室内撮影に照明は必須と言うけれど・邪道映画術的ライティング法
技術的要素の優先順位を考える
「映画作り」には、物語づくりとか演技、演出といった「ソフト的技術」とは別に「カメラの操作」のような「ハード的技術」がたくさんあります。
全てにおいて高水準の技術者集団が揃っている、プロの商業作品と違い、私たちが趣味として見よう見まねで行う映画作りでは、大前提として技術力がありません。
だからと言って、プロのスタッフを雇って働いてもらうことは出来ないですし、仮にプロに作ってもらったとしたら、ちっとも楽しくはありません。
そもそも、その「見よう見まねの活動」自体を楽しむのが趣味の映画作りなんです。
大事なのは、優先順位と気付いてください。
映画である以上、映像品質が最優先と思ったら危険です。
私は、「作品を完成させる調整力」が最優先だと思っています。
さらに言うと、観客に鑑賞してもらうためには、低品質な音声から来るストレスを減らすことが、映像品質より大事だとさえ思っています。
次には、観客を退屈させないカット割りのテンポも優先度が高いと考えます。
そう考えると、私たちが手掛ける低予算作品においては撮影条件がかなり限られてきますから、「照明」という要素は、あえて優先度を低くするという選択も考慮すべきです。
ライティングが拙くて台無しの作品はあるか
映画の教科書では、間違いなく、照明(ライティング)の解説がされています。
確かに、照明を変えるだけで人物の感情を表現できたり、観客心理までコントロールできるという解説は、とても魅力的です。
「撮影」は影を撮ると書くくらいですから、光の調整は確かに大事なんです。
ただし、先にも言ったように、実はアマチュアのDIY映画では優先度を低くすべきなんです。
いろいろな作品を見て、つまらない作品、観ていられない作品はたくさんありますよね?
その理由を考えてみてください。
・話がつまらない
・うるさい
・不快な要素が多い
こういう理由がほとんどではありませんか?
「室内シーンの照明が甘くて作品が台無し」なんていう作品は、私は観たことがありません。
以前、「トリック」というテレビドラマの中で、わざと撮影用の照明を使っていない室内シーンがありました。
画面を明瞭に撮影するテレビドラマとしては異色でしたが、そのせいでつまらなくなるわけでもありませんでした。
恐らく、多くの視聴者は、「撮影用の照明が無いから変だ」とさえ感じていなかったと思います。
フィルム時代の伝統と下手なら無い方がマシという現実
現代の映画の技術は数十年前の映画界で確立されたものです。
そのころは、照明技術の優先度がとても高いと考えられます。
スマホで観たままの映像が簡単に撮影できる現在からは想像できないでしょうが、例えば室内シーンで撮影用のライトを使わず、天井に設置された室内照明だけで撮影することは、ほぼ不可能だったんです。
撮影用のライトで照らさないと、光量不足で、フィルムに自然な状態で記録されなかったんです。
私も映画作りを始めた当初は、父親から借りた8ミリフィルムのカメラを使っていました。
ですから何度も光量不足による失敗を経験しています。
今のように、モニターに見える通りに記録されるわけではないので、昼間の野外シーン以外は、上手く撮るのが難しいものでした。
そういう「フィルム時代」からの伝統としての照明技術は、もちろん商業作品の世界では、しっかりしている事が大前提でしょう。
でも、中途半端な知識と技術で照明を使うと、かえって不自然な場面になりがちなんです。
ユーチューバーのように、人物を明るく照らしさえすればいいというのであればともかく、ドラマの中で、さまざまな角度からの映像に切り替える場面で、自然に見える照明技術は高度なものです。
正式に勉強して長時間実践してきた人にしかできないと思ってください。
そして、照明の調整を行うと、単純に撮影ペースは半分以下に落ちます。
その上、不自然な映像になってしまうのでは目も当てられません。
グリーンバック撮影における照明
私は圧倒的に撮影スケジュールを短縮するためにグリーンバック撮影を多用しますが、グリーンバック撮影時の照明は独特と言えます。
「スクリーンを見ている」など、特殊な光源を表現するときは撮影用のライトを使いますが、それ以外の場合は、極力、撮影用のライトを使わずに、天井の室内照明を利用して、グリーンバック撮影を行なっています。
せっかく、撮影期間短縮のために、合成で不自然になることも覚悟してグリーンバック撮影という手法を採用しているのに、照明設定に時間を費やして、撮影時間を長引かせたくないんです。
ただ、グリーンバック撮影の場合は、人物(被写体)への照明でなく、グリーンバック自体への照明が必要になってきます。
特に、人物の全身を撮影する場合などは、グリーンバックシートの床に近い方が暗くなりがちで、これは後からきれいに映像合成できない理由になるので、シートの下方にぼんやりとした光を当てて、できるだけシートが満遍なく同じ色でカメラに映るように調整することが肝心です。
これは、初めの撮影の前に調整して、その日一日は同じ設定のまま放置できることが理想です。
グリーンバック撮影用の簡易的な照明パターンは、機会があれば改めて紹介したいと思います。
参考になれば幸いです。

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Lighting Isn’t Always Essential for Indoor Filming: A Rogue Filmmaking Perspective
Rethinking Technical Priorities
Filmmaking involves both “soft” skills like storytelling, acting, and directing, and “hard” skills like camera operation. Unlike professional productions with highly skilled crews, hobbyist filmmakers—like us—often work without technical expertise.
But hiring professionals would defeat the purpose. The joy lies in the act of “trying it ourselves,” even if imperfect.
So let’s talk about prioritization.
Don’t Let Image Quality Become a Trap
It’s tempting to think that visual quality should be the top priority in a film. But I believe the most important skill is the ability to complete a project through creative adjustment.
