422_オーディオドラマを作ってみて分かること・「時間」を持つストーリー作り
映画制作の課題
私は1990年頃から個人で映画制作を行っています。
最近では「DIY映画倶楽部」を立ち上げて、より多くの人と映画制作を楽しめる環境を作ろうとしています。
その中で、オーディオドラマの制作が「映画」と「小説」の中間的な魅力を持つことに気づきました。
小説は基本的に一人で執筆して作業を完結出来ます。
短い作品であれば数日から数週間で仕上げることも出来るかもしれません。
ですから、「ちょっと思いついたアイデア」を作品にすることもしやすいのですが、映画はそうはいきません。
映画を制作するには、脚本の執筆、撮影、編集、音響など多くの工程が必要です。
そのため、単なるアイデアから完成までに何ヶ月、場合によっては何年もかかることがあります。
その間に「本当にこのアイデアで映画を作る価値があるのか?」という疑念が生じてしまっては完成までこぎつけられない可能性が高まるので、「この作品は面白いに違いない」と確信を持てる企画を選びたいわけです。
でも、作品を完成させる経験を重ねないと、判断力や技術が身に付きません。
このジレンマを解決するのに、「オーディオドラマ」が適していると思うわけです。
小説と映画の中間としてのオーディオドラマ
「小説」や「コミック」は読者が自分のペースで読み進めることが出来ます。
つまり、鑑賞するときに「時間」を強制されないストーリー創作です。
それに対して、「映画」は時間を視聴者に強制するメディアであり、制作者が構成した時間軸で物語が進行します。
その中で、
・間延びしないように
・せわしなくならないように
というような、「時間」のコントロールをする必要があり、そこがまた、創作時の面白いところでもあります。
「オーディオドラマ」も映画と同じく「時間」を制御する必要があるため、オーディオドラマ制作をすることで、映画制作の感覚も養われると思います。
実際のところ、オーディオドラマと映画の製作は良く似ています。
その上、オーディオドラマは「音」だけが材料ですから、製作が手軽なんです。
人によるセリフの録音やナレーションの録音は、作品の長さにもよりますが、正味1日あれば大体終わるのではないでしょうか?
その他に「効果音」を録音したり、フリー素材の音を集めたり、という作業も、やはり正味1日で完了すると思います。
実際は、例えば「駅のホーム」というシーンのために、通勤時にスマホで録音するなど、日常生活の中で収録作業は進められます。
映画の撮影と同様、良く分からないうちから機材にこだわるのはナンセンスです。
まずはスマホなど、手持ちの機材で出来ることから始めることが大事です。
何事もそうですが、創作活動で大事なのは、作品を完成させることです。
完成させて初めて課題が見えてきて、一作ごとに品質が上がっていくことになります。
映画制作は完成までに時間が掛かります。
数か月から数年かかることはざらです。
そのため、失敗からの学びを次回作に活かすのに時間が掛かってしまうんです。
しかし、オーディオドラマなら1週間程度で完成するため、改善のサイクルが速いんです。
次の作品で質を向上させることが容易になります。
これも、ストーリー創作としてオーディオドラマをお勧めする理由です。
脚本の工夫が重要
小説を元に音声化するというと、「朗読」があります。
朗読で良いのであれば、脚本は不要ですが、これは
・読む技術
・声の魅力
という要素しかありませんから、他に工夫のしようが無いんです。
そして、その技術や魅力頼みになってしまいます。
私は、小説の朗読を聞くのも好きですが、技術的に未熟なアマチュアはむしろ、オーディオドラマとして作り込んだ方が、聞きやすいコンテンツになると思います。
つまり、小説を脚本化する必要があるわけです。
私が実際に「青空文庫」にあるような古い小説を元にオーディオドラマを作る際に特に感じたことは、小説の「地の文」のところをかなりの割合で
・セリフ
・情景音
に変換する必要があるという事です。
そうでないと、ナレーションやモノローグの比率が大きくなり、ほとんど朗読と変わらなくなってしまいます。
高い技術がないアマチュアには厳しい状況になり、観客が聞きづらい作品になりがちだと思うんです。
特に古い小説では、会話を増やして、ナレーションやモノローグを減らす意識が必要です。
脚本化はまず、映画用の脚本にするところから始めれば良いでしょう。
映画用の脚本完成後、それを音声用の脚本に変換します。
具体的には、映画では映像で見せれば一目瞭然の部分を、まず、効果音で表現できないか考えます。
ある程度、音で表現しつつ、補足になるようなセリフで、状況が分かるようにします。
ただ、これにも限界があるので、最低限の説明をナレーションで済ませる、という形にします。
あまりにも説明セリフになると滑稽になってしまいますが、状況は優先順位として、
・効果音
・セリフ
・ナレーション
の順で表現します。
オーディオドラマ製作の大きなメリットの一つは、映像作品よりも容易に「共同作業」が実現することです。
各自が自宅でセリフを読み上げたものを集めたり、効果音として録音した音を共有したりしやすいので、映画撮影のように全員の都合が合う日を設定して、一緒に収録しなくても作業が進むことが特徴です。
ネックになるのは「編集作業」だと思います。
これは基本的にパソコンの映像編集ソフトなどを使って行うことになりますが、この作業が上手く出来ないという人も多いでしょう。
そんな人は、仲間を確保してください。
編集作業はそれ自体が面白いので、好きな人、得意な人も多いんです。
そんな人を仲間にすれば、少なくともオーディオドラマは比較的簡易に、量産も出来ると思います。
そしてこれは、映画制作に必要なスキルの練習としてもとても有効です。
技術的にも感覚的にも共通することが多いからです。
是非、物語を音声化する「オーディオドラマ作り」に挑戦してみてはいかがでしょうか?
私が製作したオーディオドラマは、後日、ご紹介するので是非お聞きください。
参考になれば幸いです。
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