431_避けるべきは「テンポの悪さ」
最近私はアマゾンプライムで見放題の映画を見ることが多いんです。
無作為にタイトルやストーリーから「面白そうだな」と思った作品を次々とウォッチリストに入れて、時間ができたらそれを見ると。
そうすると、立て続けにハズレを引くというか、最後まで見ていられないものが続いたんです。
それらに共通するのは何かと思うと、とにかくテンポが悪くて我慢できないのが理由でした。
私は昔からテレビで放送されている映画を一番よく観ていました。
テレビで放送する作品はテンポが悪いものはないんです。
テンポが悪くてチャンネルを変えられてしまったら、肝心の広告を見てもらえませんから、商売にならないんです。
今は、いろんな種類の作品をネットで見られるので玉石混交です。
アカデミー賞を取るような作品も並んでいれば、レンタルビデオ屋に並んでいても誰も借りないような、そういうマイナーで実際見てもあんまり面白くないっていう作品も並んでいるわけです。
その多様性が魅力なんですけれども、端的に言ってハズレが多いということも言えます。
いろんな作品があります。
演技が下手だとか、話自体が面白くないとか、よくわからないとか。
ストレスが溜まって観ていられない理由は、私の場合、「うるさい、やかましい」というのが一番なんですが、次に来るのが「テンポの悪さ」だということを最近強く感じます。
映像的な編集で改善できそうなテンポの悪さもあるし、物語の展開が遅くてイライラしてしまうこともあります。
古い作品と新しい作品を比べてみると、新しい作品の方が明らかにテンポは早いんです。
現代人の方が忙しいですから、どんどん展開しないと退屈してしまうからでしょう。
でも、例えば先日もマリリン・モンローのコメディ作品を観ましたが、昔ながらののんびりした場面もあるんですが、面白くて「テンポが悪い」という感覚を持たずに楽しめました。
私も真似事ですけれども、映画を普段作っているので、自分で撮影をして編集するということがよくあります。
最近では昔作った作品を編集し直しているんですが、その際に感じるのはやっぱり「テンポが悪いな」ということなんです。
古い作品についてはもう撮影しちゃってますから、今から芝居を変えることはできないし、物語のテンポを良くするためにばっさりとシーンをカットして伝えるよりも、「この当時はこれがいいと思ってたんだよね」という記録として、できるだけ昔設計した通りに映像を再現すると作業をしています。
でも、これから新しい作品を作る時には、なるべくテンポが悪いのは避けたいですよね。
どうすればいいかということをちょっと考えてみました。
テンポが悪くなる原因はいくつかあるんです。
一つは「芝居が遅い・間が長い」
これは役者さんのせいではなくて、監督が「もうちょっと短くしてください」と指示すれば防げます。
もう一つは「辻褄が合うように映像を構成しようとする」ということです。
例えばマンションの玄関を出る。
エレベーターに乗って下の階に行って、マンションの出口から出るという要素を全部描こうとしてしまうんです。
そのシーンで何を表現するのかを考えると、「エレベーターに乗ってボタンを押す」なんていう場面は要らないわけで、もっと言ったら玄関から出る場面もいらなくて、「マンションの出口から出てきた」というワンショットを撮るだけでOKなわけです。
これはもちろんその場面によりますが、「省略」が必要なんです。
その省略の方法を私のようなアマチュアは知らないわけです。
それでテンポが悪くなるということが多いんです。
テンポを良くする工夫はこの逆になります。
芝居の間を短くすることは有効です。
OKだけど、ちょっと芝居が長いなと思ったら「時間を半分に縮めた演技もしてみてください」というような形で、短いバージョンの演技もしてもらうことが有効かなとは思います。
それから時間経過を示す時に、私たち素人はついつい無駄な表現をしてしまうんですが、いいアイデアを使えば、本当にワンショット1秒で「時間が経った」ということは自然に表現できるわけです。
よくあるのは、長々と会議をしていて、みんなが疲れ切っていることを表現するために、「灰皿が吸い殻があふれている」というような映像をぽんと入れる表現が、昔の映画によくありました。
「この場面ではどういうことで表現できるかな」いうアイデア出しを楽しむことも有効だと思います。
同様に必要なのは、「省略のアイデア」です。
「この状況を3秒で伝えるためにはどうすればいいだろうか」というような省略。
偉そうに言ってますが、私自身は自分の映像を見直すと、やっぱりテンポが悪いんです。
その時にはいいと思って、「もうちょっと間を取ろう」とか、せわしなくなることが心配で、ついつい念のために映像を詰め込み過ぎてしまってテンポが悪くなりがちです。
テンポがいい作品を作るためにどうすればいいか。
これに有効なのは低予算の映画を作ることだと思うんです。
私が自分の作品を見ても、「テンポが特に悪い作品」と、「そこそこテンポが良い作品」とあるんです。
非常に長い時間をかけて丁寧に丁寧に撮影した作品は、テンポが悪い傾向にあるんです。
一つのショットを撮るために20回くらいやり直しをして、「もうちょっとこう」という微調整を繰り返していることが有効に働いていればいいんですけれども、大抵は悪影響が大きいんです。
一方で、週末の短い時間を使って一気に早撮りした映像は、細かなアラもあるんだけれども、テンポはいいんです。
だから、短時間で撮影をするのは、かなりメリットも多いと実感しています。
実際は、映画の演出の答えは一つじゃないですから、撮影の時に「じっくりと間をとった演技も見てみたいなあ」と迷ったら別バージョンを撮ることにしておけば良いと思います。
編集の時も同様で、「どっちにしようかな」と迷ったら、他方を捨ててしまわずに「別バージョン」を作る感覚で進めていけば作業はスムーズになるはずです。
基本的には私たちのような無名の作家が撮っている映画を人に見てもらおうと思った時、やっぱり優先すべきはテンポの良さです。
つたない話、つたない演技、拙い映像でも、一定の時間をかけて観てもらう事になるんですが、そこに「テンポの悪さ」も入ってしまうと、もうストレスで観てられないんです。
でもテンポが良くて、題材もちょっと面白かったりすると、他の要素がレベルが若干低かったとしても、それなりに楽しめるという可能性が出てきます。
私もアマゾンプライムでわざわざマイナーな作品を観るのは、こういう掘り出し物を見つけたいからだったりします。
この「テンポの良さ」というのは追求してみる価値があると思います。
参考になれば幸いです。
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