創作とAIの理想的距離感・ゼロから作り出すvs 補完する
創作+AIに抵抗がある理由
新しい技術が登場すると必ず「推奨派」と「否定派」に分かれます。
後から聞くと笑い話ですが、自動車が登場したときも「人力車の車引きから仕事を奪う」と反対する声も多かったようです。
最近で分かりやすいのはAI技術でしょう。
これは、長年にわたる知識と経験から生み出された「技」を売りにしている人にとっては、驚異そのものです。
「挿絵としてこういうテーマの抽象画が欲しい」という需要は出版の世界などで残っているでしょう。
これまでは、そういう挿絵を手頃な価格で描ける画家の仕事として成り立っていたかもしれませんが、今は、AIに指示を出すことで誰もが合法的に必要な挿絵を数秒で入手できるんです。
100パターンから選びたいと思っても数分で100パターンを用意出来るでしょう。
特に創作の分野では、AIを活用することに「ずるさ」を感じる人も多いと思います。
人が頭や手を使って試行錯誤することに価値があるという考え方もできるからです。
大衆は既に生成AIに飽き始めている?
2025年現在、毎週のように新しい生成AI技術が話題になり、その技術で作った画像や動画がSNSにあふれています。
確かに凄い技術で、誰でもAIツールに「プロンプト」と呼ばれる指示の文章を入力すれば、クオリティの高いさまざまな映像や画像が出来て面白いんです。
でも、驚くべきは人々の反応の変化です。
つい数か月前までは「もう全部AIで事足りるね。映像業者は要らないね」などと冗談半分に言っていた人たちが、生成AI特有のリアルな映像に急速に飽きているんです。
SNSでAIの映像が流れてくると「同様の映像は表示しなくていい」とフィルタリングして、避ける人も多いと言います。
確かに私も「すごい技術だなあ」と思いつつも、冷めた目で見ることが多いのは、技術革新に対する「慣れ」が恐ろしく早いものだからだと思います。
創作の楽しさを残すためのAI活用
では創作者として、AIを完全に排除すべきかというとそんなもったいない話はありません。
あくまでも道具として使い倒してこそのAIです。
たとえば、物語のアイデア出しにAIを使うのはとても有効です。
これは私の場合ですが、強固なテーマを訴えたいということはなくて、「こんな要素を盛り込んだ物語を作りたいな」ということで話しづくりがスタートします。
極端に言えば、登場させたい要素が全部入っていて、最低限、エンタメ作品として鑑賞できる形にできれば満足なわけです。
これまでは、要素をカードに書き出して組み合わせや順番を変えて、うんうん唸って案を出そうとしていましたが、それらしく物語の体裁になるものもあれば、全く支離滅裂で形にできないものもあります。
そのため「企画中」という中途半端なアイデアだけ溜まっているのですが、AIはまさにこの作業が得意です。
自分自身で考えた要素の組み合わせと再構成をAIにやらせて物語案を作ると、かなり楽に形になります。
そして、ここが重要なんですが、ブラックボックスとしての生成AIで作ったコンテンツと違って、ちゃんと「これは自分で作った話だ」という感覚が持てるんです。
実際、AIに修正指示を繰り返しながら話を作っていく作業は、ゼロからAIがアイデアを出すのではなくて、作者自身の言語化できていなかった感覚が現れたときに、それを選択して組み合わせていく作業のような気がしています。
だから、AIを助手として使ったとしても、作品は間違いなく作者の個性を強く反映したものになるはずです。
ストップモーション映像への活用例
物語づくりの時も、AIは別々の要素を並べたときに生じる「穴」を上手く埋めるのが得意だと感じますが、映像の「穴」も文字通り上手く埋められることがあります。
これはむしろ生成AIとしては原始的な機能の1つでしょうが、2つの映像を滑らかにつなぐための中間の映像を作る技術があります。
例えばストップモーション。
私にとってこの原始的な特撮には特別な思い入れがあって、自分で作った恐竜やクリーチャーが、まるで命を吹き込まれたかのように動いて、作品の中で出演者と共演するというのは、まさに夢のような状況なんです。
高校生の頃、当時既に何十年も前の古典となっていた特撮映画の魔術的なストップモーション映像に憧れて、映画作りの趣味を始めました。
ただ、コミカルなストップモーション映像ならともかく、私が理想とするリアリティがあるストップモーション映像は、難しすぎてとても再現が出来ませんでした。
ハリーハウゼンのような特撮の神様をお手本にしているので当然です。
最近は撮影方法も研究して、少しでも楽にストップモーション映像を作る実験などをしていますが、ネックになるのは、模型を1コマずつ動かして撮影する際の、動かす度合いの調整なんです。
動きを滑らかにしようとすれば、1コマの動きは小さくすればいいんですが、完成映像で模型が生き生きと動いているように見えるためには、滑らかさと共にメリハリも必要なんです。
それは、名人級の人でないと撮影時には調整できないんです。
私の解決策としては、ある程度機械的にストップモーションで動きを付けて、その映像を編集段階で細かく速度変化など付けてメリハリを付けます。
その際、特に動きを早くした瞬間など、ストップモーション映像特有のカクカクした動きが目立ちがちです。
「このおもちゃっぽいところがいい」という作品でない限り、カクカクした動きはマイナスに感じます。
そこで、その部分にAI機能を使って、動きを滑らかに見せようという訳です。
具体的には、撮影できていない「中間の動き」を1コマ分生成してもらったり、早い動きの際に生じるはずの「ブレ」を生成したりすることです。
実験してみると、かなり有効で、この機能を使うことを前提にすれば、さらに撮影も楽になることが分かります。
ストップモーション映像は、準備や撮影が楽しい反面、「リアルな映像は作れない」ということで、CG映像にその座を明け渡してきましたが、AIという道具を活用することで新たな可能性が出てきました。
CG映像と違って、やっぱり手で触れられるミニチュアの実体を使って、実際に光を当てて撮影する楽しさは格別です。
体験しない人も、メイキング映像などでその面白さを疑似体験できるはずです。
その手作業の「味」を残しつつ、AIの力で「リアリティ」を底上げできる。この「いいとこどり」の手法は大きな魅力だと思います。
AIは創作の敵ではなく、使い方次第で頼れる相棒になります。
でも、主役はあくまで自分。
正しい形でAIの力を借りることで、創作活動の楽しさも広がると思っています。
参考になれば幸いです。

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