In fact, reducing the stress caused by poor audio is often more important than image quality when it comes to viewer experience. Next in line? Editing rhythm—how you pace your cuts to avoid boring your audience.
Given our limited resources, we should consider lowering the priority of lighting in indoor scenes.
Does Bad Lighting Ruin a Film?
Film textbooks always emphasize lighting. It’s true—light can express emotion and influence viewer psychology. After all, “cinematography” literally means “writing with shadows.”
But for DIY filmmaking, lighting should not be a top concern.
Think about the films you couldn’t sit through. Was it because of poor lighting?
More likely, it was:
- A boring story
- Annoying sound
- Unpleasant elements
I’ve never seen a film ruined solely by weak indoor lighting.
When “Trick” Broke the Rules
In the TV drama Trick, there was a scene shot indoors without studio lighting. It looked unusual for a TV show, but it didn’t make the scene boring. Most viewers probably didn’t even notice the absence of professional lighting.
Tradition vs. Reality: Film vs. Digital
Modern filmmaking techniques were shaped decades ago during the film era. Back then, shooting indoor scenes without studio lights was nearly impossible. Without enough light, the film couldn’t capture natural-looking images.
When I started filmmaking, I used an 8mm film camera borrowed from my father. I failed many times due to insufficient lighting. Unlike today’s digital monitors, what you saw wasn’t what you got. Outdoor daytime scenes were the only safe bet.
So yes, lighting is essential in commercial film production. But for amateurs, poor lighting can be worse than no lighting at all.
Unless you’re a YouTuber who just needs a bright face, achieving natural lighting across multiple angles in a drama is extremely difficult. It requires formal training and years of practice.
And don’t forget: adjusting lighting slows down your shooting pace—often by more than half. If the result still looks unnatural, it’s not worth it.
Lighting for Green Screen Filming
I often use green screen to shorten shooting schedules. Lighting for green screen is a unique case.
If the scene involves a special light source (like a glowing screen), I’ll use studio lights. Otherwise, I rely on ceiling lights for simplicity.
The whole point of green screen is to accept some artificiality in exchange for speed. Spending extra time on lighting defeats that purpose.
However, lighting the green screen itself is crucial—not the subject. Especially in full-body shots, the lower part of the screen tends to be darker. This makes clean compositing difficult.
So I softly light the lower area to ensure the screen appears evenly colored. Ideally, this setup should be adjusted once and left untouched for the entire day.
I’ll share a simple green screen lighting pattern in a future post.
Hope this helps!

