推敲できない「従来の映像制作」を変えるアイデア
映像づくりの創作が何故難しいと思われるか?
趣味としての創作活動はさまざまあります。
どの趣味にも魅力があり、夢中になって没頭できる人は、趣味がない人に比べて明らかに日々感じる充実感が高い筈です。
この「充実感」は馬鹿にならない感覚で、これを持たずに生活していると、代わりの疑似的な満足感を得るために「他人の批判」ばかりしがちになるんです。
これは無為というほかありません。
要は「楽しめる趣味を持ちましょう」という話なんですが、私のように体力がない人間に向いている趣味の一つが「創作」で、その中でも「映像」は面白いよ、とオススメしているわけです。
ところが、同じ創作の趣味の中でも「映像」は
- お金が掛かりそう
- 難しそう
と思われがちです。
お金が掛かるというイメージを持つ原因は、実際に映像づくりに大金が掛かった昔の状況から知識が更新されていないことから来ています。
実際は、作業するたびに消費するのはデータ容量と僅かな電気代だけなので、手持ちの道具だけで映像づくりを始める限り、最もお金が掛からない趣味とさえ言えます。
「難しそう」という点については分からなくもありません。
それは、「映像は修正しにくい」という性質から来ているかもしれません。
例えば、小説。
先日、全く無名の作家が書いた電子書籍の長編小説を読んで、思わぬ掘り出し物として楽しみました。
そうすると、自分でも小説を書いてみたくなる訳ですが、品質の良し悪しを抜きにすれば、見よう見まねで書き始めることが出来るんですね。
基本的にはこの記事と同じ「文字」で構成されているので、書き進めることができます。
そして、当然のように推敲を重ねていくことで、何となくサマになってくるのは想像できると思います。
繰り返しの推敲は絶対に必要で、一通り形にして初めて「ここは言葉足らずで良く分からないな」とか「言い回しがまどろっこしいから簡潔にしよう」とか改善ポイントも見えてくるわけです。
その、「あとから推敲できる」という安心感から、アイデアが繋がったら細かいことは後回しにして一気に文章を書き進めるということもできるわけです。
油絵なども同様です。
絵の具が乾きさえすれば後からいくらでも色を重ねられるので、ざっくりと形にした後、納得のいくまで修正を加えられます。
ところが「映像」における「推敲」は、編集段階の微調整しかできません。
つまり、撮影した映像のうち、使う部分の選択や順番の入れ替えは出来るものの、登場人物のキャラクターを変えたり、場面に登場する部屋の家具を変えたり、ということが、小説や油絵のように後から変えられないんです。
すると、当然、重要になってくるのは「撮影前の検討と準備」になります。
映画などは何年もかけて準備して、数週間で一気に撮影することがほとんどですから、撮影に入る前に作品は7割方完成している事になります。
そのため「下準備が重要」ということになるわけですが、趣味としてやるには、ここの作業が地味で重たいんです。
私自信は、この作業も映像創作の醍醐味と思ってますから根気よく続けられますが、「面白そうだから映画作ろうぜ」と仲間と盛り上がって、楽しいであろう撮影や編集を味わうための前工程が長すぎると、まずやる気は続きません。
本格的に映像づくりを楽しもうと思って、作り方を知ると「難しそう」と尻込みしてしまうのも無理はありません。
技術が変える制作工程
はっきり言えば、この「推敲ができない」ということは映像制作の弱点です。
苦労して下準備を重ねても、仮編集で形になってくると、編集の微調整ではどうにもならないような問題点が見えてきたりします。
それでも、撮ってしまった映像を使う限り、解決はできません。
納得のいくまで撮影を何度もやり直すのもナンセンスです。
私が提唱している、グリーンバック合成をベースにした「升田式スーパープリヴィズ法」は、もともと「圧倒的な撮影スケジュール短縮」のために確立しましたが、大きな特徴である「人物と背景を別々に撮影する」ということを利用すると、「推敲が出来る映像」とも言えます。
「この場面、白ではなく赤い服の方が良かったな」と思ったら、その人だけ赤い服で撮り直して差し替えることが出来ます。
「この二人、配役が逆の方が良かったかも」と思ったら、登場シーンだけ抽出し撮影して差し替えることで別バージョンができます。
実際にロケ地に行くわけではなく、グリーンバック前でまとめ撮り出来るので、労力・コストは最低限で済みます。
「あと2週間後だったら、背景の山が紅葉で綺麗だったな」と思ったら、同じ構図で背景だけ撮影し直して差し替えられます。
台本で『夕焼けの浜辺』と書いても、運よく撮影当日に夕焼けが出てくれるのはまれですが、人物の撮影後、理想的な夕焼けの背景撮影に何度もトライして、最良の映像を背景として使うことで理想に近付けます。
「全編合成映像で映画を作るなんて邪道だよ」と批判する人も多いんですが、邪道かどうかなどはどうでもよくて、イメージを優先して推敲を重ねられるのが、「升田式スーパープリヴィズ法」を活用するメリットです。
特に「升田式スーパープリヴィズ法」では、基本工程として、全ての場面の背景映像を先に撮影して、映像編集まで進めます。
その際、登場人物は人形を合成して、仮のセリフと共に編集します。
その後、出演者をグリーンバック撮影して、人物映像を人形と差し替えていくので、作品がだんだん出来上がっていく工程が、ビジュアルとして見えるわけです。
やってみると分かりますが、途中経過が目に見えると、関係者のモチベーションはぐっと上がります。
趣味の創作は楽しいことが第一ですから、完成までに時間が掛かる映像製作においては、みんなで途中経過を楽しめる事は重要です。
もちろん色々な技術が必要になってくるので、「簡単」とは言いませんが、あとから推敲できると思えば、最短で「撮影」という楽しさを味わうことも私は出来ています。
参考になれば幸いです。
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