音声の失敗をAIで救う!自主映画でも「プロ級」に仕上げる実践術
音声トラブルは作品の“失敗”に直結します。AIを味方につければ、撮り直し不要でクオリティを底上げできます。
音声が作品の印象を左右する理由
映像作品にとって、実は音声の品質が重要だという事を認識している人はどれくらいいるでしょうか?
- 音声の良さはプラスα
- 余裕があったら音声にこだわればいい
と勘違いしている人も多い印象です。
ここでいう「音声の品質」というのは、私たちが作る自主映画レベルの話なので、プラスαでも無ければ、こだわりの要素でもありません。
「最低限の品質は達成しておきたい」という話です。
予算不足や技術不足などによって、「映像」の出来に差が出るのは事実です。
でも、面白いことに「映像」は多少品質が悪くても「そこに味がある」という印象を持たれることが多いんです。
作り手が「演出です」と言い張ればそれが通ります。
通ぶった人たちは「そうだと思ってました」と話を合わせてくれるでしょう。
ところが、「音声」の状態が悪いと、たとえそれが本当に演出だったとしても、見ていて不快なストレスが続くので「失敗」とみなされるんです。
だからプロが作る商業映画では、よほどの低予算作品でない限り、音声が悪い作品は見かけません。
そして厄介なことに、音声、特にセリフの録音はかなり難しいんです。
セリフ録音で起きがちな失敗と修正の現実
今回詳しくは解説しませんが、撮影時のセリフの録音は、最もシンプルですが技術的に難しい作業です。
時間や手間も掛かります。
そして、録音の失敗は現場では気付かないことが多く、編集時に発覚します。
例えば、公園で二人の登場人物のシーンを撮影していたとします。
一人のアップの映像を撮影したときに、ヘリコプターが飛んでいたりします。
撮影時は音もかすかだから気にならないし、「ヘリの音が入っても逆にリアリティがある」と思ってしまいます。
でも、編集すると、アップの瞬間だけヘリの音が入り、カットが変わると突然ヘリの音が消える、という、不自然極まりない状態になってしまうわけです。
最近はAIによるノイズ除去性能が急速に発達しているので、ノイズの種類によっては驚くほどきれいに補正できますが、けっして万能ではありません。
私は撮影現場の同時録音以外に、あとからセリフだけを録音するアフレコの手法をよく使います。
特に野外での同時録音に比べて、きれいに録音できるメリットはありますが、問題もあります。
例えば仮編集の段階でアフレコを済ませて、出演者は解散したとします。
ところが、編集を進めていくうちに、一旦は削除していた場面を入れたくなった場合、そこにセリフがあると、その部分のアフレコのために追加でスケジュールを組むのが難しいケースもあります。
私が作った1本に「弥生の風」という長編があります。
知り合いに紹介してもらった役者さんたちに、ギリギリのスケジュールで参加してもらったので、アフレコが出来ませんでした。
いくつかの場面では、セリフの録音状態が悪くて使えなかったので、次善策として、声質の似ている別の人に協力してもらって、似せたトーンでアフレコしてもらったことがあります。
でも、どうしても不自然さは残ります。
洋画の吹き替えでも、途中、声が別人になることがあります。
テレビ放送時にはカットされていた場面は、当時、アフレコしていないんですね。
DVDで全長版を収録するときに、足りない部分のセリフを新規録音するわけですが、声優が故人となっている場合などは、声の似ている人が代役として吹き替えています。
その場面は、やっぱり不自然さは否めません。
生成AIで音声トラブルを補正する具体的な方法
生成AI技術は、
- こんなにリアルな映像が簡単に出来る!
という紹介のされ方が多く、悪用の危険も含めて賛否両論があります。
でも、実際に使ってみると実用的なことに驚かされます。
例えば、ナレーションのような音声の場合、後から変更が生じると、その部分だけ録音し直すことになりますが、どうしても「音質」が変わってしまうんです。
プロの現場では、ナレーションの録音には専用のスタジオを使って、プロのナレーターが、修正前のトーンとそっくり真似て言葉を変えて録音します。
でも、設備もセッティングも全く同じにしているはずなのに、そこだけ後日録音し直したことが分かるくらい、音質が変わるんですね。
ところが、生成AIツールを使うと、ほとんど違和感なく、言葉を差し替えた状態で音声が作れるんです。
私もナレーションの修正に、「Fish Audio」という無料でも使えるAIツールを試しました。
生成AIツールでは「録音」という作業をしないので、「録音状態の違いによる違和感」が生じないんです。
通しでナレーションを聞いても、どの部分がAIの音声なのかは判別できません。
無料版は、生成できるのが「1カ月あたり60分まで」などの制約がありますが、言葉の言い間違いを直したりする程度であれば、何の問題もありません。
AIツールの仕組みとして、その人の声を数十秒分読み込ませて学習させる必要があります。
その後、テキスト入力すると、入力した言葉が同じ声としゃべり方で生成されます。
もちろん、感情を伴うしゃべり方など、再現不可能な部分もありますが、ちょっとした修正には十分使えます。
また、映画を編集中に、構成変更を伴う改版が発生したときに、「辻褄合わせ」としてセリフを追加したい、という場面が発生しがちです。
そんな場面にも生成AIによるセリフの追加が効果的だと思います。
ただ、映像の生成AIやCGでも言えることですが、これらはあくまでも補佐的に使うことで効果を最大限に発揮すると思います。
面白いからと言って依存度を上げると、作品の魅力を損ねる元凶にもなりかねないことに注意してください。
その上で、「創作を支える補助輪」としてAI活用を選択肢に入れると、創作の自由度が飛躍的に上がると思います。
是非、機会があればAIツールを試してみてください。
ご自身で何もかも処理するのが大変そう、と言う方は「新しい技術を使うのが大好き」という方と組んで創作されると良いのではないでしょうか?
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