自主映画ならではの個性的な内容を目指せ:有効な名刺代わりになる可能性
名刺代わりに使えるのが自主映画
劇場公開された作品に対して「あんなのは映画じゃないよ。単なるテレビのスペシャル版だ」というような批判をする人がいます。
この「食い違い」はどこから来ているかというと、「映画」をどう定義するかによります。
結論から言うと、統一された定義はないんです。
ある人は「フィルムで撮られたものでなければ映画ではない」と言いますし、ある人は「映画館で上映する物が映画だ」と言います。
良く分からない精神性を基準に判断する人もいます。
私はもっと緩く、「複数の映像を意図的に組み合わせてストーリーになっている作品」であれば、「映画」と呼んでいますので、今後も私の意見の中に出てくる「映画」はそういう定義だと思ってください。
ペットのかわいい様子をスマホで撮影したり、自分たちのダンス動画やスポーツ競技の場面を撮影したものは、「映画」とはちょっと違います。「映像メモ」なんですね。
もちろん、これらも組み合わせれば映画になる可能性があるので、映画の材料にすることは出来ます。
そして、短い作品だったとしても「映画」にすると「映像メモ」では現れなかった、「作者の個性」がはっきりと見えるようになります。
ナンセンスギャグを連発するような内容でも「これを作った人は真面目な人だな」と分かったり、スマートでカッコいい作品を見て、「こだわりの方向性が表面的で、本質的な面白さには興味が向いてないんだな」と感じたりします。
作者本人が意図したかどうかに関わらず、特にワンマンに近い体制で作られた自主映画は、作者本人を紹介することになるわけです。
これが、「自主映画は名刺代わり」という理由です。
自己紹介を兼ねるのであれば、自身で自主映画を作ることはとても効果的だと思います。
観客を意識する作品と意識しない作品
商業作家であれば、注文があれば本人は全く興味も愛着もないテーマで作品を作ることもあるでしょう。
「作品は観客の満足のためにある」と割り切れば、活動としておかしくはありません。
一方で、特に自主製作作品は、顧客からの注文で作る訳ではないので、100%「自分が観たいもの」を作る傾向があります。
つまり、自分以外の観客のことは意識しないわけです。
これには長所・短所があります。
長所は「個性が際立つ」というものです。
観客の目を全く意識しない、ということは難しいですが、「人からどう見られるか」ということばかり考えて作った作品と比較すれば、はるかに個性的な作品になる可能性があります。
仮に100%自己満足のために作った作品でも、もし、自分と同じ感性の観客が多く存在していれば、強力なファンを獲得する事にも繋がります。
ただ、短所は何と言っても「誰にも相手にされないことがある」ということです。
技術的に未熟であればもちろんですが、ある程度の技術レベルになっても、観客の興味に刺さらなければ見られる機会もありませんし、観ても「まあよく出来てるね」という以上の評価がされません。
そうなると、どうしても「次の作品」が作りづらくなっていくんです。
ワンマンに近い体制とは言っても、協力者はいるでしょう。
その人たちのモチベーションを維持できなければ、次回作にも協力してくれるかどうかは分からないんです。
では、「観客を意識した作品」にすれば良いかというと、これも難しいと思います。
現代は映像を含めたコンテンツがあふれた時代です。
テレビやYouTubeでは大金を掛けて観客の取り合いをしている状況です。
そんな中、品質的にさまざまな弱点を持った自主映画・DIY映画を見てもらうにはどうすればいいか。
ヒントは「スモールビジネス用の広告の構造」にあると私は考えます。
「この人たちにとっては無視できない」という内容にする
広告には2種類あります。
コンビニや家電量販店で手に入るような商品の広告と、ピンポイントで相手を選ぶ広告です。
このメルマガはビジネス向けの内容ではないので詳しくは解説しませんが、結論を言うと、真似すべきはピンポイントで相手を選ぶ広告なんです。
「こんな人におススメです!」と特化した内容の広告を出して、それに反応した人が商品解説を見て「これはまさに自分のために作られた商品だ」と感じさせて購入させる、という流れを設計するのが、この広告の基本です。
当然、内容はやや偏ったものの方が効果的です。
「頭痛にも、二日酔いにも、筋肉痛にも効きます」という万能薬ではなくて、「とにかく頭痛を素早く抑えます。それ以外には効きません」という方が魅力的に見えるからです。
映画も同じで、いろいろな嗜好を持つ観客に満遍なく訴求する内容にするのではなくて、ピンポイントに偏った内容にする代わり、「その嗜好に合う人ならかなりの確率で満足する」という内容にすると、評価されて次に繋がるモチベーションが生まれるという状況になり得ます。
これは、作者本人はもちろん、協力者にとっても必要な状況ではないでしょうか?
この状況を作るためには、
- 作者が情熱を十分に注げる内容であること
- 一定数のマニアックな観客がいるジャンル
をよく考えて、ベストな組み合わせを探すことです。
映画ではオリジナリティが重視されると言いますが、実際に必要なのは「新しい組み合わせ」です。
「サメ映画」が好きで、同じような内容でも喜んで応援する観客にとっては、「江戸時代+サメ」という新しい組み合わせが魅力かもしれません。
私の「妄想映画リスト」の中には、「戦国時代+エイリアン」があります。
クライマックスでは、エイリアンを安土城の天守閣に誘いこんで城ごと焼き殺すというものです。
「映画のベストワンは『ローマの休日』」という人には見向きもされないとは思いますが、一部の熱心なマニアの観客には喜ばれると思いませんか?
せっかく作るなら、テレビでも映画館でも見かけない、個性的な作品を目指してはどうか、という提案です。
参考になれば幸いです。
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