」という感覚が生まれます。
そこでカメラの位置を変えてみたりして、何とか自分のイメージを再現しようとするんですが、必ずギャップはあります。
- そのギャップはそもそも問題なのか?
- そのギャップは埋められるものなのか?
- 埋められるとして追加時間はどれだけ掛かるのか?
という判断力が無いと、ああでもないこうでもないと試行錯誤してばかりで、撮影時間ばかり余計に掛かってしまいます。
これを繰り返すと、簡単にスケジュールオーバーして作品自体が頓挫してしまうんです。
この試行錯誤はそれ自体が楽しいものであることは確かです。
しかし、経験値が低く、「どの程度こだわるべきか」の判断が付かない場合は、「時間」を基準に割り切る訓練も必要です。
「創作たるもの、そのこだわりを捨ててどうする?」という人もいますが、優先順位の問題です。
頓挫して未完成に終わってしまっては、元も子も無いんです。
「完成させる」という最低限の技術と条件が揃っている前提がある場合だけ、「こだわる」というプラスアルファの楽しみを味わう資格があると認識してください。
そう言うと「では撮影スケジュールを3倍に増やせばいいじゃないか」という人もいます。
でもこれは皮肉なことに、「スケジュールの長期化」という製作頓挫の最大の原因を作ることになってしまいます。
大丈夫です。
映画作りで楽しいのは「撮影時の細かいこだわり」だけではありません。
完成さえさせられれば、
- みんな頑張った
- 楽しかった
- それなりに面白い
- 楽しそう
という感情を共有できます。
次の創作にも繋がるでしょう。
まずはシンプルな作品から完成させて、映画創作特有の満足感を味わうところから始めてください。
そして、完成した作品を公開しているとしたら、是非、URLをお教えください。
是非、映像仲間になりましょう。
参考になれば幸いです。
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仮に誰にも完成品を見せずに一人で鑑賞するとしても、えも言われぬ達成感、大げさに言えば作品の中とはいえ「世界を創造した万能感」に浸れるのが映画作りです。
さらに、他の人に作品を見せて高評価を得られたりすると、とても嬉しい気持ちになります。
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