特撮映画としての「ロスト・ワールド」
古典の名作映画「ロスト・ワールド」。
原作は、シャーロック・ホームズで有名なコナン・ドイルが1912年に発表した小説です。
この「ロスト・ワールド」、ハリー・ホイトという監督が1925年に映画化しています。
エポックメイキングな作品であるうえ、パブリックドメインになっているので、インターネット上で探すと全編をみることが出来ます。
ストップモーションという技術を使って恐竜を動かしている作品は、それまでもあったんですが、ここまで本格的に見せ場として映画の中で使われたのはほぼ初めての試みで、この大成功によって、のちに「特撮映画」というジャンル、「モンスター映画」というジャンルも確立しました。
1925年の映画ですからサイレントです。
ところで、恐竜の復元図というのは、時代によって結構変わっているんです。
このロストワールドという映画に登場する恐竜のデザインは、当時、復元作家として非常に有名だった、チャールズ・ナイトという人と、ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズという人たちのイメージで復元されてると言われています。
特にホーキンズという人の復元図は、ディズニーアニメに出てくるような、恐竜の群れが踊りながら行進するようなイメージの、不思議な魅力がある復元なんです。
恐竜たちは、今の復元図に比べてみんな直立して立って歩いています。
顔の表情も非常に豊かで、長い尻尾がくねくねと伸びているような特徴が共通しています。
今見ると不自然な部分はたくさんあるんですけれども、当時の古生物の知識を盛り込んで描いた復元図です。
当時考えられていたリアルな恐竜像が分かるという意味でも、この映画は非常に興味深いものがあります。
この特撮映像の描写については、その後のクリーチャー映画の原型が全て含まれています。
特撮を担当しているのは、ウイリス・オブライエンという人です。
オブライエンは、まさにこの「ロスト・ワールド(失われた世界)」という小説を読んで、恐竜に興味を持って、その後、自分で映画を作るようになった時にも、恐竜の題材を何度も使っています。
ハリー・ホイトという監督が映画化する時に、特撮担当者として抜擢されるんですが、恐竜好きならではの描写がたくさん盛り込まれています。
特に感心するのは、よく見ると恐竜が呼吸をしているんです。
胸が膨らんだり縮んだりという動きをして、生き物としての描写が非常に丁寧にされているんです。
これをストップモーションで表現するのは、かなりレベルの高い発想だし構造的にも複雑なんじゃないかなという風に思います。
これはオブライエン唯一の弟子である、レイ・ハリーハウゼン、この人は「特撮の神様」と言われている人ですが、この人もシンドバッドシリーズを始め、いろんな映画の中で怪物に呼吸をさせている「ストップモーションの達人」です。
恐らくこの発想や技術はオブライエンから学んだんじゃないかと思います。
その原型がすでに、この「ロスト・ワールド」の中で表現されていて、のちにハリーハウゼンがオブライエンの手法をさらに発展させて、より洗練された恐竜の動きを表現しています。
さらに「ロスト・ワールド」ならではの描写がいくつかあります。
その中の1つは恐竜の「群れの描写」です。
恐竜が1対1で戦う映像は、その後の映画でもよく見られますが、恐竜の群れが出てくるストップモーション映像は極端に少ないんです。
ストップモーションは基本的には1人で作業することになります。
1人でいくつもの恐竜の動きを全部覚えながら、1コマ1コマ撮影するこの作業が大変すぎて、継承されなかったんじゃないかという風に想像します。
第一のクライマックスで恐竜世界が火山の噴火によって壊滅するという描写があります。
これは原作小説にはない映画ならではの場面です。
火山噴火の災害の中をたくさんの恐竜が走って逃げているという場面が出てきます。
今のCG映像ではよく見る映像ですが、ストップモーションで表現していて、これが結構生々しいんです。
とてもリアルに見えます。
火山が一段落した後、たくさんの肉食恐竜が獲物を一斉にむさぼっているというような映像もちょっと出てくるんですが、本当に野生動物の記録映像を見ているような感じです。
それを恐竜のストップモーションで表現している事自体、珍しい映像で、これだけでもちょっと見所だと思うんです。
私はこの映画を何度も見ているんですが、特撮場面は恐らく初めの方から後ろに向かって「順番に撮影したんだろうな」とは想像できました。
理由は最初の方のストップモーションは動きがぎこちなくて、映画が進むにつれてだんだんと動きが滑らかになっているからです。
調べてみると、オブライエンはこの特撮シーンを、7年がかりで撮影してるんです。
その間にどんどん自分の技術レベルが上がって、おそらく新しいアイデアも採用してるんでしょう。
「ロスト・ワールド」という映画は、特撮の歴史の中で重要な位置付けにある作品ですが、1つの映画の中で特撮マンの進化も感じられる、興味深い作品でもあるわけです。
メインはストップモーション特撮ですが、よく見ると「フィルムの多重露光による合成」の技術もなかなか高いんです。
川岸を歩く恐竜のショットなど、合成の境目が全く分からない状態ですし、特に後半は、コマ撮りで動いている恐竜の映像に、煙や炎を合成することで、ミニチュア感を上手く隠したリアルな映像になっています。
映画ならではの脚色として、原作ではロンドンに連れ帰るのは小さな翼手竜だったのに対し、映画では巨大な恐竜に変更しています。
その巨大な恐竜が街の中で大暴れするのが映画のクライマックスです。
これは、のちにやはりオブライエンが特撮を担当して大ヒットする「キング・コング」にそのまま引き継がれたパターンで、モンスターパニック物の定番の展開ですが、このパターンも「ロスト・ワールド」で確立したと言って良いでしょう。
現在では、同じような場面はCGで作られるのが一般的ですが、何故だか分かりませんが、CGは「飽きが早い映像」と感じます。
その「飽き」を防ぐためだと思うのですが、CGのモンスター映像は「スピード感」を年々、エスカレートさせている気がします。
その結果、どれもこれも同じように、カメラワークの早さと短いショットの組み合わせで刺激を増やそうとした、よく似た映像になっているのではないでしょうか。
CG映像にはなくて古いストップモーションのような特撮映像にある魅力は何なのか、私にも分からないんですが、単なる懐古趣味ではないと思います。
職人技が感じられるからかもしれません。
この100年前の特撮映画、興味を持っていただけたら是非見ていただきたいと思います。
参考になれば幸いです。
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