実は理系の創作?映画作りは論理的辻褄合わせのゲーム

映像系ストーリー創作物の面白さについての一般的な誤解

もちろん創作は自由です。
「こうしなければいけない」というルールはほとんど存在しません。
ですが、その自由さを楽しみながら作った作品は、よほどの才能がある作者でない限り、残念ながら他人にとって面白くない作品になってしまいがちです。
特に映像作品を「作る面白味」は、映像的な演出面に占める割合が大きいので、ついつい「映像」に凝ってしまうんです。
それ自体は良いんですが、現実問題として映像に凝っても「面白さ」が向上する度合いはとても少ないことを知っておく必要があります。

創作の動機と観客の期待

プロの作家であれば、白紙の状態から「面白い物語」を作る必要性もあります。
しかし、少なくとも私は、

  • 扱いたい題材
  • 思い浮かぶ場面

を形にしたい、というのが創作の動機です。

それを成り立たせるために、ストーリーを構成するという順番で考えます。
逆に言うと、その題材や場面を採用できないのであれば、仮にストーリーとしては面白くても、その作品を作る意味が無いんです。
多くのアマチュア作家はそういう傾向があると思います。

そこで陥りがちなのは、「それらのアイデアを視覚化して編集すれば素晴らしい作品に仕上がる」という妄想を抱いてしまうことです。
そういうラフな感覚で作れるのは、せいぜい予告編風のダイジェスト映像だけです。
ダイジェスト映像は、例えると「パズルのピースを組み合わせずに、何となく見栄え良く並べたイメージ」なんです。

一方で、物語作品として「面白い」という印象を与えるためには、パズルのピースが綺麗に組み合わさって一枚の絵になっている必要があります。
言い方を変えると、「論理的な面白さ」があるということです。
これはなかなか面倒な作業が必要です。

パズルのピースの要素としては、登場人物の行動動機や状況などがあって、そこに説得力を感じればマイナスのストレスを感じずに鑑賞できますが、

  • 理解できない
  • 説得力がない

という印象を持たれてしまうと、それが積み重なった分、「つまらない作品」という感想に向かいます。
素晴らしい映像や演出があったとしても、この「つまらない」を覆すことはとても困難です。

でも、自由に作品を作ろうとすると、大抵のアマチュア作家は、映像や演出でカバーしようとします。
カバーできないのは

  • 演出力が足りないせい
  • カメラの画質のせい

と勘違いしがちです。
どうして映像や演出に力を入れようとするかと言えば、単純にそれが楽で楽しいからでしょう。

面白さを総合点から考える

映画は一流の作品だけが面白いとは限りません。
昔からレンタルビデオなどで二流・三流の映画の中に面白いものを探すマニアはたくさんいますし、実際、難点が多くても総合的に見て「面白い」と感じられるものはあります。
私は、凡才が作る映画も面白くなる可能性が充分あると思っています。

ただ、「面白い」という印象を持つためには、総合点で65点くらい必要だと思います。
70点の映画はかなりの良作です。
そして、私たちアマチュア作家が作る作品は通常、50点前後というのが私の印象です。

ここで大事なのは「総合点」の内訳です。
恐らく作り手が「面白い」と思った「場面」だけでは、観客は面白さをそれほど感じない筈なんです。
私が思うに、「面白さ」の大きな部分は、「あ!繋がった!」という感覚だと思います。
その感覚を表現するのに、パズルのピースという例えが合っていると思うんです。

  • そういう理由があるからこの人物はこういう態度をとっていたのか!
  • こういう動機で犯人は犯罪を繰り返していたのか!

など、説得力を持って「繋げる」という設計が、作品を面白く感じさせます。
都市伝説・陰謀論の根強い人気も「辻褄が合っているように見える」ということが理由だと考えます。

逆に言うと、いくら場面の見映えが良くても、

  • え?それじゃあここが矛盾するじゃん!
  • その程度の動機でこの行動をとる?

