創作ではいきなりベストを求めない・大事なのは完成癖を身に付けること
監督に必要なのは決断力
映画作りをしてみると、身に付くことが色々とあります。
例えば、
- チームワーク
- 他人に意図を伝える技術
- 計画的に作業を進める手順を考える事
- 理想と現実を比較して調整する判断力
などです。
中でも大事になってくるのが、「決断力」
よく、本番撮影中に監督が「OK!」と言っていますが、あれも決断の一つです。
大抵、OKに値する、唯一無二の状況が存在するわけではありません。
さまざまな条件や状況を踏まえたうえで、「これはこれで良しとする」という判断をして、決断しているわけです。
一つのセリフ回しに対して、OKの判断をした上で、予備として別のパターンも撮影することもあります。
これは、「編集時に選択の判断をしよう」と決断したということです。
決断力は重要です。
決断力が弱いと、創作活動が遅々として進まないんです。
「いや、商売じゃないから、そんなに生産性を優先しなくてもいいじゃないか」
という人もいるかもしれません。
しかし、時間は有限です。
「こんなものが作りたいな」と漠然と思っていたり、ほんの少しずつコツコツと作業を進めていたとすると、ほとんどの場合、何も達成できないまま、時間だけ過ぎて行ってしまいます。
創作の素晴らしさは、どんな形であれ、作品を完成させたときの達成感が絶大なところです。
それを味わえない創作活動は、勿体無さすぎます。
自戒を込めて言うのですが、より良いものを作ろうとして、作業以外に時間を掛けても、効果は全くありません。
創作力、技術力を上げるには、実作業しか無いんです。
(実作業を進める中で、出てきた問題を解決するために調べ物をしたり、テストをしたりするのは有効です)
でも、実際に作業を進めていくと、それほど大胆に決断出来ないのも事実です
私も、偉そうなことは全然言えません。
- できるだけ失敗したくない
- やり直ししたくない
- より良いものを作りたい
という意識がどうしても働くので、決断を先送りしたり、良かれと思って別の準備・調査を始めたりしてしまうんです。
その結果、作業はどんどん遅れていきます。
モチベーションも下がって、そのうち別の企画を思いついたりしてしまい、中途半端に中断した企画が増えていくのです。
「この役はこの人に頼むのがベストなんだろうか?」
「このシーンの撮影場所として、ここがベストなんだろうか?」
もしかしたら、もっと良い条件が揃うかもしれない、と思い始めるとキリはありません。
実際に、撮影が始まってみたら役者が飽きてしまって、連絡がつかなくなることもあるかもしれません。
撮影後に、もっと設定にぴったりの撮影場所が見つかってしまうことも、よくあります。
こんな経験をすると、さらに決断が鈍ってしまうのではないでしょうか?
私は、そんな自分の決断力の弱さをカバーする意味でも、全編グリーンバック撮影の升田式スーパープリヴィズ法を採用しています。
これは、全ての出演者を一人ずつ別々にグリーンバック撮影して、映像合成によって共演させる方式です。
近年のアニメーション映画のアフレコと同じようなやりかたです。
映画原理主義の方、演技至上主義の方にはもちろん受け入れられない手法ですが、絶大なメリットがあります。
仮に、出演者が途中で降板してしまった場合。
別の人を代役にして、「その役の部分だけ」撮り直せば解決します。
元々、全編グリーンバック撮影なので、撮り直した部分だけ不自然になることはありません。
これは、出演者が降板したときに限らず、キャスト違いの別バージョンを、極めて低コスト・短期間で作れるという特徴もあります。
また、撮影後に、もっとふさわしい撮影場所が見つかった場合。
撮影済みの人物に合わせる形で、背景だけ撮り直して差し替えることが出来ます。
私は、室内シーンなど、ミニチュアセットを多用するのですが、例えば編集中、画面が寂しく感じる事があります。
- 壁は無地ではなくて、細かな柄があった方が良い
- 室内の調度品を変えたい
- 壁に窓を追加したい
など、本来であれば、すでに変更が効かない事でも、新たなミニチュアセットを用意して撮影し直せば、画面上は別の室内に変えられます。
これらの修正が出来るということは、どういうことか。
それは、最初の決断がしやすい、ということです。
出演者も気軽に決められます。
撮影場所も、「悪くはない」というところを使って、制作が進められます。
「いざとなれば、後から修正できる」からです。
やってみると分かりますが、ほとんどの場合、修正せずに完成させられて、十分に満足できることになります。
大事なことは、「最悪、修正できる」という状況にすることで、「決断ができるようになる」という事ではないでしょうか?
こうやって、
- 決断癖を付ける
- 完成癖を付ける
ということが、満足感の高い創作活動を続けるために、とても有効だと思います。
参考になったら記事をシェアしていただけると幸いです。
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