映画の製作費はいくらに設定するべきなのか

安易に資金調達はしない

趣味として映画作りをオススメすると、真っ先に聞かれることは「どれくらいお金が掛かるんですか?」というものです。

分かりやすく2つに分けますが、物を作るときに掛かるお金には

  • 材料費
  • 人件費

があります。

 

よく、ハンドメイドの作品を販売したときに、「それ、材料費は1000円くらいですよね?商品が1万円って高すぎませんか?」と値切る人がいます。

この人は「人件費」という概念がすっぽり抜けているんです。

例えば時給1000円と換算して、9時間かけて作った作品に材料費10000円を足したら、商品として1万円で販売するのは最低ラインと分かりますよね?

 

何が言いたいかというと、「映画作りにいくら掛かるか」という場合、商業作品として、関わった人にそれなりの人件費を払うかどうかで、答えが全く変わってくるんです。

 

映画作りにおける「材料費」は時代と共に激減しています。

例えば、16mmフィルムで撮影していた時代はフィルム代と現像代で200万円掛かっていた作品。

同じ内容の作品でも8mmフィルムで撮れば20万円で済みますし、ビデオテープ撮影では1万円しか使いませんでした。

今では、撮影に消耗品は使いませんから、撮影機材さえ揃っていれば、撮影に掛かるのは0円とも言えます。

私が、「趣味の映画作りにお金は掛かりませんよ」というのはこのことです。

 

人件費をお金と考えたら、もちろん時間や個人の技術力に応じた人件費は膨大に掛かっていきます。

 

例えば、失敗なくレベルの高い撮影をしたい場合に、フリーランスのカメラマンを雇って撮ってもらうことは出来ます。

1日5万円だとして、10回の撮影で50万円。

役者も演技力がある人を使いたいという事で、雇うことももちろん可能です。

無名の役者であれば、1日2万円くらいで出演してくれるかもしれません。

人数が3人で、撮影回数が10回であれば、60万円。

同様に、専門スタッフも、映画撮影の教科書に書いてある通りに集めて、それぞれ人件費を払っていくとすると、ちょっと趣味の範疇には収まらない金額になっていきます。

 

そこまで考えて、「資金調達」に動き出す人がいます。

クラウドファンディングや、各種の助成金によって、資金を集めることは出来るかもしれません。

でも、私は映画製作の初心者が安易に他人から資金を集めることには反対なんです。

クラウドファンディングはともかく、助成金は他人の納めた税金ですからね。

そんなお金を使って責任を取れるのか?という話です。

身分相応のスケールで創作を繰り返す

結論を言うと、フィルム代などの材料費が掛からない現在、製作費はゼロから始めましょう。

スタッフや出演者に適切な指示を出せない人が、プロを集めてもまったく使いこなすことはできません。

これは、「良いカメラさえ買えば、素晴らしい写真が撮れる」という勘違いと同様です。

 

とくにアマチュアの場合は、「しっかりと完成させられる」というレベルになるまで、実作業の経験が必須なんです。

ですから私は、少なくとも最初の5作くらいまでは、高い人件費が発生しない「仲間内」だけで映画製作をするべきだと思うんです。

 

まずは、役者もスタッフも未経験のアマチュアである友人だけで揃えて、普段遊びの延長で映画作りを始めることがオススメです。

当然、技術的には拙いものにしかなりませんが、それでもしっかりと計画して行動すれば、それなりの作品には仕上がります。

手持ちの機材を使うため、材料費はゼロ。

人件費もせいぜい付き合ってくれた仲間の食事代を出す程度で済むはずです。

その仲間すらいないのであれば、まずは一人で完成させられる作品を企画すべきです。

(そういう一人企画にも、別の魅力があります)

 

映画作りをしていくと、常に「次はこういう作品を作りたい」というアイデアも湧いてくるでしょうから、撮影規模や難易度も、身の丈にあったものから徐々にレベルアップさせたものにしていった方がいいでしょう。

次に繋げる活動をゴール地点と考える

これは私なども大いに反省が必要ですが、趣味の映画作りにおいて、個々の作品の「完成」をゴールにしてしまいがちなんですが、これではダメなんです。

映画は「人に見られて完成する」と考えて、「完成品を多くの人の目に触れさせる」という企画まで込みで考えないと、その先の楽しい活動に続かないんですね。

プロデューサー・監督は、作品が完成さえすればある程度の満足感は得られますが、手伝ってくれた人たちにも、自分たちの関わった映像を見て感心したり楽しんだりしている人を見せてあげる必要があるんです。

それによって、次回作へのモチベーションが高まることになります。

 

具体的には、まず、上映会があります。

上映設備がある会場を借りて、上映会という名の食事会などを企画して、関係者や興味を持った知り合いたちを集められれば最高です。

新しい協力者や競争相手もここで見つかる可能性があります。

 

中には「DVDを買いたい」という人もいますから、販売用のDVDを用意して、ルールを決めておくことも大切です。

例えば、「DVDを売ってくれた人には利益の半分を振り込みます」というようにすると、積極的に紹介してくれる人には報酬として還元できることになります。

 

「趣味でお金儲けしたくない」という感覚が強い人は多いと思いますが、作品を観て欲しければ売るのが一番です。

私も過去には無料で作品のDVDをよく配っていましたが、無料のものは驚くほど見られません。

配った相手には会うたびに「ごめん。忙しくてまだ見てないんだ」とよく言われました。

一方で、買ってくれた人はわざわざ感想を送ってくれたり、知り合いにも見せてくれたりということもありました。

 

もし、作品完成後、何らかの形で多少でも収入が生じたら、それを踏まえて次の作品では製作費を上げて行く、という具合に、実力や実績に応じて製作費を設定していくのが現実的だと思います。

参考になれば幸いです。

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