旧作再編集の楽しさと注意点


私は1980年代の終わりから映像作りをしているので、古い作品がいくつもあるんです。
初期の頃は最終マスターはS-VHS版だったので、再生する度にデータが劣化しないDVD版を作ろうということで、再編集をしてたんですけれども、最近は、別の理由で古い作品の再編集をする機会が多いんです。
この理由は明確で、当時は広く人に見せることもあまり意識していなくて、ましてやインターネットも存在してませんから、特にBGMの関係で著作権違反をしている作品が多いわけです。
そういう作品をインターネット上で人に見せる場合は、すべてBGMを著作権フリーのものに差し替えたバージョンが必要になってきます。

 

ところが、古い作品の「BGMだけ」を入れ替えることはできないわけで、BGMを消すと重なっているセリフとか効果音も一緒に消えてしまう。
ですから、音も全体的に入れ直す必要が出てきます。
そうすると「せっかくだから映像も再編集しようか」ということで作業をしています。

 

私は「いつか再編集をするかもしれない」と考えて、撮影素材は捨てずに全部とっておく主義です。
例えば、一番初めに作った「水晶髑髏伝説」という作品の撮影素材は8ミリビデオで40本あります。
それを改めてパソコンに取り込んで、1から再編集するという作業を2025年の今、コツコツと行なっています。

これはやってみると結構楽しいんです。
感覚としては、過去の自分との対話というか、30年以上前に自分の頭で考えた映像があって、その時に良いと思って撮った映像、そして良いと思って選んだ映像があるわけです。
それを30数年経った今、もう一回見直してみると、同じ判断ができるものもあれば、「こっちの映像の方がずっと良い」というような「感覚・価値観の変化」も楽しいんです。
もちろん、そこに写っている当時の仲間たちの姿を見るのも非常に楽しいです。
撮影素材ですから、本番中に真面目な顔をしてセリフを言っている映像の他に、失敗しておどけているような姿も入っていたりして、それを何十年も経ってからもう一回見ているという楽しさ。

 

私がお勧めするのは、まずは、その当時に想定した作品の形でより綺麗な形として残すことです。
当時の技術や機材の性能によって実現できなかった部分があるので、それを当時の自分に代わって再現してあげるということです。
そして、それとは別に、「今の感覚で編集したバージョン」も作る。
当時はいろいろ思い入れもあって、もったいなくてカットできないシーンがたくさんあります。
でも、今見ると、そのシーンはバッサリカットした方が作品としてはレベルが上がるという要素もあるんです。
これを別バージョンとして作ってみるとどうかなと思います。

 

先日、2016年頃に撮影して制作した12分間の短いB級モンスター映画の再編集作業をしました。
この作品は全編グリーンバック撮影をして合成映像で作るという企画だったので、例えば室内シーンはミニチュアセットで、映るものは全部合成しているんです。
特にその場面、見直すたびにアラが気になっていたんですね。
具体的に言うと、保安官がハンターを尋問しているシーンで、保安官が立ち上がって部屋から出ていくショットの時に、保安官が座っているであろう「椅子」の合成を忘れているんですよね。

他にもいくつかそういうミスがあったり、怪物に食いちぎられたワニガメの死骸を見つける場面で、「蠅がたかっている音だけでも被せておけば良かったな」と後から思っていました。

 

もちろん、これは観客にとっては大した問題じゃないです。
そこを直したところで面白さは増さないんですが、見るたびに「機会があったら直したいな」と思っていたんです。

 

それで今回ちょっと時間ができたので、思い切って直そうとしてみたんですが、ここで一つ重大な問題を発見しました。
この2016年に撮ったモンスター映画は、撮影素材の他に編集データも残っていて、数年前にはそのデータを使って別バージョンも作れたので、今回も同様に修正作業が出来ると高をくくっていたんです。
ところが、使っているアドビ社のプレミアプロというソフト、最近は機能がどんどん追加されていることもあって、更新頻度が速いんですよね。
凄いペースでバージョンアップされています。
そうすると古すぎるバージョンのデータは開けなくなるんです。

 

ある程度のバージョン違いであれば、開こうとした時に「これはバージョンが古いです。新しいバージョンに書き換えて開きます」とメッセージがでて変換されるので、今回もそれで対処できると思ったんですが、バージョンが古すぎて開けませんでした。

 

結局、一番新しいバージョンの完成動画データを無理やり加工することになり、軽微な修正の筈が、丸一日かかってしまいました。
(完成作品はYouTubeチャンネル「MVG博物館」で公開中。

