簡易合成のコツ・カメラワークを無くすことで得られるメリット

実は「カメラワーク」と「映像合成」は相性が悪い

現在では、ほぼ100%、映像の撮影はデジタルカメラで行います。
アナログのビデオカメラで撮影した映像を、アナログ編集していた時代を知らない人の方が多いのではないでしょうか。
映像をデジタルデータとして扱うことが当たり前の現在、パソコン編集によって映像合成がとてもしやすくなっています。

でも、映像合成をするのであれば、アナログ時代の手法が最も実用的なんです。
アナログ時代の手法というのは、基本的に
「合成する映像はカメラを固定して撮影する」
というものです。

古典的な手法である「ストップモーション」を多用した特撮映画は、近年でもその楽しさが再評価されて、新しい作品も作られていますが、これらの場合も、基本的にはカメラは固定した状態で撮影します。
つまり、「カメラワーク」を使わないんです。

カメラワークというのは、カメラを上下左右の向きに動かしながら撮影したり、移動しながら撮影したり、ズームしながら撮影することです。

映像合成は2つ以上の映像を組み合わせるので、映像が動いていると合成がずれてしまうんです。
昔の日本映画などを見ると、合成用のブルーバックの前で俳優を撮影するときにカメラワークを使ってしまったため、非常に不自然な合成映像になっているシーンがあったりします。
これは恐らく、その監督やスタッフが合成特撮の性質を良く理解していないせいだと思われます。

「合成映像は固定カメラで撮影する」という常識を打ち破った映画もあります。「ジュラシック・パーク(1993)」です。
この作品では「走っている人物を移動しながら撮影した映像」にCGで作成した「走っている恐竜」を合成するという場面が登場します。
今では珍しい映像ではありませんが、当時は信じられない映像でした。
当初は「ジュラシック・パーク」でも、合成映像部分は基本、カメラを固定して撮影する計画だったそうです。
しかし、スピルバーグ監督の「どうしても移動撮影にしたい」という、ある意味「ワガママ」を実現するため、撮影済みの映像の解析をして、カメラの角度や動きの向き、スピードを割り出した後、それに同調するようにCG映像を合成するというような、ソフトウェアを開発して実用化しました。
資金力があるアメリカ映画ならではのエピソードです。

これを機に、映像の解析と合成の技術は飛躍的に進みました。
今では、アフターエフェクツなどのソフトを使いこなせば、私たちでも「カメラワークを含んだ映像」にかなり自然な合成も可能ではあります。
テレビドラマでも、そういう合成映像がよく採用されています。
例えば、建物の火災の場面をドローンで移動撮影していたりする映像です。
炎や煙を、移動して撮影した映像の動きにぴったり同期させて合成した場面です。
確かにリアリティはありますが、視聴者はそういう映像をもう見慣れてしまっているので、そこに驚きは感じてくれません。
私たちが作品を作るときには、手間を考えると「カメラワーク+合成」の組み合わせは、割に合うとは言えないのが現状です。

カメラマン無しの現場から生まれた簡易合成多用作品

私は自主映画・DIY映画を作り続ける中で、

  • 少人数で撮影する
  • 短期間で撮影を終える

というテーマを追求してきました。できるだけたくさんの映画を作りたいという思いからです。

そんな中、

  • メインの登場人物2名
  • 現場に専属カメラマン無し

で手軽に短期間で撮影できないものか、と思い立ち、実験的に探検映画のシリーズを作り始めました。

専属カメラマン無しなので、2人が映る場面は、三脚に固定した無人カメラで撮影することになります。
1人しか映らない場面はもう一人が即席カメラマンとして撮影します。
カメラマンがいない事で不自然になってしまうようであれば、この手法は採用し続けないつもりでしたが、結果から言うと、ほとんど何も違和感なく作品をまとめられました。
実際には、無人カメラの映像だらけで不自然にならないように、意識して、手持ちカメラの「主観映像」を間に挟んでメリハリをつける工夫などが有効でした。

この「無人カメラ」には当然、「カメラワーク」がありません。
カメラワーク無しの映像は退屈になると思われるかもしれませんが、作品にとってさまざまなメリットがありました。

カメラワークの失敗が無いので撮影が早い

1つ目は「カメラワークの失敗が無いので撮影が早い」ということです。
映像は、「演技がOK」かつ「撮影がOK」ではじめて1カットの撮影終了となります。
「演技はOKだけどカメラが変に揺れちゃったからもう一回」ということはよくあります。
固定カメラであれば、演技さえOKならOKなので、撮影の回数(テイク数」が少なくて済むんです。これは1日に撮れる分量が多くなるので、映像の繋がりも良くなり、撮影期間も短く抑えられ、とてもメリットが大きいと言えます。

合成がやり易い

2つ目は「合成がやり易い」ということ。
初めの方で解説したように、合成の基本は固定カメラ撮影です。
あらかじめ合成を前提に構図を考えて固定カメラで撮影しておくと、シンプルな合成がきれいに出来るんです。
合成には「余計なものを画面から消す」というものも含まれます。
シーンとして場違いなものが映り込んでしまう場合など、合成を使わない場合は構図を変更する必要がありますが、合成を前提にすれば、「理想的な構図」を優先した映像に仕上げる事が出来ます。
何より、映像合成は低予算映画においては強い味方です。
大道具を用意するコスト、理想的な撮影場所を探して遠方まで行ってロケ撮影をするコストを、シンプルな合成によって大幅に節約できることは、いつも提案している通りです。

見やすい映像になる

3つ目は「見やすい映像になる」ということです。
「手振れがある映像」=「リアリティがある映像」という考えで作られた作品も多くありますが、その手法はそろそろ陳腐化していると思われます。
そして何より、手振れ映像は見ていて疲れるんです。人によっては「映像に酔ってしまうので苦手」という場合もあります。
私は学生時代から多くの自主映画に対して、「手振れが安っぽく見える原因の1つだ」と考えていたので、出来るだけ三脚を使って安定した映像にすることを心掛けてきました。これには一理あると今でも思っています。

映画の入門書などをみると、基本技術としていろいろなカメラワークが解説されています。
確かにカメラワークによって出る効果もありますし、カメラワークを使った撮影自体にも魅力はあります。
ただ、「一定条件の中で作品を完成させる」という高い視点に立ってDIY映画製作を考えると、カメラワークの無い固定撮影を多用することがとても有効な手法と言えると、私は自身の体験から言えます。

参考になれば幸いです。

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