低予算映画でアニメの絵コンテを参考にする理由・手塚治虫以来アニメの手法は工夫の宝庫

4通りの撮影法

映像を撮影する際、写す対象、つまり「被写体」と「カメラ」の関係を考えると、4通り考えられます。

  • 止まっているものを定位置から撮る
  • 動くものを定位置から撮る
  • 止まっているものを移動しながら撮る
  • 動くものを移動しながら撮る

それぞれ、想像してみてください。

 

「止まっているものを定位置から撮る」というのは、花や景色などを、三脚に固定したカメラで撮るような状態です。

 

「動くものを定位置から撮る」というのは、人や生き物、乗り物などが動いている様子を、三脚で固定したカメラで撮るような状態です。

 

「止まっているものを移動しながら撮る」というのは、空撮で東京タワーの上をぐるっと周りながら撮るような状態。

 

「動くものを移動しながら撮る」というのは、歩いている人を、カメラも一緒に移動しながら撮るような状態です。

 

昔の映画、例えばチャップリンの映画などは、基本的に「定位置から撮る」という映像の組み合わせで作られています。

「男はつらいよ」などの、オーソドックスなドラマなども、ほとんどの映像がこれです。

昔は、映画用のカメラというのはとても重たいものだったので、三脚にがっちりと固定して撮影するのが当たり前でした。

そうやって撮影した映像を効果的に組み合わせるノウハウが発展して作られた、映像のフォーマットがいまだに活用されているわけです。

この映像の特徴は、画面が落ち着いていて、見づらくならない、ということです。

一方で、「移動しながら撮る」というやり方で構成した映像は、

  • 躍動感が出る
  • 高級感が出る

という特徴があります。

 

もっと言うと、

  • なんとなくサマになって見える

ということもあります。

 

欠点としては

  • 失敗すると見づらい映像になってしまう
  • 撮影に手間が掛かり、撮影期間が長くなる

という事があります。

 

再三お伝えしているように、撮影期間が長くなると、映画制作自体が頓挫する確率が跳ね上がります。

ですから、「完成させる習慣・スキル」が身に付くまでは、撮影期間が長引いてしまう要素は、できるだけ排除した方が良いですよ、というアドバイスはさせていただきます。

 

ただ、こういうアドバイスはほとんど聞く耳を持たれません。

初心者の方ほど、高望みをして、「演出」にエネルギーを注ぎたがるものだからです。

 

もちろん、趣味の映画ですから、好きに撮ればいいのであって、「移動しながら撮る」ことで、より楽しめるのであれば、それで構いません。

私はこれまで何度も制作を頓挫させて、手伝ってくれた仲間の苦労を無駄にしてしまった反省があるので、かつての自分に対して助言しているような感覚を持ってしまうのだと思います。

 

実際、せっかく手軽に動画を撮影できる時代なのですから、「躍動感」が発生する「移動撮影」を体験してみることは有効でしょう。

合成映像と相性がいいのは「定位置からの撮影」

ここからは、純粋な映画作りの話ではありません。

私が提唱する、特撮映像(主に映像合成)を駆使した作品を作る場合の話です。

 

映像合成を駆使してシーンを形にするメリットは、「イメージの再現を最優先できる」ということです。

もちろん、合成技術が稚拙すぎると興ざめかもしれませんが、ある一定以上の品質で映像合成できるようになれば、可能性が広がります。

数万円から数十万円を払って、撮影スタジオを借りないと撮れないようなシーンを、数百円の材料費で作ったミニチュアセットの映像合成で再現できるとしたら、どうでしょう?

 

これは、デジタル映像をデジタル編集できるようになった現代ならではの、映像制作手法なんです。

 

そして、映像合成がしやすいのは、三脚に固定したカメラの映像に、定位置から撮影した映像をベースに合成することなんです。

改めて検討したい、アニメ的映像構成

昔の映画は、カメラが重かったせいで、定位置から映像を撮影していた、と言いました。

結果的に、昔の映画の映像は、映像合成がしやすい構図になっているので、とても参考になるのですが、難点は、「映像が古臭くなる可能性がある」という事です。

落ち着いた重厚な映像は作れるものの、移動撮影のような「躍動感」が出ないので、何というか、年寄り臭い映像になりがちなのは事実です。

 

ただ、同じように固定カメラ映像の組み合わせでも、エンタメ作品として十分な魅力を出しているものがあります。

それが、アニメーション映像です。

(話をシンプルにするために、最近の3DCGを使ったアニメーションは除外します)

 

実写作品で、撮影時にカメラを移動させると躍動感が出ると言いました。

もちろん、アニメーションでも同様に躍動感は出ますが、そのためにはコストが膨大に膨れ上がります。

カメラを移動させると、視点が変化するので、通常は1枚だけ用意すればいい背景の絵が、何十倍も必要になるからです。

 

そのため、通常は、背景は1枚の絵だけで表現できる映像を中心に、シーンを成り立たせようとします。

映像が単調に見えないように、ドラマチックに見えるように、さまざまな工夫をするわけです。

その結果、固定カメラ中心の映像であるにもかかわらず、ドラマとして楽しく、リズミカルに鑑賞できる映像作品になっています。

映像が古臭い、年寄り臭いという印象はないでしょう。

 

アニメーション作品は、絵柄の印象が強くなってしまうのですが、特にテレビ用の、予算が大きくないであろう作品については、絵柄を無視して「構図」と「構成」に注目して分析すると、映像合成を多用した実写映画にとって、参考になる手法が満載だと思います。

私も、映像の構成を意識してアニメーション作品を見てみようと思います。

 

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