映像的「ごまかし」を積極的に活用しよう:趣味の映像製作者へのガイド

大前提は技術レベルが低いこと

私たちがDIY映画を作る目的は、ほとんどの場合、大それたものではありません。
私の場合は少なくとも

  • 自分が観たい内容の映画を作る
  • 趣味が近い人と一緒に楽しむ(褒めてもらいたい)

というのが主な目的です。

そんな低い志ですから、当然いろいろな技術的レベルも低いことになります。
でも、レベルが低いなりに工夫をしてそれらしく見せることが出来るのが映像作品の最大の特徴で、面白さもそこにあると考えています。
「レベルが低いなりの工夫」をここでは「ごまかし」と表現することにします。

「ごまかし」は悪なのか?

ここでいう「ごまかし」は当然、ポジティブな意味です。
「そんなごまかしに頼っていては立派なプロにはなれないよ」と批判する人がたくさんいますが、その意見は無意味です。
少なくとも私は、立派なプロになる気はサラサラ無く、ただ創作を楽しみ、あわよくば観客も楽しませたいと思っているだけだからです。

ちなみに私は25年ほどサラリーマンをしている間、大半の時間を技術文書(マニュアル)の中に掲載するテクニカルイラストと呼ばれる図の作成に費やしていました。
私より前の世代のイラストレーターたちは、定規とペンを使って紙に細密な図を描いていたそうで、それはもの凄いプロの技術であることは確かです。
でも私がこの仕事を始めたころは100%、パソコンを使ってイラストを描いていたため、従来であれば修行が必要だった、

  • 均一の太さで線を引く技術
  • 正確な角度で斜めの線を描く技術
  • 綺麗に修正する技術

などは完全に不要になっていました。
その上、パソコンを使って描画するのですから、同じ結果を出すためのいろいろな「裏技」を見つけていきます。
自分たちが5年くらい掛かって出来るようになったことも、新人に裏技込みで教えると、1ヶ月で出来るようになるんです。
私は1日でも早く戦力になってもらって作業を助けてもらいたかったので、段階を追って自分が知る全ての裏技を伝えていましたが、ベテランイラストレーターの中にはそれを良く思わない人もいました。
「はじめからそんな裏技を教えたら勉強にならないよ」
と、もっともらしいことを言っても、要は「自分たちが長年掛かって出来るようになったことを短時間で出来るようになられては面白くない」というのが本音でしょう。

映像の世界でも同じような話はたくさん聞きます。
「自分たちの頃はどれくらいの明るさに映るか、露出計などを使って計算してプロの技術で撮影してた。今はモニターで最終的な状態を確認しながら簡単に撮影できてしまう。あれでプロと言えるのか。嘆かわしい」
などという意見は、どんどん技術が進んで行く世界では滑稽な批判です。

ごまかしの例(拙い演技)

映画の華は役者の演技です。
プロの役者の役作り、それを最大限に活かす演出の工夫など、名作と言われるプロの作品には魅力的なエピソードは無数にあります。
ただ、私たちには全く別の、前段階の課題があります。
それは多くの場合、「役者の演技力に頼れない」ということです。
端的に言って演技が下手なんです。
そもそも表現力が低い場合、「もっとこういう気持ちで演じて」と指示を出してもほとんど意味はありません。
その気持ちになったとしても、その気持ちが見ている人には伝わらないからです。
大監督の真似をして「もう一度!」といくら撮り直しをしても、演技がどんどん不自然になる状況に遭遇した人も多いでしょう。

ここでは全く別の工夫「ごまかし」が必要です。
プロの役者のように達者な表現が出来る場合は、長々と撮って一連の演技を見せた方が効果的ですが、演技が拙い場合は長々と撮ると見ていられません。
そこで必要なのは「細かなカット割り」です。
あらかじめ意図を持って計算したカット割りをすれば、演技力が低くても「伝えたい感情」まで表現できるんです。
「そんなのは演技じゃないよ」という意見もあるでしょうが、一番大事なのは「観客が状況や感情を理解できること」なんです。
「そんな撮り方をされるなら映画で演じる意味が無い」という役者は舞台で活動すればいいですし、逆に言うと、

  • 演技経験もない
  • 演技力もない

という人でも十分「それらしい登場人物」として作品の中で活躍できるんです。
私はそちらの方が数段、楽しいと感じます。

ごまかしの例(合成のアラ)

私は常々、低予算でもイメージ優先の映像を実現するために、「映像合成」を積極的に活用しています。
現代はデジタル技術の向上によって、様々な映像合成が出来るようにはなりましたが、私レベルの技術では正直、「合成のアラ」も相当目立ちます。
理想は「合成している事に気付かれない」という状態ですが、場面によってはどうしても不自然な合成になってしまう場合も多くあります。
そこからは損得勘定で、「たとえ不自然でもその映像があった方が良いかどうか」を基準に採用不採用を考えることになります。
大抵の場合は、必要だからその映像を用意したわけで、そこをカットすると全体が繋がらなくなることが多いので、ごまかして使うことになります。
ごまかしの主な手法としては

  • カットの長さをできるだけ短くする
  • 画面を揺らす
  • 場面自体を暗くする

というものがあります。

基準は「見る側のストレス軽減」

ここで注意しなくてはいけない事は、そもそも「ごまかし」は「見る側のストレス軽減」のためにあることを忘れない事です。

  • 「役者の演技が下手だなあ」と感じるストレス
  • 「合成が拙いなあ」と感じるストレス

これを少しでも抑えて、作品全体を鑑賞しやすくするのが目的です。

ところが「ごまかし」によって

  • カットが細かすぎて忙しない
  • 画面の揺れが見ていて疲れる
  • 暗くて良く見えない事にイライラする

という新たなストレスが生まれてしまっては、本末転倒なんです。
実際の作業をしていると忘れがちで、低予算の商業映画でも、ごまかし過ぎてかえって見ていられなくなっているものが散見されるので、私たちも気を付けたいところです。

参考になれば幸いです。

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