プロトタイプとしての自主映画・AIを活用して「バージョン0」を完成させよ

アイデアを形に出来ない理由は何ですか?

 「映像にしたい物語の原案が頭の中にはある。いずれ形にするつもりだ」

そう言って何年も封印しているアイデアはありませんか?

私には残念ながらたくさんあります。

何故、自分にはこんなにも行動力が無いのだろう、と自己嫌悪に陥ることもしばしばです。

 

よく考えると行動できない最も大きな理由は「高望み」であることもあります。

いざ形にしようとすると「もっと壮大にしたい」「もっと完成度を高めたい」と思ってしまって、「今の実力や条件ではそのレベルに達成しない」と思ってしまうんです。

そのため、なかなか一歩目が踏み出せない人も多いと思います。

 

そんなときに必要なのは何年もかけて基礎知識を蓄えることではありません。

おすすめなのが、「プロトタイプとしての自主映画を制作してしまうこと」です。

 

これは、「まず完成度の高い文章作品を用意」して「映像化」する、という従来の定番的流れとは違うので、ピンと来ない人もいるかもしれません。

従来のやり方にももちろん大きなメリットはありますが、「映像に対するコスト」が極端に小さくなった現在、全く違う作業工程も現実的手法としてあり得ると思うんです。

 

具体的に言うと、フィルム代が高くつく時代は、撮影前に映像の最終形をじっくり検討して、必要最小限の撮影をする必要がありました。

フィルム代が掛からず、実質的に映像をほとんどタダで撮影できる現在は、昔のハリウッド大作がそうだったように、「考えられるパターンをいくつも撮ってしまって、映像を見てから取捨選択する」というやり方が誰にでも出来てしまうんです。

 

映像製作に対する考え方をさらに柔軟にすると、「映像にしたい物語の原案」をいきなり上質で完成度の高い作品にしようとするのではなく、まずは「映画の原型」にしてみる、という選択肢も出てきます。

今回はその具体的な手法を紹介します。

「バージョン0」を作るという発想

昨今、創作の世界でも話題になっているのが生成AI技術です。

新しい技術が登場したときは、必ず賛否両論が巻き起こりますが、生成AIも例外ではありません。

「AIを使ったら純粋な創作とは言えないのではないか」というのは、恐らく過度な恐れだと私は思います。

 

生成AIの急速な発展と同時に、例えばAI動画に対する興味関心も急速に薄れているのが実情です。

実際、AIで作ったリアルな映像そのものには、もう驚きもしないし面白味も感じなくなってきているんです。

そうなると、逆にAIは「イロモノ」扱いから「道具」扱いに正しく変化していきます。

 

つまり、主にAIの力を借りて「バージョン0としての原型」を形にするということです。

感覚としては「完成品」ではなく、自分の構想に命を吹き込むための「試作・プロトタイプ」です。

 

AIは使っていませんが、見方を変えるとこの「プロトタイプ作品」は映画の世界でいくつも前例があります。

 

例えば、ロバート・ロドリゲス監督の「エル・マリアッチ」という自主映画は、わずか7,000ドルで制作されました。

シンプルながら魅力的なこの作品は異例の全米ロードショー公開され、メジャーデビューしたロドリゲス監督はアントニオ・バンデラス主演で「デスペラード」を作っています。

この作品は「エル・マリアッチ」のリメイク的内容とも言えます。

 

もう少し古い例では、ジョージ・ルーカス監督の「THX1138」もあります。

これは学生時代に課題として作った映画で、のちにプロとなったルーカス監督が商業作品としてリメイクしています。

ハリウッド映画作品の冒頭に音響技術として「THXシステム」のロゴが表示される作品が多くありますが、THXの名前はこの作品から来ています。

 

重要なのは、「立派な作品に仕上げるのはリメイク時でいい」ということ。

プロトタイプである程度満足できればもちろんそれでもいいですし、他の人から「これをリメイクさせて欲しい」と言われるのも面白い展開につながる可能性があります。

AIがプロトタイプに向いている理由

 AIが急速な発展と共に、一方で飽きられ始めている現実は、創作にとっては追い風でもあります。

良くも悪くも「AI」は軽いんです。

 

AIは軽いと言いましたが、道具としては非常に有効です。

私も映画脚本の他、小説のプロットづくりなどにもよく使っています。

 

