スマホで映画を撮るとどうなる?独特のカメラ性質を把握する
創作者にとって素晴らしい時代
まず認識していただきたいのは、私たち映像創作者にとって、現代は理想的な素晴らしい環境が整っている、ということです。
家庭用ビデオカメラの登場によって、映像製作という創作活動は身近になりましたが、それ以前は趣味の映画作りに数百万円掛かっていたことが、数十万円で実現できるとなったものの、機材を揃えたり技術を磨いたりという事を考えると、「映画作りは誰にでも手軽にできる」とは言い難いものでした。
ところが、今はどうでしょう?
ほぼ全ての人が手元にビデオカメラと編集機、それに作品の発表をする上映室まで持っている状態です。
言うまでもなく、スマホです。
昔、ドラえもんのエピソードで、撮影用のカメラがそのまま映写機になる機械が登場して、「そんな荒唐無稽な(笑)」と思ったことを憶えていますが、現実ははるかその先まで来ているわけです。
何が凄いと言って、同じシナリオの映像化をするために
- フィルム撮影の時代は数百万円掛かった
- ビデオテープ時代も数十万円掛かった
という状況から
- スマホ時代は0円でも作れる
という点です。
お金を掛けずに映像が作れる最大のメリットは、安心して失敗できることです。
実際に一番効果的なのは失敗することで得られる経験値なんですが、1日の撮影で何万円分もフィルムを使うとなると、そうそう失敗はしていられませんから、フィルムの節約を優先して綿密な準備をする必要があって、とにかく時間が掛かる上、経験値が上がりません。
それに、創作の大敵・未完成に終わる原因は、「時間を掛け過ぎる」ということですから、そういう意味でも、無料で撮影できるスマホ環境は望ましいんです。
「こっちから撮るのとあっちから撮るのと、どちらが良いのかな?」
と選択肢が出てきたら、時間を掛けて検討するより、両方撮ってしまえばいいからです。
それによって「こういう時はこっちから撮る方が良い」という経験値が積み重なります。
スマホのレンズは特殊なレンズ
「とにかく手軽」という最大のメリットから、私は映画作りのスタートにスマホのカメラを使う事をお勧めします。
ただ、スマホのレンズは少し特殊な映り方をする、ということを知っておく必要があります。
レンズは大まかに分けると
- 広角レンズ
- 標準レンズ
- 望遠レンズ
という種類に分けられます。
基準になるのは「標準レンズ」で、これは私たちが目で見ているイメージに一番近い映像を撮るものだと思ってください。
スマホのレンズは「広角レンズ」なんです。
視野が広いという事ですね。
これによって、友達とツーショットの写真を、自分で手を伸ばした状態で撮影できたりします。
標準レンズで同じ撮り方をしてもせいぜい二人の顔のアップしか撮れません。
視野が狭いからです。
集合写真などを撮る際も、標準レンズのカメラだと5メートル位離れないと全体が入らないのに、スマホだと2メートルくらいしか離れていないのに全員がカメラに収まったりします。
それだけ聞くととても便利なレンズと思われるでしょうが、欠点もあります。
集合写真を撮ると気付かれる通り、広角レンズの映像は歪むんです。
集合写真の中央に映る人は歪みが小さくてあまり気になりませんが、画面の端に映る人はかなり大きく歪んでいるはずです。
逆の言い方をすると、広角レンズは、本来は画面に入らない範囲の映像を、ギュッと歪めることで無理やり画面に納める特徴があるんです。
これをもっと極端にしたのが「魚眼レンズ」というものです。
映像が歪んでますから、建物なども本来真っすぐな柱が、画面の中央から離れたものほど湾曲して映ります。
「広角レンズはこういうものだ」と割り切って使う必要があります。
ただ、映画の中では画面の中に多くの要素が入り込んで、目で見たものとは違う「面白い構図」になるので、あえて広角レンズを好んで使う監督も多いです。
美術的な要素の多い作品には向いているレンズとも言えます。
私も自分の作品の中で、ビデオカメラにアタッチメント式の広角レンズを装着して撮影する他、スマホの映像が向いている場面はスマホで撮影したりもしています。
私のように、あらかじめ絵コンテを作り込んでから撮影するタイプの場合、構図を絵コンテとそっくりになるよう努力しがちですが、特にスマホを使う場合、絵コンテ通りの構図の再現が難しくなることが多いです。
例えば、「手前の人物の背中越しに相手の人物の顔が見える」というような構図を作ろうとすると、「思ったより相手の顔が小さくしか映らない」となりがちです。
スマホを使う場合は、あくまでも絵コンテの再現を優先するのではなく、「ああ、スマホではこう映るのか」と割り切って構図をやや変更して撮影を進めることも有効だと思います。
一つ注意があるとすれば、「デジタルズームは使わない」ということです。
ビデオカメラの「光学ズーム」というのは、光の屈折を応用してアップ映像を撮影するので、画質は落ちないのですが、スマホの「デジタルズーム」は疑似的なズームです。
5倍に拡大すると、画質は1/5に落ちてるんです。
しかもズームアップしながらの撮影は、大抵の場合、「見づらい映像」になります。
「画質が落ちるデジタルズームを使ってでも、想定した映像にしたい」という場合、撮影時はズームアップにせず、編集時に拡大する加工をした方が失敗が少なくなると思います。
結果的に同じ映像になります。
撮影に対する知識が増えると、「どうせなら性能の良いカメラを使って素晴らしい作品を撮りたい」と思いがちですが、経験を積まずに知識だけ増えても、良いことはありません。
「どうせやるなら」と高望みする人は、結局やらないんです。
今持っている、スマホの環境で、まずは映画作りを始めることが正解だと思いますよ。
参考になれば幸いです。
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