生成AIの実用的活用法・長い歩行ショットを作る

プレミアプロ・ベータ版のAI機能の活用(2024年現在)

2024年は普段の生活の中でAIが本格的に活用され始めた年と言えるでしょう。

 

AIがやっている事は実はシンプルで、「こういう場合どうするべきか」という行動パターンを無数に学習して、単に人が求めがちな答えを提示してるだけだと言います。

一見、魔法のように見えますが、単純なものなんです。

 

「AIの進歩は喜ぶべきなのか?」というような大げさなことではなくて、一つの新しい道具に過ぎないと割り切って、使いこなしてはどうかなと私は思います。

 

元々、画像編集ソフトの「フォトショップ」を使って、背景から消したいものを無くして、消した後の景色をAIで綺麗に生成する機能は便利な機能として、私も普段から使っていますが、ここへきて、動画作成にAIが使えるようになってきたんです。

 

今回紹介するのは、プロンプトと呼ばれる指示の文章を元に、AIがゼロから映像を作り出す、というようなものではなく、自分で撮影した映像の加工としてAIを活用する事例です。

それは、存在していない「動画の続き」を生成するという機能です。

これは現在、アドビ社の動画編集ソフト「プレミアプロ(ベータ版)」で使うことが出来ます。

 

他のAI機能と同様、実際に存在する動画の内容をソフトが解析し、「こんな感じで続いていると自然」というパターンを映像にしてくれます。

 

この活用例として、インタビューの終わりなどを1秒間のフェードアウトでまとめたいのに、話者が話し終わってすぐに表情を変えてしまったり、別の話を始めてしまっていたりしている部分の加工が考えられます。

こういう映像をそのままフェードアウトすると、話が終わって画面が暗くなりながら話者の次の動きが見えてしまうので不自然になってしまうんです。

 

生成AIを使った加工としては、話が終わった時点で動画をカットし、「その続き」を生成します。

この操作は以前からあった、「BGMの時間を調節する」のと同じように、生成用のツールを選択した状態で、動画の端を引っ張って伸ばすだけです。

最大で2秒間、存在しないはずの「続きの映像」が生成されます。

続きの映像は、当たり障りのない「間(ま)」になるので、生成AIの使用が許可される場合は、インタビュー終わりのフェードアウト分などに最適です。

グリーンバックを使った小規模撮影の実態と弱点

私はこの機能を使うことで、グリーンバック撮影の弱点の一つを補えると考えます。

まずは、グリーンバック撮影に関して簡単に説明してみます。

 

グリーンバック撮影の大きな利点の一つは、人物撮影を比較的狭い場所でも行えることです。

もちろん、グリーンバック撮影も広いスペースを使えた方が制約が少なくて、より多くの種類の映像が作れますが、その条件を揃えようとすると、せっかくの小規模撮影で済むというメリットが小さくなってしまうんです。

 

例えば私が最も多くセットするグリーンバックのパターンとしては、3メートル x 3メートルのグリーンバックシートをスタンドに立てかけるものです。

高さ2メートル、幅3メートルの緑色の背景を作りその前に立った人物を撮影します。

奥行きは出来るだけ確保したいところですが、大抵は5メートル前後離れたところにカメラを設置します。

 

このセッティングでも、人物が歩かない限りは、ほぼ問題なく必要な撮影が出来ます。

人物を縮小してクロマキー合成すれば、だだっ広い砂漠にぽつんと立っているショットも作れます。

まさか、小さな会議室の中で撮影した映像とは想像もつかない構図の映像にもなるんです。

このように、グリーンバック撮影の最大のメリットは「狭い場所でもほとんどの撮影が出来る」という点です。

 

ただ、「狭い場所でのグリーンバック撮影」で最も再現が困難なのが「歩行ショット」なんです。

通常は、この3メートルのグリーンバックの幅の範囲内しか歩くことができません。

実際に撮影してみると分かるんですが、映像として使えるのは3歩か4歩くらいです。

 

私はいつもグリーンバックでの歩行ショットは

  • 3歩ほど横切る歩き
  • 歩いている正面からの上半身(実際は歩かず膝を使って上下に体を揺らす)
  • 歩いている人物視点の映像

などを組み合わせることで、3歩より長く歩いている状況を作っています。

 

でも、生成AIの機能を上手く使うことで、3歩以上の歩行ショットが作れそうなんです。

歩行シーンをAIで増幅させるアイデア

まずは、いつものようにグリーンバックシートの前を横切る形で歩いているのを撮影します。

人物の体がシートからはみ出て見える部分は使えないので、体がすっぽりとグリーンバックシートに収まっている範囲だけ切り抜きます。

これが恐らく、3、4歩なんです。

この映像を画面上で例えば50%のサイズに縮小します。

周りに黒い余白が出ますから、ここにグリーンバックシートと同じ色の背景をはめ込んで、一旦動画書き出しします。

そうすると、グリーンの背景の前、画面の中央付近で3,4歩あるいている人物映像が準備できます。

 

この映像に対して、映像の続きをAIで生成するんです。

すると、2秒間、人物は同じペースで歩く映像が追加されます。

撮影時にあったグリーンバックシートの幅をはみ出しながら人物が歩き続けるんです。

歩行という規則的な動きの繰り返しなので、とても自然に動作が作られます。

また、AIによる生成は、既にある動画の「後」だけでなく「前」にも施せますから、映像の前も2秒間生成できます。

 

すると、実際には3~4歩あるいた映像しか撮影していないのに、前後の動きが足されて、10歩程度歩いた一連のグリーンバック映像が作られるはずです。

これは、実際に撮影しようと思ったら幅10メートル以上のグリーンバックシートと撮影場所が必要です。

さらに細かく言うと、グリーンバックがムラにならないような照明を作る必要があるんですが、これは幅が10メートルもあると、かなり難しいことになるところが、実際の撮影は3メートル分しかしていないので、照明も楽と考えられます。

 

「そうまでしてグリーンバックで10歩あるいた映像が必要なのか?」

「実際に現地で歩いているところを撮影すれば済むじゃないか」

と思われる方が大半かもしれません。

既に私の話をいつも聞いてくださっている方には「またか」と思われるでしょうが、私はこの10歩あるいたショットを、合成映像で作ることが大事だと考えます。


例えば「砂漠の真ん中をトボトボ歩く人」という設定の場面。

まず、現地で実際に歩きながら撮るのは無理なんです。

物理的には可能ですが、割に合わないので現実的ではないという意味です。

でも、

  • 砂漠の風景
  • 人物の顔のアップ

の組み合わせだけでは、観客は、その人が砂漠にいると思いたくても想像しにくいので無意識レベルでストレスが溜まっていくんです。

 

10歩あるいたショットを作れるとすると、たっぶり5秒程度の「引き」の映像が見せられるので、その印象を加味することで、「砂漠を歩いている」という錯覚を強くすることを手伝えるんですね。

 

AIで前後の歩行を追加する実験をしてみると、唯一、不自然になりがちなのは人物の顔です。

どうしても段々と別人の顔に変化してしまうようです。

しかも、AdobeのAIで使われる人物のデータの大半は西洋人のようで、若干外国人風の顔に寄っていくようです。

ただ、これも5秒間の映像が「引きの映像」であれば、被写体の顔自体が小さくしか見えませんから、全く気にならないでしょう。

 

今後も続々とAI機能は拡充されていくと思われます。

面白いおもちゃとして使って楽しむ人もいるでしょう。

生成AI自体に嫌悪感を抱く人もいるでしょう。

 

私は生成AI全般を「便利な道具の一つ」として活用できるようにしていきたいと考えています。

 

参考になれば幸いです。

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