撮影のスピードアップに有効な手持ちカメラ
私は趣味の映画を作り始めたころから、「自主映画特有の素人っぽい映像」を避けることを心掛けていました。
私は、「避けるべき素人っぽい映像」「安っぽい映像」の一因は、「手持ちカメラ撮影によるブレが多い映像」にある、と判断していました。
そのため、当初から撮影には必ず三脚を使うことで、安定した画面を組み合わせて映像を作ることを心掛けていました。
その効果はある程度あったとは思います。
一方で、私はすぐに、「撮影期間が長くなってしまうことが、活動を続ける上でネックになる」と気付きました。
そのため、撮影時間を短くする工夫をひたすら研究していましたが、最初に効果を実感したのは、実験的に三脚を使わずに撮影した作品を作ったときです。
撮影時、シナリオや絵コンテを参考に、カメラの位置を探します。
自分の目をカメラ代わりにして、移動しながら、最適と思われる位置を探すわけです。
通常は、そうやって見つけた位置にカメラを固定するため、三脚の設置を始めます。
三脚は主に3本ある足の長さを変えることで高さを調整し、カメラの角度を変えることで、最適な映像が映るようにします。
しかし、場合によっては、三脚の設置に時間が掛かることがあります。
- カメラの下に障害物が多い場合
- 三脚で届く高さより、高い位置から撮影したい場合
- 三脚より低い位置から撮影したい場合
などです。
要は、三脚を設置するだけでも、結構な時間がかかるということです。
私は、4作目の作品において、撮影時間短縮の実験を兼ねて、「ほぼ全編手持ちカメラ」で撮影を行ないました。
この作品は、当時の自分の実力であれば、撮影に5日間から6日間の日数が必要と思われる内容でしたが、出演者の都合で、丸3日間で終わらせなければいけないという制約がありました。
趣味の映画作りなので、無理に3日間で撮り切れなくても、期間さえ長くすれば撮影日数を増やすことも出来たのですが、短い期間で一気に撮影したほうが、場面のつながりもスムーズになる、ということも経験上、感じていたので、思い切って、3日間で撮り切る計画を立てたのです。
スピード重視のために、監督が撮影も担当すると有効です。
カメラマンが別にいると、監督が演技的にOKを出しても、映像としてOKかどうか、確認をする必要が出てきます。
監督が撮影も担当しているのであれば、撮影しながら、演技と映像を一度に確認できるので、OKを出した後、念の為に見直す必要がほとんどなくなり、撮影のテンポアップに繋がります。
さらに、三脚を使わない手持ちカメラの撮影ですから、三脚の設置時間も節約できます。
カメラを覗きながら「ここから撮ろう」と決めたら、そのまま撮影できます。
多少、厳しい体勢でカメラを構えることになったとしても、本番の短い時間であれば我慢できます。
手持ちカメラの撮影で注意しなければいけないのは、やはりカメラの揺れ、画面の揺れです。
これは、極力避けるべきです。
プロの作品を見ると、画面の揺れを「演出」として使っていることが多いので、真似をするアマチュアもいます。
しかし、技術が未熟なカメラマンが手ぶれの演出まで表現することはまず不可能です。
単に失敗映像にしか見えません。
手持ちカメラで撮ったとしても、いかに不自然なブレをなくして、固定したカメラに近い安定した映像を撮るかということを意識する必要があります。
そういう意識さえしっかり持てば、手持ちカメラでの撮影によって、撮影時間は大幅に短縮できます。
ところが、全く別の理由で、「三脚で固定した撮影」が必要な場面があります。
それは映像の「合成」をする場合です。
低予算映画の撮影には色々な制約があります。
- 思い通りのセットを用意できない
- 想定した景色の場所がなかなか見つけられない
といったような具合です。
ところが、特撮合成の知識があれば、それを応用することによって、自分が理想としている状態に近い映像を作ることができます。
例えば、神社の境内でのシーンを作りたいと思った時、実際に神社では撮影できないことがあります。
私なら、地形や雰囲気だけ考慮して、公園の一角などを使って撮影し、後から鳥居や狛犬を合成することで、その場所が神社だということを表現します。
この合成作業は非常にシンプルで、簡単に自然な映像が作れますが、前提となるのは、撮影する映像が三脚で固定されているということです。
手持ちカメラで撮影した、かすかに揺れている映像に合成は出来ません。
鳥居や狛犬の映像を合成すると、鳥居や狛犬だけは揺れていませんから、合成が不自然になってしまうわけです。
それを防ぐために、カメラは固定しておく必要があるということです。
- 撮影をテンポよく進めるために、手持ちカメラの撮影を多く取り入れる
- 合成する場面はカメラを三脚で固定して撮影する
これが、メリットの多い組み合わせの1パターンと言えます。
もし、合成映像の部分だけ三脚で固定された映像で、前後の映像には手持ちカメラの揺れがあって、どうしても不自然に感じるというのであれば、編集時に加工もできます。
編集ソフトの機能によっては、カメラが揺れていない合成映像に、手持ちカメラで撮った時のような手ブレを加えることができます。
ただ、多くの場合は、そこまでこだわる必要はないでしょう。
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