撮影効率化のための邪道4K撮影
状況を伝えるだけなら引き映像だけでいいが
映画のような形で物語を表現するときに、どうすればいいか迷うのは「映像設計」でしょう。
慣れてくるとシナリオを執筆する段階で、映像を具体的に意識するようにもなりますが、そうではない場合も多いと思います。
特に、舞台演劇的な感覚でシナリオを執筆すると、その場面となる舞台についてはイメージ出来ていても、カメラでどういう映像を切り取って、どう繋ぐかというイメージが全くできない人もいます。
結果、舞台演劇のように、全体が見える引きの映像をノーカットで撮影したりするのですが、これはかなり特殊な手法と言えます。
例外的に効果が出ている場合もありますが、その実例を見ると、天才監督と天才俳優の組み合わせが実現したときくらいしか成功していない印象です。
端的に言うと、出演者に凄い魅力があって、演出力も桁外れという条件が揃わない限り、間が持たなくて見ていられないんです。
これは、観客である私たちのレベルが低下している、という見方も出来るのかもしれません。
自分を振り返ってみても、最近、主にインターネットの存在が原因だと思いますが、集中力が驚くほど持続しないんです。
目の前にあふれている膨大なコンテンツを、片っ端から消費しなければいけないような、意味のない脅迫観念が湧いているような気がします。
この善悪はともかく、作品の製作者の立場に立つと、出来るだけ途中で離脱せずに作品を鑑賞してもらいたいわけです。
そのためにまず対処しなければいけない事として「退屈」があります。
シーンを「引きの全体映像だけで見せる」というのは、大抵の場合、とても退屈な映像になります。
映像化する具体的方法はコンテを考えること
「シナリオを書いたのであとは撮るだけ」となればいいのですが、経験や特殊な才能がない限り、「この部分はカメラをこちら側においてこういう映像を撮る」という具合に、細かく計画しておかないと、撮影現場で右往左往することになります。
また、編集してみたら良く分からない状況になるのも、計画段階で映像の繋がりの良し悪しを検討していないことが原因だったりします。
それを防ぐのが、あらかじめ用意する「コンテ」です。
通常は「絵コンテ」という形で絵に描いておくものです。
この絵コンテを眺めながら出来上がった映像の流れを想像して、「ここは間延びしそうだから、カメラを切り替えよう」という具合に調整します。
この「カメラの切り替え」が「カット割り」で、適切なカット割りは、観客がその場面を理解しやすくなる上、適切な刺激が発生するので、「間が持たない」という状況を防ぐのに効果的なんです。
4K、8K撮影の正しい使い方
ところが、悩ましいことに、この「カット割り」が増えれば増えるほど、撮影は長引きます。
それは、カット割りのたびに撮影を中断して、カメラの位置を変えたり、画角(アップにするか引きにするか)の設定を変えて、取り直す手間が増えるからです。
もちろん、この「手間」自体が、映画製作の面白さでもあるのですが、面白いからこそやり過ぎてしまって、スケジュールオーバーになりがちなんです。
撮影現場ではあっという間に何時間も経過します。
野外での撮影では、太陽の前に雲が掛かるかどうかで、全く光の状態が変わってしまい、無思慮に撮影すると、全然繋がらない映像になってしまいます。
それを避けるために、雲の向こうから太陽が出たら、次の雲に隠れるまでに出来るだけ多く撮影する、ということを繰り返すことになります。
そんな待ち時間を繰り返すと、あっという間に日は暮れていきますから、「今日はここまで。続きは来月」という感じで、どんどんスケジュールは遅れていくんです。
現場での手際の良い撮影がどれだけ重要かは、経験してみると分かるはずです。
効果的な撮影効率化の工夫はいろいろあると思うんですが、もっともシンプルで実用的と思われるのが、「高精細の映像で撮影することでアップ撮影を減らす」というものです。
例えば、胸から上が映っている「バストショット」を撮影して、次に「顔のアップ」に切り替えるという事があります。
もちろん、出演者の表情を強調するためにアップにするんですが、この部分の撮影を効率化する案です。
撮影はシンプルで、4Kや8Kといった高画質の設定で「バストショット」のみを撮影して、アップは編集時に映像を拡大して作ります。
理論的には、4K撮影の場合、2倍まで拡大しても画面は荒くなりません。
これは、撮影としてはもちろん邪道の類でしょう。
「そんなの映画撮影じゃないよ」
と批判する人も多いと思いますが、正直、少しでもスケジュールが短縮できて、観客にとって退屈せず見やすい映像になるメリットの方が大きいと私は思います。
編集時に拡大できるという前提に立つと、撮影時、「もうちょっとアップにしようかな、いや引きの方がいいかな」となったときに、迷わず「引きの状態で撮影しておこう」という選択が出来ます。
私は「念のために両方撮っておこう」という質なので、結構、無駄な繰り返し撮影を良くしていました。
今振り返ると、「明確なNGではないのに何度も撮り直す」というのは、本当に意味のないことだったと実感しています。
それを無くすだけで、もう少し余裕のある現場で楽しく撮影できたのに、とちょっと後悔しているんです。
今回は高画質で撮影が出来るカメラを使うことで、撮影スケジュールの短縮を図る方法を提案しました。
参考になれば幸いです。
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