アマチュア映画を見てもらうための工夫・ダブルキャストの利点を活かす
とにかく見てもらえない自主映画
創作の趣味は色々あって、それぞれに共通点や相違点があります。
映像製作の創作についていうと「作品が完成して完了」ではなくて、「人に見てもらって初めて完了」という特徴があります。
小説や絵画など、終始一人で行なって、自分だけの作業で完結する創作であれば、完成後、誰にも見せずに封印して、完全に自己満足にふけるということも可能なんですが、映像作品、特に映画の場合はそうはいきません。
大抵の場合は、自分以外の協力者が存在するからです。
協力者は好意で協力してくれるのでしょうが、満足感を得られるのがあなた一人だとしたら、活動は長続きはしないでしょう。
あなたの協力者が負担に応じた満足感を得られるためには、作品を多くの人に見せて、できれば評価してもらえる状態にすることが大事なんです。
でも、実際にはどうでしょうか?
私は35年くらい自主映画を作っていて、完成するたびに人に見せる努力をしているつもりですが、驚く程、作品は見てもらえません。
特に「暇があるときに見て」とタダでDVDを渡した相手は、会うたびに「ゴメン、忙しくてまだ見てない」と言います。
もちろん購入してくれる人の中には、面白がって何度も繰り返し見てくれる人もいますが極めて少数派です。
これはまあ、仕方ないんです。
生活の中で情報があふれていますから、それぞれのコンテンツはその人からどれだけ時間を奪うか競い合っているわけで、その中に一定の時間を消費する必要がある「映画」などというものを割り込ませようとしても、なかなか難しいんです。
「人は自分にしか興味がない」を逆利用する
人は驚くほど他人には興味がないというのは事実です。
これはビジネス書などを読む人にとっては常識なんですが、それでも「自分がエネルギーを注いで作ったものなんだから、僅かな時間なら使って見てくれるんじゃないか」と間違った期待をしてしまうものです。
繰り返しますが、人は自分にしか興味が無いことを認識してください。
やや広げたとしても、興味の範囲はせいぜい「自分の好きなもの(人)」までです。
あなたがどれだけ心血を注いて作品を作ったとしても、その完成品に全く愛着がない人にとっては、鑑賞することは時間の浪費に過ぎないんです。
ですから発想を逆転させる必要があります。
その作品を「他人事」ではなく「自分事」として認識できる形に近付けていくということです。
分かりやすい例で言うと、驚異的なリピーターを発生させた映画「シン・ゴジラ」があります。
リピーターが劇場に行った理由はもちろん他にもありますが、確実に有効だったのは、「大量のエキストラ投入」だと思います。
群衆シーンに参加した人にとって、この作品は「自分もどこかに映っている作品」という特別な作品、「自分事」になっているんです。
それは本人だけでなく、エキストラの家族、知人にとってもかなり自分事に近い作品ということです。
これは、「劇場で作品を見よう」という強力な動機になり得ます。
あなたの作品に、この要素を加えることが出来ないか考えてみてください。
キャストの差し替えで別バージョンを無数に作る提案
もっともシンプルなのは、出演者として人気者を出すことです。
行きつけの飲み屋の美人ママに出演してもらって、完成DVDを店で売ったらどうでしょう?
常連客ならかなりの確率で買って見てくれますよね?
これは、通常のドラマや映画と同じです。
人気がある人を出演させれば、見る人が多くなるのは当たり前の仕組みです。
私が提案するのは、それとは別に、あるいはそれと組み合わせて、出演者違いの別バージョンをたくさん作ることです。
もっとも簡単な方法は、エキストラ的に写っている出演者の場面を、別の人たちが写っている場面に差し替えることです。
あらかじめ差し替えやすいような構図で撮影しておけば、ごく少ない労力で別バージョンの作品が出来ます。
さらにグリーンバック撮影を利用すると、出来ることは広がります。
エキストラはもちろん、主役を含む主要な出演者の差し替えが可能になります。
出演者を変えてリメイクすると、単純に製作コストは2倍になりますが、出演者だけ差し替えると1.1倍くらいのコストで2本の作品が完成します。
これは映画のリメイクというより、同じセットを使った舞台のダブルキャストに近い感覚になります。
それによって増えるのは「当事者」「関係者」です。
登場人物を差し替えることで、この作品を「自分事」と捉えることが出来る人が増えるわけです。
私が提唱する「升田式スーパープリヴィズ法」を活用すれば、非常識なくらい簡単にこの「人物の差し替え」ができます。
最近ではAIを使って顔だけ差し替えることも出来ますが、
- 実際に演じる
- 完成品を鑑賞する
という楽しさを味わえるので出演者の達成感が全然違います。
私たち無名の映像作家が作品を観客に見てもらうのはとても困難ですが、このように従来の常識にとらわれない施策を打てるのも、自主制作の強味です。
「そんなのは映画じゃないよ」という批判をする人に従っても、現状は打破できません。
批判を恐れず、工夫をして楽しんでいきましょう。
参考になれば幸いです。
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