428_BGM過多の呪縛から抜け出せ
私は自宅にテレビがありません。
地上波がデジタル放送に変わる時点で処分してしまっていますが、興味を持ったドラマなどはネットのTverで視聴しています。
基本的に大抵のドラマは面白いと思うんですが、最近特に感じるのは「単純にうるさいものが多い」ということです。
コミュニケーションが下手で不安を持っている人は「会話の間を恐れる」そうですが、まさにそんな感じです。
一度「Dr.スランプ」のアニメを配信していたので懐かしくて見たら、その間(ま)の多さ、静かな場面の多さが新鮮でした。
無音の状態で博士の顔に汗が流れて、気まずい間が生じる面白い演出など、最近の作品では見ることがありません。
実写のドラマで感じるうるささは、主に「BGMの使いすぎ」から来ているように思います。
もちろんこれは個人の好みもありますから、悪いとは言い切れないんですが、特に予算をかけて豪華なキャスティングで作られている連続ドラマを見ていて気になるのは、やっぱり「BGMが多すぎる」「BGMが大きすぎる」ということです。
曲が大げさすぎてせっかく面白いドラマの魅力を損ね兼ねないと思うのですが、あなたはどう思いますか?
これは随分前から言われています。
例えば日本の映画をアメリカで上映した時に、「感動的な場面」で大げさに曲が掛かるたびに、観客たちがみんな「何だこれは?」「ギャグなのか?」と笑うんだそうです。
せっかく感動するようなシーンで、芝居を見ていれば感情移入できるのに、大げさな曲を入れてしまったせいでコントのように見えるんですね。
これは作り手ばかりを責めるわけにはいきません。
大多数の「集中力がない視聴者」は
・はい、ここで笑ってください
・ここで感動してください
という分かりやすいガイドを欲しがってるんです。
これを最も手っ取り早く促すのが、BGMの効果なんです。
そこで、「BGMを上手く活用しましょう」という話もできるんですが、今回はあえて「BGMに頼るのをやめませんか?」という話をします。
BGMを使い過ぎだろうというのが、昨今のというか、随分前からの風潮だと思うからです。
私も昔、スピルバーグ監督の「レイダース」などは、「全編に音楽が入っている、なんと贅沢な映画だ」と喜んで観ていたんですけれども、ある時期から「ちょっとこれはやり過ぎなんじゃないかな」と思い始めました。
スピルバーグ監督の映画はジョン・ウィリアムズが音楽を担当していて、「ET」「未知との遭遇」「ジョーズ」とか、その映画の名シーンに合った曲が印象的で素晴らしいんですけれども、私は、ある時期から映画を観ていても、これがバックグラウンドでかかっている曲に思えなくなってきました。
好みにもよるのかもしれませんが、私が最高の映画音楽家と思っている、ジェリー・ゴールドスミスが映像を徹底して引き立てるのとは違って、ジョン・ウィリアムズの曲は「さあ、お待たせしました。ここでジョン・ウィリアムズ節を聞かせますよ」という使い方に感じて、鼻につくんです。
基本的にはテレビドラマも映画の風潮に影響されるでしょう。
全編にわたってかなりはっきりと曲が入ってますから、プラスαでちょっと感情的な盛り上がりを表現しようと思うと、さらに音量を大きくしないとメリハリがつかないわけです。
その繰り返しが、「音楽が多すぎてうるさい」という場面を生んでいるんだろうなと思います。
そんな悪手に思える「BGMの使いすぎ」ですが、映像作品の作り手としては、やっぱりBGMを入れると「様になって見える」という安心感があるんです。
私は最近、過去に作った自分の作品の再編集をよくしています。
理由は、作品の中に市販のCD音源(多くは好きな映画のサントラ)を使ってしまっていて、この状態では公開が出来ないからです。
インターネットでの発信などがなかった時代に趣味で映画を作っていて、完成品を仲間で観て楽しむことしか考えていなかったので、そんな作品がいくつもあるんです。
そのうちの1本、デジタルビデオテープで撮影した作品を、音楽抜きの状態で再編集しています。
アフレコの音源も丁寧に重ね合わせて、最終的に「著作権フリーのBGM」を入れているところなんですが、先にも書いたように「BGMの使いすぎはうるさい」という反省がありますから、できるだけBGMを減らしてみようと試みているわけです。
ところが、BGMを抜いてみると「間延びして見ていられない」という場面がとても多いんです。
これは、撮影から20年以上の時間が経って、良い具合に客観的に観られるようになったから分かる部分も多いんですが、そもそも演出のテンポが悪いことを痛感するんです。
すでに撮影は20年前に終わっていて撮り直しは出来ませんから、テンポを良くするには編集で工夫するしかないわけですが、映像素材の繋がりも考慮する必要があるため、改善にも限界があります。
そこで改めて、次に活かすための反省点をまとめると、
・最初からBGMを想定した演出や撮影はしない
・できるだけBGMに頼らず、観ていられる状態に仕上げる
・最終的にプラスαとしてBGMを足す
という心掛けが必要です。
この反省を活かすと、恐らく、映画の命である「脚本」に対する手の入れ方が変わってきます。
加えて、撮影時の演出も「本当にこのテンポで見せて間が持つか?」という想像力が働くようになるでしょう。
これらは、編集での小手先のごまかしなどとは効果の度合いが違います。
つまり、「BGMに頼らない」という心掛けだけでも、作品のレベルが上がりそうだということです。
現実問題として、「どうしても間が持たないところはBGMでごまかす」という要素も必要です。
所詮はアマチュアの考える脚本だったり演出なので、問題点は多々出てきます。
それでも、作品を人に見せたいとすれば、なんとかストレスなく見てもらうためにあらゆる手を使いましょう。
「BGMの効果に頼る」という手も、最後の手段として使うことにはなるでしょう。
これを安易に使い過ぎず、「最後の手段」とすることで、少しでも面白い作品になるのではないでしょうか。
少なくとも、「つまらない上にBGMがうるさい」という残念な作品にしてしまうことは避けられると思います。
参考になれば幸いです。
DIY映画倶楽部のご案内
創作活動としての映画製作は最高に楽しいものです。
昔はネックだった撮影・編集環境も、現代では簡単に手に入ります。スマホをお持ちの時点で最低限の環境はすでに揃っているとも言えます。
- 趣味がない人。新しい趣味で楽しみたい人
- 自分の創作がしたい人
- 映像作品に出演して目立ちたい人、目立つ必要がある人
にとっては最適の趣味であることに間違いありません。
ただ、実際の映画製作には多くの工程があり、全てのノウハウを一人で身に付けて実践しようとすると大きな労力と長い時間が必要になります。
DIY映画倶楽部は入会費無料の映画作り同好会です。
広い意味でのストーリー映像を作るためのノウハウを共有し、必要であれば技術的な支援もしながら、あなたの創作活動をお手伝いします。
詳しくは以下の案内ページをご確認ください。