そこで感じたのは、再編集する可能性を意識した「データの残し方」です。

 

有効なのが、業者の中では「白」という言い方をする映像なんですけれども、後から再利用することを考えたりして、テロップ無し、BGM無しの、高画質の状態で動画を1つ保存しておきます。
そうすると映像の一部を別の作品に使いたい時など、テロップやBGMが邪魔にならずに使いやすいんですが、当然、再編集の時も活用できます。
セリフをアフレコにしている場合などは、セリフのみの音声データも別に残しておくと便利です。

 

アドビ社製のプレミアプロを使う場合、もし、将来的に編集データを活用したいのであれば、ソフトのバージョンが更新された通知が来るたびに、該当する編集データ(プロジェクトファイル)を開いて、常に新しいバージョンのプロジェクトファイルとして保存しておく必要があります。
ただ、過去の作品全部についてこれを行なうのは現実的ではないと思うので、やはり「白」の動画を作成して保存しておくことをおススメします。

 

参考になれば幸いです。

(ブログ記事一覧)

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Why Revisit Old Work?

I’ve been making films since the late 1980s, so I have a sizable archive of older projects. Back then, my final masters were stored on S-VHS tapes. I began re-editing those works to create DVD versions that wouldn’t degrade with repeated playback.

More recently, however, I’ve found myself re-editing old films for a different reason: copyright compliance. In the early days, I wasn’t thinking about public distribution—especially since the internet didn’t exist yet. As a result, many of my early works contain background music that violates copyright.

To share these films online today, I need to replace all the music with royalty-free alternatives.

Why Replacing Music Isn’t So Simple

You can’t just swap out the background music. It’s often layered with dialogue and sound effects, so removing it means losing everything in that audio track. That forces a full sound redesign—and once you’re doing that, you might as well re-edit the visuals too.

Archiving for the Future

I’ve always believed in keeping all raw footage, just in case I want to revisit a project. For example, my very first film, Legend of the Crystal Skull, was shot on 8mm video across 40 tapes. In 2025, I’m slowly digitizing and re-editing it from scratch.

Surprisingly, it’s a lot of fun. It feels like a conversation with my younger self—revisiting the shots I once chose and seeing how my instincts have evolved. Sometimes I agree with my past decisions; other times, I think, “This shot is way better than the one I used.” That shift in perspective is part of the joy.

And of course, seeing old friends on camera—some serious, some goofing off between takes—is deeply nostalgic.

Two Versions Worth Making

My recommendation: first, restore the film as it was originally intended, using today’s tools to realize what wasn’t technically possible back then. Then, create a second version edited with your current sensibilities.

Back then, I was too emotionally attached to certain scenes to cut them. But now, I can see that trimming those moments would improve the film overall. A modern cut can offer a fresh take.

A Case Study in Re-Editing

Recently, I re-edited a 12-minute B-grade monster film I shot around 2016. It was made entirely with green screen compositing, including miniature sets for indoor scenes.

One shot had always bothered me: a sheriff interrogates a hunter, then stands up and exits the room—but I forgot to composite the chair he was sitting on. Another scene shows the remains of a monster attack, and I remember thinking, “I should’ve added fly buzzing sounds.”

These aren’t major issues for viewers, but they nagged at me every time I watched the film.

The Hidden Risk of Software Updates

I finally had time to fix those details—but ran into a serious problem. I had saved the original editing project and assumed I could simply reopen it. But I use Adobe Premiere Pro, which updates frequently. Older project files can become incompatible.

Usually, Premiere will say, “This file is outdated. We’ll convert it to the latest version.” But this time, the file was too old to open at all.

I ended up manually editing the final exported video instead—a task that should’ve taken minutes but consumed an entire day. (The updated version is now available on my YouTube channel, MVG Museum.)

Smart Archiving Tips

This experience taught me the importance of archiving with re-editing in mind.

One useful practice is saving a “clean” version of your film—what some professionals call a “white” version. That means no subtitles, no music, and high-resolution visuals. It’s easier to reuse footage or re-edit later without interference.

If you’ve dubbed dialogue, save the voice tracks separately too.

And if you’re using Adobe Premiere Pro, consider opening each project file whenever the software updates, and re-saving it in the new format. That way, you preserve compatibility. Of course, doing this for every old project isn’t realistic—so again, a clean master file is your best bet.

 

I hope these insights help fellow creators preserve and revisit their work with confidence.

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