「安定した映像」の強さ
レベルの高い映像=奇をてらった映像 ではない
映像製作を行なう上で、古い映画を見ることは非常に勉強になります。
私も、映像制作会社勤務時代に、先輩ディレクターから「古い映画は撮影環境がシンプルで、我々の作る低予算の作品と似ているから、参考になるぞ」と教えられました。
そんな理由もあって、昔の映画を見る機会があるのですが、決して懐古趣味ということでなく、昔の映画の方が素直で面白い、という印象を持つことが多くあります。
もちろん、駄作は生き残っていないので、「今見られる古い映画」という時点で、レベルが高いためにコンテンツとして生き残っている、という側面もあるでしょう。
私の主観ですが、古い映画は1台のカメラで丁寧に撮られているせいもあるのかもしれませんが、構図やカットの繋ぎ方がとても美しいと思います。
ストーリー自体も面白いので何度か見ている「白い巨塔」(1966)という映画があるのですが、映像に注目して見ても、全てのカットの構図といい編集といい、安定感が抜群で、高級な映像に思えます。
最近の作品はカメラワークと編集の勢いを重視した映像が多いように思います。悪い言い方をすれば、ノリでごまかす風潮がある、ということです。
もちろん、マルチカメラ撮影をして、流れ重視の映像にも魅力はあるのですが、私のように年齢が高くなってくると、やはり「勢いでごまかす映像」に飽きてくるのです。これは実際に、年齢にも関係するのかも知れません。私も若いころは、勢いでごまかしているような映像のほうがかっこよく思えましたし、丹念にカットを積み重ねる、古いタイプの映像がダサく見えていました。
オーソドックスな構図と奇をてらった構図、という点でも、最近ではオーソドックスが持つ力強さの方がずっと魅力に思えますし、映像制作を始めようという方にも、オーソドックスな映像感覚を身に付けるようにオススメしたいと思っています。
オーソドックスな映像とは
オーソドックスな映像とはどういうものか、と言えば、まず安定感です。
一瞬しか使えないような、バランスの悪い構図ではなく、お芝居が続いている一定時間、観客にストレスを感じさせない安定した構図で、情報量としても適切なサイズの映像です。
ノリでごまかすタイプの映像に比べると、やや広角気味の構図になる傾向があると思います。
映画を作ってみると分かりますが、映像はアップの映像を多用したほうが、繋がって見えやすいということがあります。
広角の映像を連続させる場合は、諸々「きちんと」辻褄が合ってないと、アラが見えてしまうからです。
そして、短いアップの映像に比べて、構図のバランスが良くないと、これもまたストレスを感じさせることになります。
そういう意味でも、前述の「白い巨塔」などは、じっくりと作りこまれているなあ、と感じます。
高性能のビデオカメラを売るための宣伝は悪?
ビデオカメラが普及したので、アマチュアが趣味で、映像作品を作って楽しめるようになりました。自分なりに名作の再現に挑戦することなどもできるわけです。
しかし、私が思うに、ビデオカメラの第一の役割は、「情報の記録」と「記録した情報を楽しむこと」です。
家庭用のビデオカメラは年々高性能化し、一家に一台あるのが全く珍しくない状況です。
しかし、そのカメラは期待通りに活躍しているでしょうか?
「撮影しても、ほとんど映像を見返さない」「そもそもあまり撮影しなくなってきた」という声が大半なのではないでしょうか。
私は、その原因の一つは、ビデオカメラの宣伝にあると思っています。
カメラの高性能をアピールするのに最も多く見かけるのが、「ズーム映像の充実」です。
ズームの性能が高くなると、離れたものを大きく写せる魅力は確かにあります。
しかし、それに伴う手ブレ補正機能をいくら高めても、運動会で走っている子供の顔を、ぶつけ本番でうまく撮れるアマチュアカメラマンはいないのです。
CMを真に受けて、本来は使い方が難しいアップの映像ばかり撮影していては、後から見返す気が起きなくて当然です。
毎日カメラを使っているプロカメラマンではないのですから、撮影は、失敗しないことを優先して、広角気味の安定した映像を心掛けるべきなのです。
現在のビデオカメラ + オーソドックスな撮影 = 最強
今売られている家庭用のビデオカメラの性能は、相当高いものです。
厳密には業務用カメラの方が様々な点で優れてはいますが、映像業者がただ「業務用カメラで撮影した」というだけで高い料金を取れないくらい、家庭用のカメラで撮影した映像も綺麗に撮れるようになっています。
映像業者にとって幸いなのは、アマチュアの方がCMを真に受けて、難しい撮影に挑戦して失敗してくれるお陰で、「見られる映像の撮影は難しくて素人には無理だ」と勘違いしてくれていることです。
実際は、一般的なハイビジョンのハンディカムで、安定したオーソドックスな映像を意識して撮影すれば、相当にレベルの高い映像作品さえ作れます。
私は映像製作を趣味とする人が増えることで、「映像仲間」を増やしたいと思っているので、事あるごとに、個人的なアドバイスをしています。
最近、そんなアドバイスを、無料の小冊子としてまとめたので、公開させていただきます。
実は、既にFacebookでは公開していたのですが、肝心の当サイト内で公開していないことに、今日、気付きました。
「簡単 ビデオ撮影ガイドブック」と姉妹編「簡単 セミナー撮影ガイドブック」がありますので、PDFデータをダウンロードして活用してみてください。
Gumroadからのダウンロード手順
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