プロのやり方を真似るのはNG
ここでは、私が1990年頃に活動を始めた、MVG (M’s Video Group) における、基本的な方針や思想を紹介します。
私は、資金はともかく、時間だけはふんだんに費やせた大学生時代に、本格的に映画作りの趣味を始めました。
その後、サラリーマンをしながら、余暇に自主映画を作る活動は続けていました。
そこで慢性的な問題になったのは、資金不足でも技術不足でもなく、「時間不足」でした。
従来通りの、「普通の映画の撮り方」をしている限り、1日に撮影できる映像の分量はわずかです。
一定の長さの作品を完成させるためには、数ヶ月どころか数年の撮影期間を費やすことになります。
以下の作品は、大部分が30分前後の作品ですが、それぞれ、完成までに長い製作期間が掛かっています。
撮影期間が無用に長くなると、百害あって一利なしです。
シーンの繋がりが不自然になるだけでなく、企画自体が途中で頓挫する可能性が飛躍的に高くなります。
徐々に、私の関心は、「いかに短期間で、自分のイメージに近い映像作品を完成させるか」に移っていきました。
たどり着いた「邪道映画術」
撮影時間短縮のためには、プロの目から見たら考えられないような、「邪道な方法」も積極的に使います。
最も多用するのは、地味な映像合成です。
映像合成を活用することによって、もたらされるメリットは、
- 撮影時間の短縮
- 大道具、小道具の節約
です。
普通、イメージされるような、派手なシーンのためだけに、映像合成をするわけではないんです。
最も大胆な、「人物と背景を合成する」という手法を活用するとどうなるでしょうか。
「たった数カットの撮影のために、遠方のロケ地を転々ととする」という、従来の撮影を避けられます。
人物は、グリーンバックと呼ばれる簡易セットの前で、まとめて撮影が可能だからです。
これにより、撮影日数や費用を数分の一に縮小できます。
この手法は、プロの人達や、通ぶった人(映画原理主義者の人たち)からすると、全くバカバカしい映画の作り方でしょう。
スタッフ、出演者全員で撮影現場に集合し、「長い日数を掛けて少しずつ映像を撮影していく」という、「昔ながらの醍醐味」が味わえないからです。
昔ながらのプロのやり方を真似ると、製作期間も費用も膨大になります。
ただ、プロの場合、12回の撮影は12日間で終えることが出来ます。
関係者の12日間のスケジュールを押さえ、朝から晩まで連続で撮影できるからです。
一方、本業を持つアマチュアが、余暇のスケジュールを調整しながら撮影日を確保するのは困難です。
「都合が付く撮影日が月に1回」というのは、ごく普通の状況です。
アマチュアが12回の撮影スケジュールを捻出すると、撮影期間はどれだけ掛かるでしょか?
12ヶ月で撮りきれるとは限りません。
季節が違うと撮影できないシーンもありますから、12回の撮影を行うために、何年も掛かかってしまうわけです。
「時間を掛けて良いものを作る」という迷信
これは、創作物を完成させたことのない人の意見です。
一つの創作物は、一定以上の時間を掛けて、良いことは一つもありません。
最大のデメリットは、「未完成に終わる可能性が非常に高くなる」ということです。
プロと違い、仕事ではありません。
関係者の「やる気」はそうそう長続きしないんです。
作品を完成させるためにも、「制作期間の短縮」は実は最優先の課題なんです。
幸い、現代は撮影機材、編集機材の高性能化、低価格化が進み、かつて無いほど手軽に「映画」が作れる環境は手に入りました。
デジタル編集が一般的になったおかげで、映像合成も驚くほど容易になりました。
その様に、前提条件が昔とは違うのですから、昔ながらの映画の撮り方にこだわる必要はない、と私は考えます。
実験作「7日間でB級モンスター映画を作る」を契機に
2017年、技術的な実験やデータ収集を目的に、7日間でショートムービーを作る実験をしました。
7日間のうち、撮影は1日だけです。
極端な撮影時間短縮を実現するために、先に一人で全てのシーンの背景映像を撮影し、人物はグリーンバックでまとめ撮りする手法を使いました。
従来のやり方であれば、数日間掛かるであろう人物の撮影は、半日足らずで終了しています。
さらに、2019年には、同じ手法で1日で撮影したショートムービーを、YAMATOショートムービーコンテストに出品しました。
この作品は準グランプリを獲得しました。
この2本のショートムービーを完成させてみて、私は、「全編合成映像で構成したエンタメ映画制作」が現実的であることを確信しました。
今後は、自作の大半を、この手法で制作していこうと考えています。
もちろん、合成映像には弱点もあります。
特に、人物と背景を合成するような大胆な手法の場合、場面によってはどうしても合成が目立ってしまいます。
これは、撮影と編集の技術向上を図ることで改善していくしかありません。
しかし、映画の本質は「面白いストーリー」です。
「ストーリーの面白さを形にするために、映像を作る」という方針にすると、「映像・演出には凝っているが、別に面白くはない」という残念な映画にエネルギーを注がなくても済みます。
MVGでは、ストーリーデザイナーの今井昭彦先生から、「面白いエンタメストーリーの作り方」を学びながら、作品作りを続けていこうと思っています。
それによって、特に自主映画にありがちな、「ストーリー性が弱く、雰囲気のみで勝負」という作品になることを避けることが出来ます。
MVG博物館では、
- 映像制作に興味はある。
- 前から一度、映画を作ってみたかった。
- でも、プロのように「時間」も「お金」も掛けられない。
- 専門的な高い技術も持っていない。
そんな方が、やる気さえあれば、「オリジナル映画」を作れる情報を発信していきます。
プロ仕様の映画制作法は推奨しませんので、プロの映画スタッフ志望の方は参考になさらないでください。
また、「そんな映画作りは邪道だ」というご批判も不要です。
「プロのやり方」を真似るのではなく、
- とにかく映画を作り上げたい
- 出来れば、最初から「面白い」映画を作りたい
- 作った映画を人に見せて驚かせたい
という方は、是非、参考になさってください。
創作するだけでなく……
趣味としての創作は、作品の完成で終わりと思われがちです。
しかし、個人による情報発信が出来るようになった時代です。
趣味の小説であれば、電子書籍としての出版ができます
趣味のコミックも、電子書籍として出版できます
趣味の映画も、単に作るだけでなく、その後に作品自体を配信・販売したり、別の形の商品として発展させられる可能性もあります。
例えば、私の場合、制作したB級モンスター映画を利用して、「主演俳優だけを後から撮影して合成し直す」というユニークな商品を作成しています。
このようにMVGでは、創作だけでなく、創作物の活用・マネタイズまで考えた活動をしていこうと考えています。
私の映画作りに賛同された方は、是非、ご意見・ご感想をお寄せください。
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