AIを嫌う人が「なにもかもAIに任せて良いのか?」と言いますが、現状、そんなに全面的に任せられる訳ではありません。

せいぜい「こんなのはどう?」「ここはもっとこうしたら?」という補佐的な働きをするものなので、ほぼ全て自分で手直しすることにはなりますが、手直し前の「叩き案」を作ってくれるだけでとても助かっています。

 

そして実際にやってみると「これはAIとの共同制作だから、完璧じゃなくてもいい」と思える面もあります。

そうすると創作のハードルはぐっと下がるんです。

プロトタイプを作るのにAIが使える理由はここにもあります。

撮影を最小限にした現実的な映像化手順

映画を作る上で、最も時間とコストが掛かるのは「撮影」のパートです。

大変な分、もちろん魅力も多い作業工程ですが、最短で「映画の原型」を作るため、思い切ってこの「撮影」をほぼゼロにしたらどうなるかを考えてみます。

 

映像化手順としては、「あらすじ作成」「シナリオ化」が大前提ですが、今回は割愛します。

手元にシナリオがあるところからの作業となります。

 

念のため先に言っておくと、高望みは捨てて、まず形にすることを優先してみてください。

「ちょっとイメージが違う」という際の合格点をギリギリまで下げるのがポイントです。

 

物語はシナリオ化する段階で「場面」が明確になっているはずです。

初めは「1シーン=1カット」のつもりで画面を作ります。

〇静止画生成

私は普段、PCのブラウザについている「copilot」を多用しています。

これが最適という訳ではありませんが、まずは使い慣れたもので試すことをお勧めします。

 

例えば、「copilot」に「以下の文章から画像を生成してください。」という文章に続けて、該当部分のシナリオを入力します。

しばらくすると画像が表示されます。

恐らくなかなか自分のイメージした内容にはならないと思いますが、修正指示を繰り返します。

 

登場人物のキャラクターが統一されないという問題が多く指摘されていましたが、それも他のAIツールを使って克服できます。

あらかじめ用意しておいた「顔変換ツール」で登場人物の顔に入れ替えたり、話題の「nano banana」というツールを使えば、用意したキャラクターを画像の中に配置したり、服装を変えたりもできます。

 

具体的な操作手順についてはここでは割愛します。

AIツールの操作がどうしても苦手という方は、操作が得意な方と共同作業体制をとると、別の楽しさも生まれるでしょう。

〇動画として編集

動画編集ソフトを使って、まず「紙芝居動画」の完成を目指します。

編集手順としては、先にナレーションやセリフ、効果音を用意して、オーディオドラマのように編集します。

各種音声はスマホを使って録音してもいいですし、AIで生成する方法を組み合わせても良いでしょう。

 

出来上がった音声に「静止画」を乗せる形で編集を進めます。

この段階になってはじめて、「この部分は同じ映像が続くと間が持たないな」と気付くと思います。

間を持たせるために、映像の一部をアップに切り替えたり、新たに別の画像を生成したりします。

静止画に動きを付けることも、AIの得意分野なので、特に効果的と思われる部分に関しては試すと良いでしょう。

 

この「一旦形にしてから改良する」ということが大事で、「せっかくなら完成度の高いものをいきなり作りたい」という高望み思想からは得られないスピード感を持って、作品が目に見える形になるんです。

★まずは種を蒔いてみませんか?

「静止画」+「音声」というシンプルな動画でも、文章だけでは表現できなかった作品世界が立ち上がることが実感できるはずです。

何より肝心なのは、あなたの創作ノートの中にぼんやりとしか存在していなかったアイデアが、鑑賞できる「プロトタイプ」として目の前に生まれたことです。

 

「画ニメーション」、「ボイスコミック」と言われる種類の動画があります。

コミックの絵を抽出して、セリフや効果音と組み合わせた動画です。

通常、アニメーションの魅力は「動き」にあるとされますが、私の感覚としては、静止画で構成された「画ニメーション作品」も、ほとんどアニメーション作品を見るのと同じ感覚で楽しんで鑑賞できます。

あなたの、AI静止画を組み合わせた「紙芝居動画」も同様の鑑賞が出来るはずです。

 

蒔かない種は芽を出しません。

まずは種を蒔いてみませんか?

是非、「バージョン0」を作ってみましょう。そこからすべてが動き出します。

 

この記事が、あなたの「最初の一歩」の背中を押せたなら、ぜひシェアしていただけると嬉しいです。

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