AIの顔入れ替え機能をどう活用する?

AIを活用するかしないか

もの凄い勢いでAIの技術が進んでいます。

「自分は古い人間なんで新しいものは苦手です」というのは、昔であればある種の美徳にもなりましたが、正直、現代ではなかなか通用しません。

「この人は勉強が嫌いなんだな」と判断されることになります。

 

創作活動にもAIは影響していて、賛否両論が湧き上がっていますが、私はAIも道具の一つと認識しています。

人によっては、創作にAIを関与させた時点で価値が無くなる、と考える人もいるようですが、多分、便利な道具が出来るたびに、大昔から同じ種類の論争はあったと思います。

画家が山から鉱物を掘り出してきて、自分で顔料を作って絵を描いていた時代のあと、あらかじめ油で練り込まれた「絵の具」が登場しますが、恐らく当時も、「工場で作られた画一的な絵の具を使った絵など価値がない」と否定する人がいたことは想像できます。

 

AIに嫌悪感を抱く原因は、主に「オリジナリティの無さ」と、「今まで手間暇掛かっていたものが、一瞬で出来てしまうことへのくやしさ」の2つではないでしょうか。

 

確かに、AIで簡単に実写と見間違えるほどの風情ある風景を作られて、「これからは映像製作の仕事はAIに取って代わられます」などと言われると、私も反感を覚えて、「じゃあ動画視聴もAIに代わってもらう時代になるんでしょうねえ」と皮肉を言いたくなります。

 

リアル系のCG映像が登場したとき、「これからは生身の俳優は要らなくなる」と言われましたが、現実世界では、トム・クルーズが相変わらず無茶なアクションをこなす映画がヒットしています。

技術はそのコンテンツのメインにはならないんです。

あくまでも、便利な道具として補佐してこそ活用され、生き残っていくと思います。

 

AIを毛嫌いして昔ながらの創作手法にこだわる選択もありますが、特に映像製作に関しては、パソコンを使わない作品作りはもうあり得ない訳です。

AI技術のうち、使えるものを使う方が、はるかに効率的に「自分の作りたいもの」に近付けると私は考えています。

MVGの新たなAI構想

MVG (M’s Video Group) というのは、私が学生時代、映像製作を始めたときに名乗ったグループで、以来、私が作る映画は全て、このロゴから始まっています。

そんなMVGの基本方針と目標は、「低予算でエンタメ作品を量産する」ということです。

そのため、1990年代は徹底的に現場での早撮りを優先しましたが、ロケによる撮影場所移動がある限り、早撮りにも限界があります。

そこで、2016年の実験作「暗黒魔獣ワニガメイーター」を機に、「全編グリーンバック合成」という異端の製作方式に切り替えました。

これによって、人物撮影の期間を最大1/5程度に短縮できるだけでなく、MVGの特徴である、ミニチュアセット製作をより活かせるようになりました。

 

そして、ここへきて新たな手法を恒常的に取り入れようとしています。

それが、「AIによる顔の入れ替え」なんです。

 

ディープラーニング技術によって、映像に映っている人物の顔を入れ替えられることは、すでに皆さんもご存じだと思います。

多くの場合は、悪用の危険とセットで語られるので、悪い印象を持つ人も多いと思います。

ただ、当たり前ですが、技術に善悪はありません。

使い方に善悪があるんです。

 

正直に言うと、MVG作品は、撮影途中で頓挫したものがいくつもあります。

技術的に高望みをし過ぎて、映像製作に対する実力不足から形に出来なかったものが多いんですが、次に多いのは「理想的な配役が決まらず保留の期間が長くなった」ことが原因で、頓挫に繋がったということです。

「たかが自主映画なんだから、未完成に終わるより、誰でもいいから配役して撮れば良いじゃないか」と思われるかもしれません。

確かにそれが正論です。

「素人の浅はかさ」と言われればそれまでですが、愛着ある作品の出演者のイメージはなかなか諦められないのが現状です。

それに「この人はイメージとは違うんだよなあ」と思いながら撮影するのも失礼なので、やりたくないんです。

 

そこで、今回採用を試そうとしているのが、「顔入れ替え機能」です。

顔を別人と入れ替えられるのであれば、例えば、自分がその役のイメージで演技をしているところを撮影して、フリー素材から選んだ、イメージに合う人の顔と入れ替えれば、結果的に自分のイメージに近い人物のシーンが作れるのではないか、という発想です。

 

もし、これが上手く行くとすると、映画に登場するエキストラも少人数でまとめて撮影して、顔だけ変えることで、大人数が登場しているシーンが作れます。

人物はグリーンバック撮影するので、人数を増やすことは簡単なんです。

もっと言えば、芸達者な一人の出演者が、複数の役を演じ分けて、顔を入れ替えれば、役者が一人しかいなくても映画になるかもしれません。

 

私は早速、無料で使用できる顔入れ替えソフトを調べ、「FaceFusion」というオープンソースのソフトで実験をしてみました。

詳しい手順の紹介は別の機会にしますが、結論として、顔の入れ替えを行った映像は充分に採用できる品質でした。

・長い映像は作れない

・処理にとても時間が掛かる

というような制約はあるものの、特段に不自然さはありません。

 

ただ、分かったことは、これは「FaceFusion」特有の性質かもしれませんが、「顔の入れ替え」は、もっと細かく言うと「目」「鼻」「口」といった「パーツの入れ替え」なんです。

元の映像の人の「目」「鼻」「口」の位置に、それぞれのパーツが合成されます。

ですから、入れ替えたい人物写真と顔のパーツの配置が似ていない場合、顔として破綻はしない代わりに、入れ替え用の写真の人物の顔には見えず、別人の顔に見えます。

これは私の用途としてはむしろ好都合です。

入れ替え用の写真は加工が許可されているフリー画像とはいえ、その人物の顔そのものになると、ちょっと抵抗感が湧くからです。

恐らく、フリー素材も「顔の入れ替えには使えない」というような規約も生まれてくる気がします。

 

AIが得意とする画像解析によって、光の状態も元の動画に合わせて自然な感じになることが分かりました。

今、私が編集を進めている30分程度の作品が1つあります。

この作品には長らく(約10年)配役未定のため撮影できていなかったシーンがあります。

その人物は私が演じ、実験も兼ねてこの顔入れ替え技術を採用することにしました。

顔の入れ替え時、顔の輪郭やパーツの位置は変わらないため、これも実験的に輪郭を変えるような簡易的な特殊メイクをしてから撮影してみようと思っています。

今後、顔入れ替え技術の活用についても、範囲を広げていき、映画作りの勉強会的役割の「DIY映画倶楽部」でも情報を共有したいと考えています。

参考になれば幸いです。

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創作活動としての映画製作は最高に楽しいものです。

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ただ、実際の映画製作には多くの工程があり、全てのノウハウを一人で身に付けて実践しようとすると大きな労力と長い時間が必要になります。

 

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