あえてパロディーから始めるという選択・ベタドラマで得られる学びと満足感

「どうせ作るなら」という高望みが時間を食いつぶす

創作関係の講座やワークショップを開くと「創作をしてみたい」という人が集まってきます。

そして、いろいろ質問が出ます。

例えば、映画を作ろうというようなワークショップの場合、一番多いのは

「どういう機材を使えばいいんですか?」

「カメラは何を使えばいいんですか?」

という質問です。

こちらの答えというのも

「とりあえず何でもいいです」

といつも決まっています。

 

映画を作るんだから、一眼レフを買ってその動画機能で撮らなきゃいけないなんてことはないし、家庭で眠っているハンディーカムがあればそれでも十分だし、スマホを使って始めるというのもいいんです。

 

とにかく何でもいいから始めてみて、そこから「こういう映像が撮りたいんだけれどもスマホじゃうまく撮れない。どうすればいいだろうか」という次の質問が来れば、いろいろとアドバイスはあるんですけれども、まだ何もやっていないのに、いろいろと疑問は湧くんでしょうね。

 

これはなぜかというのを考えると、失敗を極端に恐れている人が多いようです。

最短コースで創作物を完成させたいために、事前にあれこれ聞いて無駄なく行動したい。

これがどうも動機になっているようです。

ただ、実際問題として、初めて何かに取り組むときに全く失敗をせずにストレートに作業を完了させることは不可能なんですよ。

一回も転ばずにスキーが滑れるようになりたいと言っているのと同じなんですね。

スポーツとか創作はむしろ、失敗した方が理解が早いんです。

「こういうことやってはいけませんよ」

「こうした方がいいですよ」

といくらアドバイスしても、失敗したことが無いとピンと来ないはずなんです。

ですから、失敗は必要悪だと思って、無理に避けようとしないことが大事じゃないかなと思います。

 

また、失敗したくない事にも繋がりますが、「高望み」が無駄なんです。

もちろん作るからには良いものをつくりたいというのは、当たり前の感覚ですが、経験が浅いうちは高望みしてもあんまりいいことがないんです。

勉強熱心な人というのは、いろいろ本を読んだりとか調べたりして、事前にどんどん知識を貯めていきます。

すると、なんだか出来るような気になってしまいますが、実際はうまく出来ないんです。

失敗とセットで体験してやっと出来るようになるからです。

ストーリー系の創作には異なる2つの技術が必要

ストーリー系の創作の場合、「まず体験しましょう」ということがしにくい要素があります。

それは、全く違う種類の2つの技術が必要で、「体験したい事」の前に「準備しなければいけない事」が存在するからです。

 

創作の趣味の中でも、例えば絵画には「絵を描く」という技術だけしか要素がありません。

目の前にミカンを置くだけで、いきなり描く練習ができます。

 

それに対して、ストーリー系の創作には

  • ストーリーを考える技術
  • ストーリーを形にする技術

という2つの要素があって、題材になるストーリーを作らないと「形にする技術」の練習ができません。

 

映画であれば、撮影や編集の技術です。

大抵の人はここを楽しみたいわけで、下準備のためのストーリー作りが大変すぎるわけです。

必要な失敗を効率的に体験するためのベタドラマ

そこでお勧めするのが「パロディー・ベタドラマを撮ろう」ということです。

ベタドラマというのは、よくある定番のジャンルのドラマを最大公約数的にデフォルメしたものです。

バラエティー番組の中でよく作られるので見たことがあると思います。

 

ベタドラマのシナリオは、サスペンスドラマとか刑事ドラマをパロディーにして、「よくあるパターン」をデフォルメして極端な形にしてまとめると良いでしょう。

ドラマのトリックやアリバイ崩しなどは子供だましの内容で充分です。

全然つじつまが合っていなくても構いません。

 

そのシナリオを元に映像を設計して作品を完成させましょう。

内容的にはたわいのないもので、何のメッセージ性もないでしょう。

ただ、映像制作の技術的な練習としては過不足ない良い題材になります。

 

このベタドラマのもう一つ大きなメリットというのは、作り手が内容に全く思い入れを持ってないことなんです。

思い入れが無いから、気軽に撮って、気軽に失敗できる。

それによって必要な体験を重ねられるんですね。

そういう意味で、パロディーのベタドラマはとても有効だと思います。

権利の問題に注意

注意しなければいけないことが一つあるとすれば、権利の問題です。

内容にもよりますが、パロディー作品は著作権をはじめとする権利を侵害してしまう可能性があります。

ただ、勘違いしなくていいことは、権利を侵害した映画を作っちゃいけないわけじゃないんです。

自分たちで練習として作って、それを自分たちが見ているだけであれば、別にこれは違反ではないんですね。

これをSNSなどで発信した瞬間に法律違反になるわけです。

 

例えば、非常に権利関係にうるさいディズニーのディズニーキャラクターを、自分できれいに絵に描いて、自分の部屋に飾っておく分には何も違反をしていないし、文句を言われる筋合いはないんです。

これを外に発表したり、販売したりすると、重大な法律違反になるということです。

 

だから、ベタドラマの内容にもよりますが、完成品はYouTubeやSNSにアップしたりとかせずに、自分たちのスマホの中だけで見る状態にした方が無難だとは思います。

参考になれば幸いです。

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