AIは裏で使え!・補助ツールでストーリー制作を劇的に効率化
AIの進歩はこの数年、目を見張るものがありますよね。
実際に撮影したとしか思えないようなリアルな映像が作れたりします。
その映像自体はとても魅力的ですし、その映像を手に入れるということが目的であれば、AIに映像を作ってもらえば済んでしまうという面はあると思います。
ただ、創作の世界において、AIに完全に作業が奪われることはないと思うんです。
なぜなら、「創作自体を楽しむ」という目的も含まれているからです。
例えば演技をする面白さ、その演技をしている俳優を撮影する面白さは、それ自体が面白いわけですから、それをAIに置き換えられても魅力はないわけです。
もちろん、観客視点からすると、AIでいいという人もいるかもしれません。
私が思い出すのは、実写に近いようなCG映像が綺麗にできるようになった頃の映画です。
可愛い女の子が画面に出てくるのを見て、そのキャラクターに魅力はあったとしても、冷静に考えると、このキャラクターの仕草とか表情、これはプログラマーが「こういうふうにすると可憐に見えるよね」と考えて作ったプログラムなんだよなと想像してしまうと、途端に魅力は失せたんです。
AIが創作者にとっては敵で忌まわしいものなのかというと、そういう短絡的なことでもないと思うんです。
私はAIは非常に強力なスタッフだと思っています。
例えば、物語を作るときに、私の場合、「こういう場面をやりたい」という要素があるんです。
でも、そのやりたいところだけを形にしても、人に見てもらえる形になりません。
「やりたい場面」を自然な状態で提示するためには、「別にやりたい場面ではないんだけれども、必要な場面」が無数にあるんです。
面白い映画は、必ず「必要な場面」がしっかりと機能しています。
そして「必要な場面を作る」のは地味で時間がかかる作業です。
特にプロではない人たちにとっては、その地味な作業の負担が大きくて、続けられません。
例えば物語でいうと、「つじつま合わせの設定や展開」。
やりたい場面を自然に繋ぐためにどういう設定にすればいいのか、いろいろ考えて試行錯誤が必要です。
ここにAIの力を発揮させると、とても有効だなと思っています。
今回、補助ツールというか、ストーリー制作に非常に有効な方法を教えてくれた人がいるので、それを紹介したいと思います。
私の知り合いにストーリーデザイナーの今井昭彦さんという人がいます。
プロの作家さんたちの相談を受けて、物語作りの方法論を教えたりするような先生なんですが、この今井さんが最近公開してくれたツールがあるんです。
いわゆる「プロンプト」です。
今井さんは物語作りのメソッドを非常に論理的・体系的に教えているんですが、その方法論はご自身のサイトの中で展開しているんです。
そのサイトの中で展開している今井さんの知識とか考え方をAIが理解して、その考え方とか知識にのっとってアドバイスをくれるというツールです。
これに使うのは物語の大もとになる「シノプシス」という文章です。
物語の概要です。
設定だとか、大まかな物語の展開内容、物語の設計図の初期段階のものです。
それを2000文字ぐらいにまとめて、このプロンプトの中に加えて、chat GPTのようなツールに読み込ませると、今井さんのサイトの中の知識を使って、まるで今井さんからアドバイスをもらうような形で答えがもらえるんです。
そのシノプシスの評価だとか、あるいは「ここをもっとこうした方がいいですよ」というような改善のアドバイスが出てきます。
これは非常に面白いツールだと思うんです。
物語を作り始めた、本当に初期の段階で使用するのが有効だと思います。
「AIには抵抗がある」という創作者の人もいるとは思うんですが、どう考えたらいいのかなと思った時に思い出すエピソードがあります。
私の知り合いから聞いた話なんですけれども、その人のお兄さんは俳人なんです。
ある時、弟である私の友人も俳句を一句詠んだと。
それをお兄さんに見せたら、「ここをこうしたら良くなるよ」と直してくれたそうなんですね。
俳句ですから、もともと文章は短いので、直す分量もわずかなことでしょう。
そして、確かにその修正によって非常に魅力的な句になったそうです。
その時に友人は、「これは確かに素晴らしい句になったけど、兄貴の手によって作られたものだから、もう自分の作品という気がしない」と言ったそうなんですね。
これも非常によく分かります。
特に創作をする人は、100%自分の力で作ったものでないと、自分のものじゃないという感覚があります。
他人の手直しが加わると、もうそれは自分のものじゃないよと言う残念な気持ちになってしまうんです。
この時にお兄さんが「いや、それは違う。自分はお前のこの句を見たから修正ができた。知識があるので改善できただけだ。それは元の句があったからのことであって、改善した句も、やっぱり元を書いたお前のものなんだ」と言われたそうです。
AIの使い方もこれに近いんだと思うんです。
「物語を作る根幹のところでAIに手伝ってもらったから、それはもう人間が作ったものじゃない」とはならないと思うんです。
叩き案を自分で作った場合は、もちろんメインの要素は自分のアイデアです。
また、紹介した今井さんの話で言えば、AIによってこのアドバイスはされますが、その大元の知識は、今井さんが書いた文章・理論なわけです。
「これを参照して答えを出してね」と言っている以上、これは無味乾燥なAIの答えではなく、ストーリーデザイナーの今井さんのアドバイス、という考えでいいんじゃないかなと思います。
私も創作活動の構想として、
・大量の原案を作ってストックし
・そこから「これは」というものを脚本化して
・ストックした脚本を元に順次、映像化していこう
と思っていたんですが、大元の「原案をストックする」というところはやっぱり大変で、全然数が揃わないんです。
でも、最近、今井さんがニュースレターで紹介されていたこのAIのツールを活用すれば、「論理的に面白いストーリー」が量産できるかもしれない、と期待しています。
創作に興味がある方は是非一度試してみても面白いかと思います。
以下、今回紹介した今井さんの記事です。
https://pikozo.theletter.jp/posts/8b2a5d10-2017-11f0-a1ef-352b93cf557e?utm_medium=email&utm_source=newsletter&utm_campaign=8b2a5d10-2017-11f0-a1ef-352b93cf557e
参考になれば幸いです。
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