というように、説得力がない、つまりパズルのピースがはまっていない状態だと、「つまらない・レベルが低い」という印象を持たれてしまうんです。
「演出面でのこだわり」以前に改善の余地が山積していると思ってください。
矛盾だらけのシナリオ、魅力のないシナリオを元にすると、いくら黒澤明的こだわりを施しても、50点が51点になるだけです。
映像や演出の魅力はプラスαにしかならないからです。
これはあまりにも効果が薄くて、全然、割に合いません。

必要なのは辻褄合わせと理想のイメージの融合作業

作品を面白くするために最も効果的な、「辻褄合わせ」は頭を使う面倒な作業なので、嫌う人が多いような印象があります。

でも、辻褄合わせは面倒ではありますが、困難ではありません。
根気よく考えれば、ある程度の答えが出ます。
演出のように美的感覚や才能に大きく左右される要素と違って、数学的なシンプルさがあるので、かえって誰でも改善できると思ってください。

では、現実的にどうやって物語の構成を考えていけばいいのか。
偉そうに言っていますが、これは自戒を込めた意見です。

まずは「やりたい事2割 そのために必要なこと8割」の法則があると思ってください。
最初のほうで、物語創作をする動機になるのは

  • 扱いたい題材
  • 思い浮かぶ場面

を形にしたいからだと言いました。
この2つが「やりたい事」です。
これを作品の中にうまく盛り込めるストーリーを作りたいわけです。
そのために「必要なこと」を辻褄合わせをしながら考える必要があります。
辻褄が合っていないと、あなたがやりたい場面が説得力なく唐突に登場することになって、つまらなさを感じさせてしまいます。
その場面が必然に見えるように、こじつけでもいいので、辻褄を合わせるようにしてください。

そうやって場面を考えていくと、概ね2割の「やりたい場面」を「繋げるための場面」が8割くらい必要なことが分かります。

その「繋げるための場面」をいかに自然に、出来ればそれはそれで魅力的に見せることが出来れば、アマチュア映画でも充分65点以上の作品になるはずです。

「やりたい場面」にエネルギーを注ぐためには、「繋げるための場面」は特に、いろいろなコストを抑えられるに越したことはありません。
ここは、ストック映像や、コストを抑えるための特撮映像を駆使することをおススメします。

参考になれば幸いです。

(ブログ記事一覧)

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Is Filmmaking Really Science-Based Creativity? Logic and Consistency as the Game

Misconceptions About the Appeal of Visual Storytelling

While creativity knows no bounds, the freedom to create can often lead to works that fail to resonate with others—especially without remarkable talent. For visual storytelling like film, the allure frequently lies in visual execution, leading creators to focus disproportionately on imagery. However, enhancing visuals rarely boosts the audience’s perception of “fun,” a reality all creators should consider.

The Motivation to Create Versus Viewer Expectations

Professional filmmakers are tasked with building compelling narratives from scratch. For amateurs like myself, creation stems from a desire to shape specific themes or imagined scenes—not to develop a standalone story detached from personal inspiration.

This tendency drives a common pitfall: the belief that visualizing and editing random ideas will create a remarkable work. That approach at best produces a trailer-like summary—a jumble of puzzle pieces arranged for aesthetics rather than logic. However, crafting a genuinely “engaging” narrative demands fully connecting those pieces into a cohesive whole.

Missteps in logic—character motives or unclear situations—alienate viewers, undermining a project regardless of visual splendor or direction. Audiences must feel confident in the story’s reasoning to avoid disengagement.

Focusing on Composite Story Quality

Amateur films have every chance to entertain, with second-tier or niche cinema holding appeal for hobbyist viewers. Yet, achieving a combined score of 65% quality is often the minimum bar for true audience enjoyment—just above the average 50% mark for amateurs.

The excitement comes from “Aha! That makes sense!” moments—where motivations, actions, or connections align seamlessly. Effective filmmaking relies on cultivating such experiences, echoing the logic-driven appeal of conspiracy theories and urban legends.

Prioritizing Coherence and Iterative Refinements

Enhancing logical integrity is arguably the most potent and accessible method for improving film projects. Unlike artistry reliant on innate talent, logical structuring mimics mathematical precision, allowing anyone to refine their work with dedication.

Creators should aim for a 2:8 ratio: spending roughly 20% of their effort on vision-specific themes or scenes, and 80% linking them logically through supporting sequences. Connecting these puzzle pieces, ideally with an aesthetic charm, can elevate amateur films into captivating works.

Tips for Maintaining a Logical Framework

Lower-cost alternatives, such as stock footage and practical effects, can minimize expenses while establishing supporting sequences. This resourceful filmmaking approach allows greater focus on pivotal scenes without compromising coherence.

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