ストップモーション撮影の楽な方法:コマ撮り不要の工夫とテクニック

ストップモーションの特徴と魅力

特撮技法の中でも人気なのがストップモーション映像です。

これは、人形などが自分で動いているかのように見せる、アニメーションの手法の一つです。

 

アニメーションは精霊主義(アニミズム)と同じ語源で、「命を吹き込む」という意味があります。

確かに優れたアニメーションは、絵やミニチュアモデルに命が宿っているかのように見えます。

アニメーションの仕組みを理解するためには「動画はどう記録されるか」という仕組みを知る必要があります。

動画とは簡単に言うと連続した静止画を繋げたものです。

記録上は動いているわけではないんです。

1秒間の動きを24枚とか30枚の写真として記録して、その写真を1秒間で連続して表示することで、動きの記録として再現してるだけです。

 

ストップモーションはこの仕組みを逆に利用して、少しずつ動きに変化を加えながら撮影した静止画を並べることで、絵や模型が動いているように見せます。

自分が手で描いたもの、自分が手でポーズを付けたミニチュアが、映像の中で生き生きと動くのが面白いところです。

特にミニチュアモデルを使った「モデルアニメーション」とも呼ばれるストップモーション映像は、そもそも「ミニチュア模型」が持っている魅力と、動きがミックスされるのでとても楽しいものです。

ストップモーションを使わずに模型を動かす、「マリオネット方式」の手法も面白いのですが、マリオネット方式の撮影には大きな弱点があります。

複雑な動きをさせようとすると、何人もの人の手が必要になるという事です。

 

例えば、二本足で恐竜がノシノシ歩きながら口を開く映像を撮ろうとします。

足の動きを表現するために両手がふさがりますから、口を開く動作は別の人に任せる必要があります。

もっと複雑で自然な動きにしようと思ったら、さらに撮影には人数が必要になるわけです。

 

ところが、ストップモーションは全ての動きを一人で加えられます。

一人で足の動きを整えつつ、口の開閉も整えて、手を放して撮影、という作業を繰り返すのが基本だからです。

「複雑な動きでも全てを一人で完結させられる」というのが、ストップモーション映像制作の大きな魅力かもしれません。

従来の撮影手順による欠点は撮影時間の長さ

ストップモーション撮影の基本は、三脚に固定したカメラの前に模型を置き、少しポーズを変えては撮影する、という作業を繰り返すことです。

そうやって、1コマずつ撮影するので、ストップモーション撮影のことを「コマ撮り」とも言います。

模型のポーズを変える作業をP、撮影をとすると、次のような作業になります。

 

P、、P、、P、、P、、P、、P、、P、、P、、P、、P、

 

これで10コマ分の撮影になります。滑らかな動きに見せようとすれば、これは1/3秒の長さです。

想像できると思いますが、ストップモーション映像の撮影最大の欠点は「とても時間が掛かる」ということです。

動きの荒い、コミカルな映像で良ければ、1日で1分間くらいの映像が作れるかもしれませんが、リアリティーがある映像を作ろうとしたら、1日掛けて撮影してもせいぜい数秒分の映像しか作れません。

新しいビデオ時代のストップモーション撮影

そこで私が実験して採用しているのが、コマ撮りをしないストップモーション撮影です。

具体的なやり方は、カメラを撮影しっぱなしにするということです。

前述同様に、模型のポーズを変える作業をA、撮影をBとして同じ分量の10コマ分の撮影をする場合、次のような作業になります。

 

P、S、S、S

 

明らかに文字列が短いですよね?

P、、P、、P、、P、、P、、P、、P、、P、、P、、P、(←従来法)

圧倒的に手間が少ないということです。

 

実際の作業としては、模型をちょっと動かしては手を引っ込める、という動作をカメラの前で繰り返すことになります。

その間、カメラには一切触れません。

視線も模型から反らす必要がないので、次の動きを付ける事だけに集中できるんです。

やってみると分かりますが、従来のコマ撮りとは比べ物にならないくらい、サクサクと短時間に撮影が進みます。

撮影がスムーズなので、模型の動きも滑らかになります。

 

もちろん、これで撮影した映像には、動きを付けている自分の手がばっちり映り込んでしまっているので、それだけでは完成にはなりません。

撮影映像をパソコンに取り込んで、「手が映り込んでいない瞬間」を1コマずつ画像書き出しする必要があります。

その、書き出した画像を改めて並べることで、ストップモーション映像になるわけです。

 

「画像書き出しの手間が増えるから大変そう」と言われますが、動画編集に慣れていれば、そんな作業はものの10分くらいで終わります。

撮影が数倍のペースで進む上に、追加作業が僅かなのであれば、この手法を使わない手はありません。

 

これは実は、デジタルデータに映像を記録して、デジタルで編集できる現代だからできるやり方なんです。

同じことをフィルムのカメラで行なったら、フィルム代だけで何百万円も掛かってしまいます。

撮影自体は0円でできる今だからこそ、実現できる手法と言えます。

 

「編集作業を加えずに、昔ながらのやり方でコマ撮りを楽しみたい」というのであればそれも良いでしょう。

ただ、その先にある「鑑賞できる作品づくり」まで考えるのであれば、新しい手法をお勧めします。

 

なお、撮影中に手が映り込んでいる映像も、全体を早送りで見せたりすれば、楽しいメイキング映像になることを付け加えておきます。

参考までに、私の実験映像を公開します。

 

参考になれば幸いです。

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