発信者となる大衆:インターネットが変えた情報の流れが創作活動も変える
受信者と発信者
昔は大衆は一方的な「受信者」でした。
何か主張したい、発表したいことがあっても、それを自由に広く発信する手段がありませんでした。
情報を発信できるのは、テレビやラジオという放送メディア、出版業界に限られ、ほんの一握りの人選ばれた人だけが「発信者」になれた時代が長く続きました。
例えば自分の創作活動やビジネスを広く告知したい場合、発信手段を持つ放送・出版メディアに取り上げてもらうことくらいしか出来ませんでした。
もちろん、同人誌などは昔からあって、大変なコストを掛けてコツコツと発信を続けている人もいましたが、かなりの少数派です。
大衆は「受信者」としての癖が染みついていて、多くの家庭では一日中、テレビをつけっぱなしにしているのが当たり前だったのではないでしょうか。
90年代の終わりに登場したインターネットはさまざまな技術革新とリンクしていますが、最も大きな変化は、「大衆が発信側に立つ可能性を作ったこと」だと思います。
インターネットの登場が全ての前提を変えた
従来、「発信」には膨大なコストが掛かったんです。
放送設備の維持や印刷設備、流通環境を整えることが、一個人では出来なかったのがその理由です。
「映画」という創作に限って考えてみても、そもそも「映像製作」にお金が掛かった時代は、「物語創作」を形にする際、最も低コストで出来るのが「舞台演劇」だったりしたわけです。
観客の方も、テレビや映画で取り上げられないような、マニアックな内容の物語創作が楽しめたので、舞台演劇のファンが一定数いたことは理解できます。
インターネットの登場と同じころに、ビデオカメラで撮影した映像をパソコンで自由に編集できる環境が整ってきたので、物語創作の一つとして「映画作り」が俄然、やり易くなります。
高価なフィルムのような消耗品が発生しないので、映画作りが信じられないくらい低コストで行えるようになったんです。
そして、昔からの課題であった「発表の手段が限られている」という点も、インターネットを利用すれば、限りなく無料に近いコストで世界中に作品の配信ができるのが現代です。
パソコンによって、高品質のコンテンツを個人が作れるようになり、インターネットの利用によって、かつてのテレビ・ラジオ以上の「発信力」を個人が持ち始めました。
こんな状態は、人類史上初なので、可能性が広がると同時に、さまざまな問題も生じるでしょう。
そこは未知数ですし、随時、学習が必要です。
承認欲求を満たす方法として発信は有効
インターネットを使って発信することで、大衆は「発信が承認欲求を満たす」ということに気付きました。
これまでは、テレビなどのメディア関係者しか味わえなかった満足感を、情報発信で得られることを知ったんです。
承認欲求は人の行動理由としても強力です。
正しく扱えば、大きな満足感を得られます。
人々が「鑑賞者」であることに飽きて、実際に「体験者」になりたい、さらには「表現者」になりたいと思うのが現代です。
さまざまな注意点はありますが、プラスの面にフォーカスすると、夢のような現状です。
どんどん創作して発信すべきではないでしょうか。
発信手段が無いにもかかわらず、チマチマと自主映画を作っていた頃、よく「作ってどうするの?」「何のために作ってるの?」と聞かれて答えに困っていましたが、今は「承認欲求を満たすことで大きな幸福感を得られる」という一面はアピールできます。
記録の価値と楽しさ
長年、自主映画を作ってきて、自分や知り合いの作品を見返すたびに感じるのは、「変化してしまうものを記録できた」という嬉しさです。
もちろん、映画であれば、普段見るテレビや映画作品とは一味違う切り口の作品に仕上げたい、という欲求はあります。
でも、仮に何の変哲もない「よくある作品」だったとしても、そこに映っている景色がもう今は変わってしまっているとか、若い頃の自分たちが写っているといったような「記録」の部分も重大な価値を持っている事を痛感します。
そしてその「記録」の部分の価値を感じるのは、関係者だけでなくインターネット経由で作品を見た、見知らぬ人だったりします。
とかく「創作者」を高尚に捉えたがる人は、作品の内容だけで勝負したがりますが、「鑑賞時間」という貴重なコストを払って見る人には、どんな内容であれ、出来る限りコストに見合った満足感を味わってもらえるように工夫する必要があります。
「ここが良かった」と喜ばれることで、発信した側の承認欲求も高まることを意識すると、関わる人同士で満足度の高い創作活動が続けられると思います。
参考になれば幸いです。
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